The Core Column


The Core Column(56)_勝負は、目立たない(瞬間的な!)小さなトコロで決まる・・意志とイメージング能力こそが(その1)・・(2017年1月24日、火曜日)


■唐突だけれど・・

またまた、「ご無沙汰してしまった・・」なんていうリードインで始めなければならない体たらく。

まあ、創作活動の常だから仕方ないけれど・・サ。

ということで、このコラムシリーズのタイトルから「新や連載」という表現を削除することにした次第。へへっ・・

あっと・・もう一つ・・

「鉄は熱いうちに打て・・」ってなノリで一気に書き上げるレギュラートピックスや「Jリーグコラム」でも、繰り返し、様々な核心(的な!?)テーマを挿入しているでしょ・・という主張。

だから、マインドが十分に熱くなっていない(!?)普段のパッションレベルで、改めて、攻守の意図が絡み合う核心テーマをピックアップし、「The Core Column」で突き詰めていくプロセスが億劫(おっくう)になってしまう心情をご理解いただければ幸いなのだ。

言い訳が過ぎる!? ホント・・面目ない。

とはいっても・・

レギュラートピックスや「Jリーグコラム」でテーマをピックアップする創造性プロセスの底流で、「The Core Column」においてディスカッションした視点が重要な役割を担っているコト「も」確かな事実。

だからこそ、グラウンド現象のバックボーンを掘り下げるクリエイティブな思考作業と、そこでの「ファインディングス」を、分かりやすい文章に残しておくことの価値の大きさについては、重々分かっているつもりではいるんだよ。

ところで、テーマを絞り込んでディスカッションしていくプロセスだけれど・・

そこでは、多くの「視座」によって、星の数ほど多様なディスカッションが展開されるんだ。

たとえば、こんな視座・・

・・攻守の相互作用やバランス等という(戦術的な!?)視点、個の才能、ボールを足で扱うという不確実なメカニズム、ゲームの進行(バックグラウンド)状 況、選手や監督のパーソナリティーや才能(また個人的な事情!?)、そして、クラブや選手を取り巻くビジネス環境や生活文化などなど・・

ただ私は、現場のコーチとして、あくまでもグラウンド現象の核心的なファクターを探求するという姿勢で、収斂された「The Core Column」に取り組んでいるつもりなんだ。

その視座ベースが、フィジカル要素、テクニック&スキル要素、戦術要素、心理・精神的(メンタル)要素、そして神様スクリプト要素(ツキ)というわけさ。

でも・・

確かにそれは、魅力的な創作(思索)活動ではあるけれど・・

そう、そんな「深化ディスカッション」に取り組むためのモティベーションを、うまく活性化できずにいる今日この頃という体たらくなんだよ。

ホント、だらしがない。フ〜〜ッ・・

でも・・やっと・・

そう、ここ数ヶ月「温めて」いたテーマ(視座)について、取り敢えず、出来る限りシンプルに一つのコラムにまとめておこうと前向きに考えられるようになったんだ。

それは、もう何度もレギュラートピックスや「J」のリーグコラムで触れている、「勝負は、ほんの小さなトコロで決まる・・」というディスカッション。

要は、攻守にわたって、瞬間的な「気抜け」や「集中力の欠如」が最悪の結果を招いたり、逆に、最高の意志と優れたイメージングの連鎖によって、これ以上ないほどの結果を残せる・・というテーマのことだ。

ちょっと前段が長くなり過ぎたけれど・・では・・

■まず守備から入っていこう・・

もちろんここでは、チーム戦術的な守備のやり方(≒数的に優位な状況を創りだすための組織プロセスも含めたチームとしてのボール奪取イメージ!?)というテーマは扱わない。

そうではなく、あくまでも、ボールを奪い返したり、相手シュートを阻止したりする、(局面における!)最終勝負での「小さなトコロ」が主題だよ。

それも、ミスや失敗という「ネガティブ現象」にスポットライトを当てるのがいいよね。

プレイヤー(人間)は、失敗から、より多くを学ぶわけだし、例示する「小さなトコロの失敗」を、効果的な体感としてイメージタンクに蓄積すれば、それが「次の成功」につながるわけだから。

ということで、ここでは、大きな守備プロセスの流れではなく、あくまでも、局面でのマーキングや協力プレッシング、カバーリングなど、勝負の瞬間にスポットライトを当てることにする。

まず、状況設定の確認・・

前述したように、それは、ボール奪取やシュートの阻止といった最終(局面)勝負の瞬間であり、そこでは、基本的にマンツーマンの勝負(デュエル)になる。

そう、どんなチーム守備戦術でも、最後は「人を見る」ことになるというわけサ。

読者の皆さんはご存じと思うけれど、私は、このテーマについて、「勝負はボールがないところで決まる・・」なんていう表現をあみ出してもいるんだ。

ちょっとハナシは逸れるけれど・・

たしかに、ディエゴ・マラドーナやメッシといった天賦の才によるドリブル勝負&スーパーシュート(スーパーラストパス)なんていう最終勝負シーンは、誰にとっても魅惑的なモノさ。

でも、パスゲームが本質であるサッカーでは、その「美しさ」の絶対的リソースは、何といっても「組織的なパス・コンビネーション」に秘められているんだよ。

もちろん、「ダイレクトパス・コンビネーションこそが成功のカギ・・」という視点も含めてネ。

ところで・・

この、ボールを止めない、ダイレクトパスやダイレクトシュートというグラウンド上の現象だけれど、それは、イレギュラーするボールを足で扱うパスゲームとしてのサッカーでは、本当に、特別なグラウンド上の現象なんだ。

だから、それを「ワンタッチ」などと軽く表現して欲しくない。

この(サッカー人の多くがアグリーするはずの!)テーマについては、「The Core Column」で発表した「このコラム」を参照して欲しい。

あっと、論点がずれそうになった。

ということで(ダイレクト)パスコンビネーション・・

私は、人とボールの動きのコラボレーション(≒スムーズな動きのリズム)なんて格好つけて表現するけれど、それこそがサッカーの美しさの本質的ファクターだと思っているんだ。

もし、(美しい!!)パスコンビネーションによって決定的な最終勝負シーンを創りだせたとしたら、興奮しない者などいないはずだ。

だからこそ、逆に、守備は・・

そう、ディフェンダーにとっては、そのパスレシーバー(フィニッシャー)を効果的にマークしつづけたり、臨機応変のカバーリングで「無力化」できるかどうかが、とても重要で魅力的なテーマになるというわけさ。

でも、その(主体的な!!)ボールがないところでの守備アクション(真のハードワーク!!)は、目立たない。

また時として、集中力の欠如や気抜けによる明確なミス(不作為の作為!?)であったにもかかわらず、批判の対象にならないケースだってある。

だからこそ私は、そんなトコロにこそ、不確実なボールゲームであるサッカーの理不尽さが明確に表象されている・・と表現するわけだ。

もちろん、目の肥えた方々にとっては、「そこまで観察し評価すること」こそがサッカーの醍醐味ではあるわけだけれど・・。

言いたかったのは、選手一人ひとりの「意志」こそが、「美しく勝てるサッカー」を左右する、決定的な要因ということだった。

そう、勝負は、目立たない(≒だからこそ一人ひとりの意志が問われる!!)ボールがないところでのプレーによって決まるのだ。

あっ・・、ちょっと論点が逸れたかな!? でも、まあ、いいでしょ。

ということで、例示のピックアップにトライしまっせ。

■例えば、こんなグラウンド上の現象・・

・・味方の一人が、全力でのチェイス&チェックに入った・・

・・それも、しっかりとパスコースを消しながらのチェイス・・次、その次でのインターセプトや、相手パスレシーバーへの連動アタックの大チャンスだ・・

・・でも結局は、次のパスレシーバーへの「寄せ」が一瞬遅れてしまい、フリーでボールをコントロールされてしまう・・

・・そこから、決定的スペースへ走り込んだ相手選手にラストパスを通されてしまったことは言うまでもない・・

また、例えば・・

・・相手がクロスボールを入れようとしている・・

・・自分は、マークしなければならない(自分の背後にポジションしている!!)相手選手をしっかりと掌握している「つもり」だ・・

・・そして次の瞬間、まさに自分の眼前へ目がけて、クロスボールが送り込まれてきた・・

・・よしっ、マイボールだ!・・いただき!・・

・・と、思った次の瞬間・・

・・自分がマークしていた「はず」の相手が、背後から、自分の眼前に飛び出してボールに先に触り、そのままヘディングシュートを決めてしまった・・

・・そう、いつも書いているよう、「ディフェンダーの眼前スペースこそが決定的スペース!」というコンセプトそのままに・・

例えば・・

・・相手のチャンスメイカーが、ペナルティー前のヴァイタルエリアで、「ある程度フリー」でパスを受けた・・

・・それだけではなく、その相手ボールホルダーに対する味方ミッドフィールダーの「チェック」には、一瞬の「遅れ」が生じていた・・

・・もちろん最終ラインは、しっかりと、マーキングやカバーリングの組織が揃っている・・

・・でも、その最終ラインの周辺では、二人の相手フォワードがチャンスを狙っている・・

・・と、次の瞬間、その二人が爆発スタートを切った・・互いに横方向へダッシュし、ポジションを入れ替えたのだ・・

・・どうする?・・付いていくのか、それともマークを受け渡すのか?・・

・・もちろん「その判断」は、相手ボールホルダーにも拠るし・・

・・そして、最終ラインの選手が、決断をためらいながら相手フォワードの動きを目で追った次の瞬間、コトが起きた・・

・・その相手フォワードが、「タテ」へ爆発ダッシュを仕掛けたのだ・・

・・横方向のポジションチェンジから、最終ラインの背後に広がる決定的スペースへ向けた、タテへの爆発的な抜け出しダッシュ・・

・・その背後の決定的スペースへ、同時にスルーパスが出されたことは言うまでもない・・

たしかに、現象的には、瞬間的な(小さな)出来事ではあったけれど、でもそれは、チームにとって致命的なディフェンスのミスだった。

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もちろんサッカーでは、実際のグラウンド上の現象は星の数ほど多様なわけだから、ここで、その全てをカバーできるはずもない。

でも私は、守備におけるミスの(ネガティブなグラウンド現象の!)本質的なバックボーン要素については、その表現をある程度は集約させられるかもしれないと考えているんだ。

例えば、貧弱なイメージング能力と、意志のチカラ不足。

そう、ディフェンダーが、次の相手攻撃をしっかりと「読み、感じ取れていない」だけではなく、予測していたとしても、十分に対応できるだけのハードワークを遂行するための強い意志を持ちあわせてないということだ。

(次回コラムにつづく)

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「The Core Column」の全リストは、「こちら」です。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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