湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第2節(2000年3月18日)

FC東京vsアビスパ(2−0)

レビュー

 この試合、たしかにFC東京が押し気味に試合は進めました(シュート数でも東京が上回る)。それでも、サッカーの内容としては、アビスパに軍配を上げなければなりません。クリエイティブな守備、変化に富んだ攻撃という意味で、アビスパに一日の長があったのです。

 FC東京は、試合後の記者会見で監督が、「ウチには、中盤でクリエイティブなパスを出せる選手がいないから・・」と述べていたように、まずガッチリと守り、攻撃では、単純な組み立てから、ツゥットとアマラオの「個人突破」に賭ける・・という単調な試合展開に終始します。とはいっても、この日のツゥットの突破力は並はずれ、何度かアビスパ守備陣がブッちぎられてはいましたが・・

 ということでFC東京の戦い方は、「J-2時代」とほとんど変わらず。四人の最終守備ラインとダブルボランチは、ほとんどといっていいほど「攻撃の最終シーン」に絡んでくることはありません。でも守備は堅牢そのもの・・フ〜ム、チームの「選手キャパシティー」からすれば、もっとも高い確率で「結果」を出すサッカーということか・・

 ただ私は、一抹の不安を感じています。それは、「型にはまった(チーム戦術に絶対服従)」サッカーで、選手たちのフラストレーションが爆発しないのか・・このサッカーでは、プレーしている選手たちが楽しめるはずがないのでは・・

 もちろん、「じゃあ、オマエがコーチしたら、もっと優れたサッカーになるのかヨ!」なんてことになりそうですが、言いたいことは、どんなレベルであれ、「考え方のスタートライン」が、相手の攻撃にどのように対処するのか・・という「受け身発想」では、チームが(選手たちが)発展するための基盤も作れない・・ということなんです(私が見る限り、東京の選手たちには基本的なキャパは備わっていると思うんですが・・)。

 クレバーな守備戦術(つまりリスクに対するバックアップの決まり事など)をベースにした、「変化」を演出するリスクチャレンジを仕掛けていく攻撃・・。クレバーな守備を演出するためのベースは、集中して考え続けるチカラとでも表現できる、選手たちの「予測能力」です。監督が、「選手たちには、そこまでの能力はない。絶対にどこかでミスをしたり、集中を切らせてマークを外されたり、ドリブルで抜かれたりする・・」と考え、プレーを、限りなく規定する・・。それも、基本的には「理不尽」で「最終的には自由にプレーせざるを得ない」サッカーで・・さて・・

 そんな東京に対し、アビスパは、ボールの動き、ボールがないところでの仕掛け、はたまた読みベース守備など、少なくとも「クリエイティビティー」という意味では、確実に東京よりも上でした。もちろん、そのことで中盤に穴が出来たり、(失点につながった)瞬間的なマークミス(マークの受け渡しミス・・カバーリングミス)なども出てきてしまいます。ただアビスパの選手たちのプレー姿勢には、「オレたち自身で考えるんだ。オレたちが主体になって刺激し合い、絶対に穴が出たり、マークがズレたりしないように集中しよう。また攻撃では、チャンスがあれば誰でも最終勝負シーンに絡んでいくぞ!・・」なんていう「意志」が明確に見て取れます。その「積極的に考え、リスクにチャレンジし続ける姿勢」が大事だということが言いたいんです。

 もちろん東京の選手たちに、その姿勢がまったくなかったなんて言っているわけではありません。「比較的」ということなのですが、それでも、東京の選手たちが「戦術(机上の計画)」に、より強くしばられ、必要以上に注意深く(その意味は『受け身』!)プレーしていたことだけは事実のようです。

 これまでの二試合の「結果」を見たら、誰にも文句は言えませんし、監督さんも、これから徐々に・・と考えてもいるんでしょう。それとも、あまりにも短い「短期決戦リーグ」だから、案外その「チーム戦術」で勝ち進んでしまったりして・・。

 だから私は、その意味でも(つまり、選手たちの創造性も含めた『極限の総合性能』が問われる)、年間を通じた長期リーグにすべきだと言っているのです。

 最後に、東京の選手たちが最後まで集中を切らさず「組織(戦術)プレー」に徹していたことに感銘を受けたことだけは付け加えておきます。

川崎フロンターレvs鹿島アントラーズ(0−1)

レビュー

 さて次は、川崎フロンターレ対アントラーズのゲームについて少しだけ・・

 この試合も、(東京同様に)押しているフロンターレでしたが、「内容」としてはアントラーズに軍配です。アントラーズの選手たちは、守備でも攻撃でも、「ココゾ!」の勝負所をよくわきまえているのです。

 もちろんフロンターレの「積極的・攻撃的なサッカー」には、本当にシンパシーを感じました。攻守にわたって仕掛け続けるフロンターレ。二連敗になってしまいましたが、「内容」があるのですから(アントラーズからはちょっと落ちますがネ・・)、このままトライし続けて欲しいと思います。彼らの「仕掛け」には、着実な「戦術的バックアップ」も伴っていますから、決して「猪突猛進」ではありません。

 特に新加入のペドリーニョ。素晴らしい選手です。ホント、ブラジルにはこのレベルの選手が「ゴロゴロ」いるのですから羨ましい限り。これも「歴史」の差ということですか・・

 フロンターレの、奥野、寺田、佐原の最終守備ラインと、両サイドバック、守備的ミッドフィールダーで構成するディフェンスブロックは堅牢です。「これは、すぐに魅力的で強い(勝てる)サッカーを展開できるようになるに違いない・・」と思ったモノです。

 ところでフロンターレには、最後に交代出場した鈴木も含めたら、鬼木、奥野、マジーニョなど、何人も「元アントラーズ」選手がいて、攻守の「要所」を締めています。さすがに戦術的理解のしっかりしている(そのことがチーム全体にしっかりと浸透している)アントラーズ・・ってな印象も強くしました。

 さて、来日デビューを果たしたベベト。最盛期の輝きはありません。また決定的な仕事に絡みそうなシーンも本当に僅か。コンディションが整えば・・、周りとの戦術的な理解(イメージ・シンクロ)のレベルが上がれば・・ということなのかもしれませんが、どうも私には彼の「年齢」が引っかかってしまって・・。とにかく彼がどこまで「持ち直す」のか、今後に注目しましょう・・

 調子が良く、素晴らしいプレーを展開しているビスマルク。完全復活も目前・・という雰囲気の柳沢。どんどんとストライカーとしての「鋭敏な感覚」を研ぎ澄ます平瀬。高いレベルで「フォーム」を安定させている相馬、名良橋、本田、秋田、高桑。自信を深め、素晴らしい積極プレーを展開するヤングスター、小笠原、中田。完璧な「補強戦力」であることを知らしめたファビアーノ。それ以外にも増田がいる、本山がいる、金古がいる・・。

 アントラーズは、そんな選手層の厚さ、また試合内容から、今シーズンの優勝候補筆頭といっても過言ではないと思います。前年シーズン、「通年ランキング」では九位だったのですが、「ゴール/失点の指数」では三位。実力はあったが、肝心なところでの「勝負弱さ」・・というシーズン内容でした(15の負け試合のうち13までが一点差負け!!)。このことについては、湯浅健二の「J」データ分析のページを参照してください。

 それが今シーズンは・・。期待しようではありませんか。



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