湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第13節(2000年5月17日)

ヴェルディーvsパープルサンガ(1−1)

レビュー

 試合がはじまって、パープルサンガの「ビックリ先制ゴール(ヴェルディー選手のクリアキックが、パープルの吉田に当たり、そのまま25メートル飛んだけではなく、本並のアタマまで越えてゴール!!)」が決まるまで、本当に「何を書いていいんだろう・・」と悩むこと悩むこと・・。私のイメージが、まったく刺激されません。

 両チームともに、コンベンショナル(従来型)スリーバックを基調に、守備はある程度しっかりとこなしています。ただ攻撃に、まったくといっていいほど、アクセントが出てこないのです。

 タテパスを出した選手が、サポートのためにダッシュしない(パスを受けた攻撃選手が孤立!)・・、中盤にスペースがあるのに、誰も走り込もうとしない・・、ドリブル突破チャレンジの状況なのにバックパスしてしまう・・、誰も決定的スペースへ飛び出そうとしない(ボールホルダーと目が合い、完璧なタイミングではないとタテへ走り抜けない・・これでは?!)・・、勝負シーンでの「複数選手の動きが連動しない(アクションするのは、ボールホルダーと単発パスレシーバーだけ!!)」等など・・

 要は、両チームともに、ボールの動きにエネルギーが感じられず、攻撃が「単発」になってしまっているということです。これでは魅力的で強いサッカーなど望むべくもない?!

 後半、ヴェルディーは、池端に代えて廣長を投入します。そして最終ラインも「フォーバック」へ変更。前半は、スリーバックなのに、両サイドバックが「攻撃の最終シーン」に絡んでいくことは本当に希でした。それならば、フォーバックにすることで、戦術的な計画として、前線の選手を一人増やそうというわけです。負けていますから、もちろん両サイドバックにも、もっと積極的に前へ!! という指示が出たに違いありませんが・・

 とにかくヴェルディーがゲームを支配しはじめます。とはいってもボールポゼッション率が高いだけ。リードしていることで、守備を強化してカウンターを狙うパープルの守備ブロックを振り回すまではいきません。攻撃のワンプレーに絡んでいく選手をもっと増やさなければ・・、もっと彼らの動きを連鎖させ、しっかりとボールを動かさなければ・・。

 それでも徐々に、押し返すパープルの攻撃に、両サイド、ボランチ(その少なくとも一人)の「押し上げパワー」が殺がれていきます。気づいてみれば、攻撃で仕掛けていくのは、廣長、石塚、キム、そして飯尾の四人だけになってしまって・・。それも「連動なしの単発」・・。いや、一体どうしたらいいんでしょうかネ・・

 もちろんヴェルディーの選手たちが、自分たちのサッカーに(感覚的に)納得しているハズがありません。彼らも不満なはず。それでも「一人だけ」気合いを入れても、周りが「踊ら」なければ、自分だけがバカを見る・・、そんな心境なんでしょうか。

 後半23分、ヴェルディーの危険な攻撃が飛び出します。右サイドから攻め上がり、一度は中央で跳ね返されたものの、再び右サイドから、フリーになっていた飯尾が、逆サイドでフリーになっていた石塚へ、絶妙の「守備ブロック越え」のセンタリング(決定的なサイドチェンジパス?!)を通したのです。それを石塚が、右足ボレーでシュート!! 相手ディフェンダーが体を張って防ぎましたが、そんな「本格的な崩し」は久しぶりですから、ここからヴェルディーの気合いが乗ってくるかな・・なんて期待していました。

 そして期待通り、徐々に「周りの(複数選手たちの)動きが連動」していいく予感が・・。33分には、FKからのヘディングシュートがポストを直撃! またまた「ポジティブな刺激」!! そして彼らの攻めが、どんどんと、それこそ津波のように勢いを増幅していきます。そうだ!! それなんだ!! 何故もっと早い段階で、その「積極性」を喚起できなかったのか・・。彼らは、「自分主体(自らの意志)」では、ゲームの内容をコントロールできないのか?! 「このままでは負けてしまう」という強烈な刺激なしには・・

 でも結局は「そこまで」。今のヴェルディーは、選手一人ひとりが自分主体で「ギリギリまで闘うという意志」を持ち、それをチーム全体でシェアし(意思統一し)、そのエネルギーを「相乗」させることができるだけのキャパを備えていないということなのでしょう・・・なんて、コラムを終わろうとした瞬間、相手ペナルティーエリア際の中央ゾーンで一本、二本とパスをつなぎ、最後は飯尾が同点ゴール!!!

 ゲッ・・?! でも、それがサッカーだから・・

 延長ですが、やっぱり両チームともに、また「落ち着いて」しまって・・。どうしても、攻撃のワンアクションにおいて、複数選手たちの動き(仕掛けの意図)がシンクロしません。これでは、相手守備の薄い部分を突くようなシュートチャンスを作り出すこともできない・・(アバウトなロングシュートはありますがネ)。

 何度か「ガーン!」という爆発フリーランニングが出てきました。でも、そのアクションが失敗したら、またスローになって、同じような積極的な「仕掛けアクション」が出てきません。「世界」では、そんな「全力でのムダ走り」が、限りなく繰り返されるのに・・。それがなければ、魅力的で強いサッカーなんて・・。フ〜〜

 最後の(数少ない?!)決定的チャンスは、意を決して攻め上がり、左サイドから決定的なセンタリングを上げ、それが、ゴール前へフリーで走り込んだキムにピッタリと合った、延長後半8分のヴェルディーの攻めでした(キムの右足アウトサイドでのシュートは、バーを大きく越えてしまって・・)。これが決まっていれば、「効率的なチャンス活用」という、勝負所を知っているヴェルディーの面目躍如・・ということになるのでしょうが、この試合ではツキにも見放されてしまったようです。

 最後に、パープルサンガについて。たしかに守備は、ある程度安定してはいます。それでも攻撃が・・。それについては、ヴェルディーとまったく同じコメントになってしまう・・という程度でご勘弁を・・



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