歴代チャンピオン分析


まず最初は、歴代チャンピオンの「勝率」と「指数」分析です


 ここでは、1993年から1999年シーズンまでの、それぞれのチャンピオンのデータを比較します。

 グラフは左から、各年度、各シリーズのチャンピオンの順に並べましたが、最初の数字は年度、「S」および「N」は、それぞれサントリーシリーズ、ニコスシリーズを示します。また、チームの記号については、最初の「J」データ分析ページを参照してください(例えば「A」はアントラーズです)。

 また、97年〜99年の勝率については「勝ち点勝率」としました。つまり、全試合に90分以内で勝利を収めた場合に得られる総合最高勝ち点と、獲得した実際の勝ち点を比率で表したわけです。ということで、勝ち数と負け数からの「勝率」とは、「延長勝ち」「PK勝ち」の多いチームの勝率は低くなるというわけですが、この方が、実際の結果に則したものです。

 棒グラフは勝率。また折れ線グラフは、「攻守のバランス」をあらわす『ゴール/失点』指数を、それぞれ示します。

 目立つのは、1993年ニコスシリーズにおける「ヴェルディー」の、勝率と指数の高さです。特に、「4.30」という指数。意味は、一点の失点に対して「4.3ゴール」を決めてしまうというものですが、それは、次のグラフで明らかなように、そのシリーズでの「失点」が極端に少なかったことに起因します。一試合の平均失点が「0.56点」というほとんど信じられない数字を残しているのです。また平均ゴールも「2.39点」と歴代最高でしたから「指数」も当然、歴代最高ということになります。

 1993年ニコスシリーズにおけるヴェルディーの「勝率」と「指数」の極端な高さ、それは、まだ「J」が始まった当時の「実力差」に起因するとすることができるでしょう。世界的に見ても、チャンピオンチームの勝率は「70%」前後、また指数も「2.0」を越えることはあまりありません。そのことは、1994年以降の「J」を見ても分かります。1993年当時、「10チーム」の中で唯一、クラブの歴史を背景にした「高いプロ意識」をベースに戦ったヴェルディー。他のチームが「プロ意識の高揚」に苦労したのとは対照的に、金字塔を打ち立てました。この数字は、たぶんこれからも破られることはないでしょう。そうでなければ「優勝争い」というドラマがなくなってしまいますからね。

 ただヴェルディーは凋落してしまいました。それに対し、他のクラブ、特にアントラーズの安定した強さ、そしてジュビロ、エスパルスの台頭が目立ちます。この三チームは、2000年シーズンも優勝争いの主役を演じるに違いありません。

 '99年シーズンの「全体的」な数字は下降気味。これも、各チームのチカラが拮抗してきた傾向を示すモノだと思います。たぶんこれからは、小さな紆余曲折はあるにしても、「数字的」にはサッカーネーションのそれに近づいていくでしょう。

 基本的にサッカーリーグは「下克上」が醍醐味です(2部制になった2シーズン目も『降格リーグ』も楽しめる?!)。とにかく、どんどんと「新しいチャンピオン」が誕生して欲しいモノです。それが、サッカー文化の浸透・深化に大きな意味をもってくるのです。


歴代チャンピオンの「ゴール・失点」関連データ

 次は、歴代チャンピオンの、ゴール関連のデータ。「一試合平均ゴール数」、「一試合平均失点数」、そして「シュート決定率」と「被決定率(相手に打たれたシュート数と失点から出します)」です。

 「一試合平均ゴール数」と「シュート決定率」は、数字が大きいほど良く、逆に、「一試合平均失点数」と「被決定率」は、数字が小さければ小さいほど優秀ということになります。チョット、分かりにくいですかネ・・。

 さて分析です。

 一つひとつの最高記録を見ていきましょう。まず「一試合平均ゴール数」。これでは何といってもジュビロ。97年シーズン、98年シーズンと記録を伸ばし続けました。それは、(ゴール前での決定的なフリーランニング=パスを受ける動きに異質の才能を発揮する)ゴン中山の活躍に負うところが大きいのですが、ただゴールは一人だけのチカラで挙げられるものではないことは皆さんもご承知のとおり。中山も、藤田、奥(そして名波とドゥンガ)などのパートナーがいて、初めて稀代のゴールゲッターとして名を残すことができるのです。彼らの、レベルを超えた「ボールの動き(素早く広いパス回し)」からの、タイミングを測ったラストパス。それは、厳しいトレーニングで培った、最高レベルの「イメージ・シンクロ(イメージの同期・同調)」によるのです。

 また、「シュート決定率」ですが、昨年までは、95年ニコスシリーズのヴェルディーが記録をもっていましたが、1999年セカンドステージのエスパルスが久々に記録を塗り替えました。彼らの、1999年シーズンにおける「決定的チャンスでの集中力」の高さの証明といったところです。

 次に「一試合平均失点数」ですが、これはもう何といっても1993年ニコスシリーズにおけるヴェルディー。ということで、彼らの「被決定率(シュートされたうちの何本が失点になってしまったか・・)」もレベルを超えた記録になっています。そしてこれが、前述した、今後も破られることはない「指数」の記録のベースになっています。

 ただ、実のことをいえば、この1993年ニコスシリーズでの「一試合平均失点数」と「被決定率」のチャンピオンは、順位ではヴェルディーに続いて2位だった「エスパルス」でした。彼らの「一試合平均失点数」は「0.50点」。また、打たれたシュートのうち、何本決められてしまったかという「被シュート決定率」でも「5.00%」という、信じられない数字を残しています。ということで、これは「チャンピオンとしての」記録というふうにご理解ください。

 被シュート決定率ですが、それは、シュートされてしまうような「決定的ピンチ」での「守備力」、つまりゴールキーパーも含めた最終守備ラインの「ピンチ対応力」とも表現できるものです。まあ当時のエスパルスには、「スパイダー(クモ)」と異名をとった、「あのゴールキーパー」シジマールがいましたからね。その「数字」では僅差の2位だったヴェルディー。彼らの場合は、総合的な「組織守備の強さ」と表現できるでしょう。ペレイラとロッサムという「中央コンビ」に、石川、中村(河本)という最終守備ラインの強さは絶品。特に、年間最優秀選手に選ばれたペレイラは、安定したスーパープレーを展開していました。また、当時好調だった柱谷、またラモス、そして守備意識の高い北澤など、中盤の守備にも素晴らしいものがありました。もう何度も書きましたが、この1993年ニコスシリーズの記録は(「一試合平均失点数」と「被決定率」)、将来にわたって破られることはまずないに違いありません。



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