'99シーズントータル成績


まず最初は、各チームの「勝ち点勝率」と「指数(ゴール数/失点数)」から

このグラフでは、棒グラフが「勝ち点勝率」、折れ線グラフが「指数」です。

勝ち点勝率ですが、勝ち数だけを比べた場合「勝ちの内容」まで言及することができないため、(全てのゲームを90分以内で勝った場合の)最高勝ち点数と実際の勝ち点数を比較することにしました。また指数ですが、この、総ゴール数を総失点数で割った数字は、基本的には「得失点差」と同じ性格のものですが、それでも試合数が多くなれば、単純な得失点差ではあらわしにくい「得点/失点のバランス」から、そのチームの傾向がつかみやすくなります。

例えば、同じ試合数で「A」チームが150ゴールを挙げ、100失点したとします。それに対し「B」チームは100ゴールに50失点。この両チームの「得失点差」はともに「+50点」ということになります。ただ、それを指数であらわすと、「A」チームの「1.5」に対し、「B」チームは「2.0」。このことで、「B」チームの方が、攻守のバランスの良いチームだということが一目瞭然。つまり、得失点差が、単なる「数字の差」のみを表すのに対し、「指数」は「攻守のバランス」を表現できるということです。それに「一試合平均ゴール・失点」を合わせれば、より詳細で正確な分析ができるというわけです。「得失点差」は「成績」を決めるための「数字」。それに対し、ゲーム内容の分析に必要なのが「ゴール/失点・指数」というわけです。

さて内容にうつりましょう。98年シーズンと同様に、勝ち点勝率でトップのチームが、「年間チャンピオン」という栄誉を得ることはありませんでした。チャンピオンシップで、エスパルスが、ジュビロに惜敗したのです。とにかく早く、こんな「まやかし年間チャンピオン決定戦」は止めて欲しいものです。とはいっても、この私の考え方に対し、一般の方々からは「でも湯浅さん、チャンピオンシップって面白いのだから止める必要なんてないのでは・・」と、Eメールでたくさん意見されました。その意味では、私はちょっと「保守的」?! でも、クラブレベルの国際大会に「一国リーグの代表」として参加するわけで、それには、(少なくともそのシーズンを通した)実力「No.1」のチームが行くべきだ・・という私の意見は変わりません。

イベント的にチャンピオンシップをやってしまえば「タダの興行」。タイトルがかかっているからこそ手に汗握る・・、それでも、一発トーナメント的なチャンピオンシップでは、「長い期間を通じた実力最高チーム」とはまったく性格が違う「チャンピオン」が出てきてしまう可能性も大きい・・。さて・・

今回の結果で、何といっても目立っているのがマリノス。勝ち点勝率では五位。ただ「指数」ではダントツの、本当に他に大きな差を付けてのトップなのです。こんなことは今までにありませんでした。その原因は、もちろん「試合内容」にあります。年間を通じての彼らの負け試合「9試合」すべてが「一点差」の負けなのです。対して勝った場合には、かなりの「得点差」をつけるケースが多かったというわけです。マリノスは、変なところで「記録」を作ってしまいました。

私のデータベースは、数字、つまり統計的な結果で、試合内容を分析しようという試み。そこで、勝ち点ランキングと、指数ランキングは大筋では一致する・・これまでそう書き続けてきたのですが、ちょっと考え方を変えなければならないのか、今年のマリノスがおかし過ぎたのか・・。まあこれからもしっかりと観察していきましょう。

あっ・・そうそう。その意味では、アントラーズもおかしな結果になりましたよね。彼らも、マリノスとまったく同じ。アントラーズの「15敗」のうち、13試合が「一点差負け」でした。それにしてもアントラーズの「惜敗」の多かったこと・・。「勝負強い」アントラーズに何かが起きた?! とはいっても、ジーコが戻ってきてからは、ねばり強さだけは復活しましたがネ。そのことは「下の分析」でも見てみましょう。

さて何といっても99年シーズンで興奮させられた「降格リーグ」。ご存じのとおり、ベルマーレはダントツのビリになってしまいしまいましたが、ジェフ、アビスパ、そして「あの」レッズの「ビリ二位争い」は、本当に最後の最後まで熾烈を極めました。結局レッズが降格することになったわけですが、グラフを見ていて、改めて「降格リーグ」の激しさを感じています。レッズには、また早く「J−1」へ戻ってくることをお願いしましょう。「J−2」での観客動員記録を塗り替えながら・・

つぎには「一試合平均ゴール数」と「一試合平均失点数」を比較してみましょう。


「一試合平均ゴール数」&「一試合平均失点数」比較

ここでは、「結果」としての、ゴールと失点を比較します。「結果としての」といったのは、例えばゴール数ですが、それは「シュートを打った結果」であり、失点も、相手に打たれた「被シュート」の結果だということです。

もちろん、この「一試合平均ゴール数」、「一試合平均失点数」によって、各チームの「最終順位」がほぼ決まってくるわけですが、各チームの「攻撃力」、「守備力」を直接的にあらわす数は、それぞれ「シュート数とシュート決定率」、また「被シュート数(相手に何本シュートを打たれたか)と被シュート決定率(そのうち何本決められたか)」なのです。

さてグラフを見てみましょう。左から「最終成績」にもとづいて各チームを並べました。また、棒グラフの青が「ゴール数」、赤が「失点数」です。ある程度「キレイ」に並んでいるでしょう。もちろん、「勝ち点勝率」のランキングと、ゴールと失点の「バランス」がですよ・・

勝ち点勝率では、二位にかなりの差を付けたエスパルス。たしかに「ゴール・失点のバランス」は良いですが、二位のレイソル同様、ちょっと「小さく」まとまっている感じがします。それに対し三位になったグランパスと四位のセレッソは、守備さえ落ち着けば、来シーズンはかなり行くのでは・・と可能性を感じさせられる「グラフ形状」ではありませんか・・

この青棒と赤棒の「差」が得失点差であり、前述の「指数」のベースです。前述したのですが、「指数と勝ち点勝率ランク」がうまく一致していなかったマリノスとアントラーズ。たしかに得点と失点のバランスだけは良いですね。

とにかく、確実な守備を「スタートライン」に、積極的な攻めも展開したエスパルスに軍配が上がったという結果でした。

さて、次は、各チームの「攻撃力」、「守備力」をはかる基準である、「シュート数・決定率」、「被シュート数・被決定率」の比較です。


「シュート数&シュート決定率」比較

攻撃の目的は「シュートを打つこと」。前述したとおり、「ゴール」は結果にしか過ぎません。つまり「シュート数」が、各チームの攻撃力のシンボルというわけです。

ここでも、グラフのチーム順は「最終成績」に準じます。さて、またまたマリノスとアントラーズが、「平均シュート数」で首位を争っています。彼らの場合は、前述したとおり、惜敗するケースが多く、勝つときは大差で・・ということを繰り返した結果というわけです。それにしても勝ち点勝率でトップのエスパルスは、攻撃に関しては「ここ一発を大事にゴールにつなげる・・」という内容だったことが一目瞭然です。彼らの決定率の高さは、決定的なチャンスにおける集中力の高さとでも表現できそうです。また彼らと二位のレイソルの場合は、どちらかといえば「守備のチーム」とすることができそうです。

それに対しシュート数は多いマリノスとアントラーズの「決定力」がちょっと低めなのが気になりますが、その「深層の原因」を探るためには、彼らの試合のビデオを一本、一本丹念に探らなければなりません。たぶんチーム首脳は、その作業を繰り返しているとは思いますが・・

またその他では、ここ数年のシーズンと比べたレッズの凋落振りと、上位を占めたグランパスとセレッソのシュート決定率の高さも目立っていました。

エスパルス、グランパス、そしてセレッソには、シュート数が(彼らの総合成績からすれば)比較的少なく、その少ないチャンスを確実にゴールに結びつける・・という傾向の強いことが読みとれるわけですが、それには、決定的な場面にしかシュートを打たない?!、またシュートを打てる場面をクリエイトする「力」に問題あり?!、というようなネガティブ分析につながる・・という側面もあります。ということは、これら三チームがもっとシュートを打つ(打てる)ようになれば優勝間違いなし?! それとも、それにつれて「決定率」も下がってしまうのでしょうかネ。


「被シュート数&被シュート決定率」比較

守備の目的は「相手からボールを奪い返すこと」。前述したとおり「失点」は結果にしか過ぎません。とはいっても「相手からボールを奪い返す頻度」などの数字データはありません。ですからここでは、便宜上、相手に打たれたシュートの数を「守備力」のシンボルと考えようと思います。

ここでも、グラフのチーム順は「最終成績」に準じます。また、棒グラフが「被シュート数」、折れ線グラフが「被シュート決定率」。ということは、被シュート数、被シュート決定率ともに、小さい方が優秀ということになります。チョット、分かりにくかったですかね・・。

さて分析ですが、ここで目立つのは「被シュート数」、「被シュート決定率」が、かなりバラついているということです。たしかに勝ち点勝率でトップのエスパルスは、良い「バランスレベル」はキープはしていますが・・。被シュート数のトップはジュビロ。被シュート決定率のトップはヴィッセルでした。フム・・

相手にシュートチャンスを作らせないチカラ(つまり総合的な守備力)ではトップレベルのジュビロとサンフレッチェですが、一旦シュートを打たれてしまったら、比較的簡単にゴールを決められてしまいます(被シュート決定率では中位にまでランクを下げる)。

また、「被」シュート決定率では、マリノスがトップ、100分の1%及ばなかったのがヴィッセルです。彼らの場合は、シュートはされるが(特にヴィッセルは、被シュート数ではダントツの最下位)、簡単にはゴールを決めさせないチカラがあるということです。

この、「相手にシュートを打たれる危機的状況における、GKの能力も含めた守備力」を象徴する「被シュート決定率」も守備力の要素のひとつなのです。マリノスには川口がいます。またヴィッセルでは、前田と武田がポジションを競り合い、最後は武田が先発を続けていました。このライバル関係が、両GKを刺激し、守備陣に対する的確な「コーチング」も含め、グラウンド上でのグッドパフォーマンスにつながったのでしょう。

この「被シュート決定率」ですが、歴代の最高記録は、1993年ニコスシリーズのエスパルスが打ち立てました。その時の記録は「5.00%」。もう信じられない数字です。相手に20本シュートを打たれて初めて失点するという計算になるのですからね(ちなみに、1999年シーズンのトップ、マリノスの記録は「9.38%」)。その当時のエスパルスにも優秀なゴールキーパーがいました。「あの」クモと異名をとったシジマールです。確かに、優れた被シュート決定率は、ゴールキーパー「だけ」の貢献によるものではありませんが、それでも、普段はあまり目立たない存在のゴールキーパーを評価するための「数字」の一つだとすることが出来るように感じています。



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