まずグランパスから。トーレスの抜けた「穴」が顕著になっている・・、何度かそう書きました。そして結局は、ハイレベルな判断力が要求される難しい「フォーバック」から、大岩を中央に(リベロとして?!)置く「従来型スリーバック」を採用します。それでも、まだまだ「安定守備ライン」とはほど遠い出来・・
チームのパフォーマンスを安定させるためには、まず「守備ブロック」を確固たるモノにしなければなりません。そのことは、昨シーズン、ジョアン・カルロス監督自らが証明したとおりです。確固たるモノにする・・、その意味は、とりもなおさず「守備のチーム戦術」を徹底させることに他なりません。昨年の後期、グランパスは、中盤での「受け渡しマーク」が徹底され始めたところから(中盤の上がり目選手たちの積極的な守備参加!!)調子が「ガンッ!」と上向いたのです。ところが今シーズンは、再び守備で悩みはじめて・・
たしかにグランパスは、選手個々の能力も含め、「自力」では東京よりも上だと感じます。ただゴールを割ることができない状況が続いた場合、選手たちの「不安」がつのることで心理的なネガティブサイクルにはまり込み、結局「勝負」では敗れてしまうという試合展開になる・・。守備が不安定だと、当然、攻撃にも心理的にネガティブな影響がおよびますからね。とにかくグランパスの場合、中盤も含め、まず守備を安定させることが第一の課題だということです。
対する東京。グランパスの不安定な守備を突き、しばしば、大迫力の攻めを展開します。右サイドからは佐藤、左サイドは小林、そしてツゥットとアマラオ。たしかに、基本的には彼ら「しか」攻撃の最終シーンに顔を出しませんが、それでも、その迫力たるや・・
東京は、ダブルボランチは「絶対」に上がらず、「前」の四人に加えて、両フルバックのどちらかが「チャンスを見て」参加するということで、見事なまでにチーム全体の意志が統一されています。何度か、突破のドリブルを魅せた左サイドの藤山、安定感をもった攻撃参加をみせる右サイドのベテラン、内藤。ただ一回の攻撃では、どちらか一方のサイドバックだけしか上がりません。両方が「同時」に上がったシーンは、私は確認することが出来ませんでした。それが東京の「前後左右の(守備の発想を中心にした)バランス」ということなんでしょう。
前節の対アビスパ戦について、守備的に過ぎる東京・・と書きました。それでは、選手たちの「フラストレーション」が高まってしまうのでは?! とまで書いたのですが・・
たしかにこのチームには、明確な「チャンスメーカー(攻撃の最終段階でのコンダクター)」はいません。たまにツゥットが、またアマラオが下がってボールを受け、最前線や左右の佐藤、小林にボールを供給します。「組立型」のチームだったら、そこから再び、相手守備の「薄い」ところを突くような展開になるのですが、東京の「攻撃選手」たちは、前にスペースが空いたら、本当に「例外なく」ドリブルで勝負を仕掛けていきます。それがまた、効果的にグランパス守備ブロックを面白いように混乱させてしまうんですよ(グランパス守備ブロックの不安定さが露呈?!)・・
痛快そのもの・・といった雰囲気の東京の攻め。もちろんグランパスも、ストイコを中心にした「組み立てオフェンス」で対抗しますが、(延長も含めて)後半の半ばを過ぎたころからの「攻撃の危険度」は、明らかに東京に軍配です。それほど彼らの「リスク・チャレンジ」の迫力は、レベルを越えていたのです。
これも、東京の頑強な「基本守備戦術」の賜?! 東京の前線選手たちは、積極的に仕掛けていく際、もし変なカタチでボールを奪われでもしたら・・なんていう心配は、まったくしていないようです。それはそうです。後方には、ダブルボランチと、どちらかのサイドバックは「必ず」、「次の守備」に備えてバックアップしているのですからネ・・
東京の「吹っ切れた」攻撃を見ていて、守備ブロックの強化戦術(つまり基本的には守備的な戦術)でも、「徹底」すれば「受け身や消極的」にならず、逆に前線の選手たちも吹っ切れるんだナ・・なんて感じていました。
前半6分、ストイコヴィッチのCKから、古賀にヘディングを決められてしまったのですが、逆にいうと、その早い時点での失点が、特に前線選手たちを吹っ切らせたのかも・・。
私は、この試合の「内容」は、東京の選手たちにとって「大いなるイメージ資産(ホンモノの自信のベース)」になったと思っています。堅牢な守備。そして、そのことを心底意識することで「後ろ髪」を引かれることなく吹っ切れた「リスクチャレンジ」を繰り返すオフェンス選手たち。見ている方にとっても魅力的この上ないサッカーじゃありませんか・・
東京の選手たちにとって、この試合は、勝ち点以上の「価値」を生み出したと断言しましょう。なにせ、「自由な」単独勝負(リスクチャレンジ)を、ツゥットとアマラオ以外の日本人選手も、積極的にトライし、そして何度も成功させてしまったんですから・・。「自信」の心理的ベースは、積極的なリスクチャレンジを繰り返すことでしか養えないことは、フットボールネーションでの常識なのです。
そんなカッタルい雰囲気を「ドカン!」とブチ破る、素晴らしいジュビロの先制ゴール。それは、マリノスGK、川口のクリアボールを奪ったジュビロの服部が演出しました。この先制ゴールですが、湯浅は、フム・・さすがにジュビロは、カッタルい試合展開でも、ココゾ! の勝負所は、よく心得ている(感覚的に、『爆発』するポイントをよく心得ている!!)・・と思ったモノです。
このシーンですが、攻め込んでいたジュビロですから、前線には(オフサイドポジションに)まだ選手が残っています。その選手たちが、服部がボールを持った瞬間、爆発的に「戻り」、逆に、守備に戻っていた中山と福西が、「二列目ポジション」から、これまた爆発的にタテへダッシュします。その瞬間、服部からの正確なタテパスが、中山が走り込む前のスペースへ送り込まれましたというわけです。
ジュビロは、本当に美しい「タテのポジションチェンジ」を大成功させてしまったのです。完全にフリーでボールをコントロールし、ゴール前で待ちかまえる福西に正確なラストパスを送る中山。イヤ、美しいゴールでした。
そしてそのすぐ後、今度は中山が、これまた服部からのFKを、飛び出してきた川口の「鼻先」で、チョコンとゴールへ流し込みます。これで「2-0」!!
ここでマリノスのアルディレス監督は、スリーバックから、(そこでストッパー役だった)ユー・サンチョルを最前線へ上げ、代わりに(両サイドアタッカー下げて!)フォーバックへ守備システムを変更します。ただこのフォーバックには、まったく「コンセプト」がありませんでした。
どこで「ブレイク」するのか、危急状況で、マークについていくのか、それともマークを受け渡すのか・・、それについての「チーム内の共有イメージ」を感じません。最終守備ラインを作るべき小村、松田、波戸、三浦。その最終守備ラインは、もうボロボロ・・これでは・・
例えば・・中央の最前線にいる、ジュビロの高原の足元へタテパスが通ったとします。その瞬間、小村と松田が重なってアタックを仕掛けたことで(また中盤選手の戻りが遅く)、その周りに大きなスペースが出来しまうシーンが続出してしまうのです。もちろんジュビロは、そこを抜け目なく活用します。
その後、左サイドバックの三浦が、ボランチの遠藤が・・どんどんと上がるなど、たしにかマリノスの「前へ」の勢いは増大しました。ただ、攻撃参加するディフェンダーが「同時」に上がってしまうというシーンが続出します。そんな「無計画」な押し上げでは、次の守備における「前後左右のバランス」がムチャクチャになってしまうのも道理。逆にグランパスは、マリノスの「無計画さ」をしっかりと意識し(無意識のうちに理解して?!)、中盤でボールを奪い返した瞬間には、例外なく、サイドバックやボランチなどが、全速力で攻撃に参加してきます。
そんな状況で、何度ジュビロが決定的チャンスを作り出したことか・・。それはもう数え切れないくらい・・
完璧に「数的優位」で攻め込んでチャンスを作り出すジュビロ。対するマリノスは、ヨッコラショ・・ってな雰囲気で、「多すぎる人数」が「遅れ気味」に戻ります。これでは、ジュビロのカウンターアタックを途中で阻止したり、そこからの「逆カウンター」を決められるはずもありません。たまにマリノスが高い位置でボールを奪い返しても、選手たちが「後ろ向き」に重心がかかっているから、どうしてもカウンターの「勢い」が殺がれてしまいます。
マリノスの「(見かけ)押し込んでいる攻め」ですが、どうしても中途半端という印象をぬぐえません。そして、足の止まった選手たちの間でパス交換。これでは「何か」を起こせるハズもありません。
(内容的にも)完敗のマリノス。松田、中村という日本代表の中核になりつつある選手たちをかかえているから心配です。
オジー・アルディレスは優れた監督だと思います。それでも、「ミスキャスト」が何人かいたり、無理な「守備システムの変更」があったりと、まだ采配はチグハグ・・といった印象のゲームではありました。