●『闘うサッカー理論』---勝つための戦術とチームマネージメント(三交社刊)
目次 |
内容 |
序 |
日本人J-リーガーを全般的に見たばあい、やはり世界のレベルに達するにはまだまだ時間が必要だと感じる。たしかに彼らは、プロの「現実」から強烈な刺激を受け、アマチュアだった日本サッカーリーグ当時と比べたら格段にスピーディーでスリリングなゲームを展開してはいる。ただ技術・戦術能力だけではなく、全体的なスピード、精神的、創造的な部分でも世界との「差」がまだ目に見えてくるのだ。 前回のワールドカップ最終予選での敗退。あと10秒・・・。ただ結局日本チームは、「世界」の仲間入りを果たすことはできなかった。その背景に世界との「差」があることは明白な事実。我々サッカー人は、その現実を厳粛に受けとめ、これからのステップの糧とすべきなのである。 最後の10%のカベ 「世界のトップクラスの国々と比べて、90%くらいまでのレベルに到達するのはそう難しいことじゃないんだよ。実際、アフリカや中近東、極東の中国や韓国、また日本もかなりレベルが上がっているしね」 私の友人で、ドイツプロサッカー「ブンデスリーガ」でも五本の指に数えられる名監督、クリストフ・ダウムはそういう。彼は、ブンデスリーガの名門、VfBシュツットガルトを、1992年-1993年シーズンにリーグ優勝へ導いたプロ監督だ。VfBシュツットガルトは、現在浦和レッズで活躍するブッフバルト選手がキャプテンをしていたことでも知られている。またクリストフ・ダウムは、1994年シーズンから、トルコのベジクタシュ・イスタンブールというプロクラブの監督に就任しているのだが、そこでも、1994年-1995年シーズンにリーグ優勝をかざっている。 「それでも残りの10%をクリアすることが難しい。それが、善戦はしたけれど結局は0対1の負けなどという結果につながってしまう。真剣勝負のプロの世界では、それは決定的な差だということさ」 中略 明確な論理をベースにアプローチすれば、技術や戦術能力は確実に向上する。ただそれだけがチーム力の源泉ではない。闘う意思や創造性という、論理では説明がつきにくい、精神・心理的、感覚・感性的な部分もチーム力のエッセンスなのだ。 それを伸ばすためには、選手たちの日常的な環境がひじょうに重要になってくる。したがってサッカー・コーチは、技術、戦術という部分だけではなく、精神・心理的、感覚・感性的な部分をも同時に伸ばすことができるような環境も整備しなければならないのである。 それは、サッカーが本質的に「自由にならざるを得ないスポーツ」だからだ。とくにプロでは、高いスキルや戦術的能力だけではなく、瞬間の自由な発想をベースにした創造性、極限状態での闘う意志、どんなきびしい状況でも、自分自身で積極的にヤル気を喚起できるような「セルフ・モテベーション能力」なども要求されてくる。 戦後の学校教育制度や会社組織体質など、「個」ではなく「組織」を優先する日本の社会システムは、個々の創造性だけではなく、「セルフ・モテベーション能力」や「リーダーシップ」のベースである強固な意思や強烈なパーソナリティーに溢れた「プロ」を養成するのとはあまりにもかけ離れた環境だった。 そんな日本サッカーに、いま「J」という新しい風が吹きこみはじめ、隆盛を迎えようとしている。ようやく日本にも、強固な意志や強烈なパーソナリティー、リーダーシップ、そして選手個々の創造性をも伸ばすことができる素地ができつつある。日本のサッカーにかかわるだれもが待ち望んでいた環境変化がようやく訪れたのである。 後略 |
第一章 サッカーの基本的な理解 |
1 戦術に共通する五つの原則 a)サッカーは自由なボールゲーム b)ポジションなしのサッカーが理想 c)攻撃と守備の実践的で積極的な目的 d)すばやい攻守の切り替えが強いチームのベース e)ルックアップからすべてが始まる 2 サッカーの技術 a)キックの中でもっとも重要なのがインサイドキック b)ストップ技術が攻撃戦術のベース c)ドリブルはサッカーの本質的な魅力であり最も有効な攻撃手段のひとつ d)ルックアップも重要な技術 3 サッカーの戦術
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第二章 個人戦術 |
1 攻撃(オフェンス) a)ボールなしの状況での個人戦術 フリーランニングがアクティブサッカーの原点/ルックアップとフリーランニングは表裏一体/動きのオートマティゼーション b)ボールを持った状況での個人戦術 実戦プレーのベースはトラップとボールキープ/ドリブル/パス/フェイントとカット/シュート 2 守備(ディフェンス) a)相手がボールを持っていない状況での個人戦術 ポジショニング/インターセプト b)相手がボールを持った状況での個人戦術 相手のトラップの瞬間をねらったアタック/ウェイティング/アクティブ・ディフェンス |
第三章 グループ戦術 |
1 攻撃(オフェンス) a)ボールなしの状況でのグループ戦術(フリーランニング) ポジションチェンジ/オーバーラップ/『3人目・4人目』のフリーランニング b)ボールを持った状況でのグループ戦術 パス&ムーブ(ワンツー)/スイッチプレー/コンビネーションプレー/スルーパス(ラスト・スルーパス)/センタリング(外からのラスト・パス)/サイドチェンジ/セットプレー 2 守備(ディフェンス) a)後ろからの『足音』 b)集中(数的優位) c)守備の深さ(カバーリング・スペースケア) d)コーチング e)ディフェンスラインのバランス |
第四章 チーム戦術 |
1 システムの意味 a)基本的な役割(タスク)分担を越えて b)基本的ポジションについて 2 チームとしての攻め方と守り方 a)攻撃(オフェンス) 速攻/組立とアプローチ(仕かけ) b)守備(ディフェンス) 受けわたし・マン・ディフェンス/ストリクト・マン・ディフェンス/コンビネーション(組みあわせ)ディフェンス/ゴール前の守備/プレスディフェンス/ゾーンプレス c)ディスカッション(最終ディフェンスラインのチーム戦術的理解) |
第五章 ゲーム戦術 |
1 スカウティング(観察)と自チーム分析 2 攻撃のゲーム戦術(例示) a)相手が徹底的なプレス守備(コンパクト守備)戦術をとるばあい b)相手がストリクト・マン・マーク守備戦術で臨んできたばあい c)相手が受け渡しマンディフェンス中心のばあい 3 守備のゲーム戦術(例示) a)相手が速攻(カウンターアタック)狙いのばあい b)相手がディフェンダーのオーバーラップを武器にしているばあい 4 そのほかの考慮すべき要素 |
第六章 トレーニングの原則 |
1 トレーニングの種類とコンディション・メンタルトレーニング 2 戦術トレーニング a)イメージトレーニング b)アクティブ戦術トレーニング c)オートマティゼーション d)トレーニングバリエーション要素 |
第七章 チームマネージメント(監督論) |
1 プロ監督の資質 2 もっとも重要な資質----パーソナリティー 3 監督の論理的タスク(技術・戦術的要素・その他) a)ミーティング b)実戦の指揮官としてのタスク 試合前/試合中/ハーフタイム/試合後 c)指導者としてのタスク 4 監督の心理的・精神的タスク(意識環境の整備・モティベーションなど) a)背反する意識環境の整備 b)モティベーション c)実戦の指揮官としてのタスク 論理を越えた仕事/ミーティングにおける心理的マネージメント/試合直前とハーフタイムにおける心理的マネージメント |
あとがき |