湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第5節(2000年4月5日)

FC東京vsジュビロ(3−2)

レビュー

 なんだ、これは良くない・・、エッ?・・、ゲッ・・、ウワッ・・

 そんな感嘆詞だけで、この試合の内容を表現できてしまったりして・・

 ほんとうに、一時はどうなることかと思いましたヨ・・FC東京。完全にゲームを「内容的」に支配され、ボールを奪い返しても、自信なさげなキープから、アバウトパスばかり。これじゃ、トップのツゥットやアマラオがしっかりとボールをキープして次に展開したり、勝負の突破ドリブルを仕掛けられるはずがありません。

 対するジュビロのサッカーには、後半71分、ツゥットの二度目の同点ゴールが決まるまでは、確固たる「王者の貫禄」が漂っていました。

 その雰囲気に呑まれたんでしょうかネ、FC東京のサッカーは、後半55分、佐藤のラッキーなパスカットからのチャンスを、ツゥットが確実にゴールに結びつけるまで、まるで二クラス下のような雰囲気でした。それが、ツゥットの(最初の)ゴールで、何か心理的なキッカケを掴んだかのように、ちょっとサッカーが積極的になりそうな雰囲気が・・

 ただその後は、再びジュビロがゲームを支配し、後半24分、ここのところ目立ってロングキック(ロングパスやフリーキック)に冴えが見えている服部が、それはそれは美しい勝ち越しフリーキックを決めてしまいます。

 ここでFC東京が、またまた「吹っ切れ」ます。これって「二度ギレ」?!

 まあ冗談はさておき、そこから彼らは、「戦術の呪縛」から完全に解放され、「自由」に、大迫力の仕掛けサッカーを展開します。そこからの彼らのサッカーが、第三節のグランパス戦での展開に酷似しているように感じたのは私だけではないに違いありません。

 グランパス戦でのFC東京は、前半早い時間帯(7分でしたかネ・・)での失点から徐々に盛り返し、残り20分くらいで完全に「戦術の呪縛」から吹っ切れました。そして選手一人ひとりが、チャンスとなったら、どんどんとドリブル突破にトライするなど、それはダイナミックな仕掛けを展開し、最後は、延長Vゴールで勝利まで納めてしまいました。

 この試合でも、ジュビロの勝ち越しゴールからの彼らのサッカーは、それまでとはまったく「別モノ」になってしまいます。やはりサッカーは「心理ゲーム」だということなのでしょう。それまで「守らなければならないモノ」を抱えていた選手たちが、「失うモノ」は何もなくなり、そして・・

 そのスピードたるや、それまでの「二倍?! 三倍?!」・・。そんな印象が残るほど、彼らのサッカーがスピーディーに、そして確実になっていったのです。そしてツゥットの、ドリブルからの同点ゴールが生まれます(これで「2-2」)。それは、見事の一言というゴールでした。

 そんな「解放されたFC東京」に対し、ジュビロのサッカーは、どんどんと矮小なモノになっていきます。この現象は、どちらかというと、FC東京の勢いに押され、心理的な悪魔のサイクルに陥ってしまったということでしょう・・

 このゲームは、ある時点から、ガラッと試合展開が変わってしまいました。それは、サッカーは心理ゲームという普遍的な概念の証明でもあります。「戦術」と「自由(戦術超越プレー)」、もっといえば「組織」と「個人」の相克・・。このことについては、今週の「2002」で書くことにします。ご期待アレ・・



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]