湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第8節(2000年4月22日)

ヴェルディーvsフロンターレ(2−0)

レビュー

 「本当に、つまらない試合でしたヨ! これじゃ客のリピートなんて期待できませんよネ・・」

 試合の後に会った二人の友人が、そう憤っていました。彼らは非常に優秀なビジネスマンです(マーケティング)。彼らはフロンターレを応援しているのですが、まあそれくらい「参加意識」高く応援していたということで、激憤の発言もポジティブな意味として捉えたいとは思いますが・・。とはいっても、両チームともに内容のない試合を展開していたことだけは確かですし、彼らの憤りは十分に理解できる湯浅なのです。

 たとえば、中盤の「高い位置」で、一人の選手が「ある程度フリー」でボールを持った状況を想像してください。私がいつも言っている「攻撃の起点」が出来た瞬間です。

 攻撃の目的は「シュートを打つこと(ゴールは結果にしか過ぎません)」。そしてその目的を達成するための「当面の目標」が、「スペースである程度フリーでボールを持つこと」です。ただ両チームともに、その「目的」と「目標」に対する意識が希薄で・・

 さてそのフリーでボールを持っている「起点」ですが、そんな瞬間に、周りの、特に最前線の選手たちが、「まず」考えなければならないことは、「タテへの動き」です。もちろん、止まった状態で、マークする相手を背にして足元にパスを受け、そこから展開してもよいわけですが(ポストプレーの一種)、それでも、やはり「フリーランニング」を基調にした「パスを出させる動き」が最も重要であることには変わりはありません。

 一人が、相手ゴール前の「決定的スペース」へフリーランニングを仕掛ける。はたまた別の一人が、戻り気味に走って、二列目とのワンツーを狙う。または、その「起点」自身がドリブルで相手最終守備ラインに突っかけ、最前線の選手たちが、その周りを爆発的に走り回ってサポートする・・

 そんな「何らかのダイナミック・アクション」がなければ、何も生まれません。相手の守備が困惑し、彼らが、攻撃チームの迫力にビビるくらいの「何らかの急激な変化」が必要なのです。そんな「風雲急を告げる」ような、観ている方が『アッ、何かが起きる!!』と鳥肌が立つようなシーンは、この試合においては、本当に「皆無」に等しいものでした。寂しい限りです。

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 これはもう、日頃のトレーニングの内容を問わざるを得ません。「起点」が出来た状況で、周りの選手たちが何の「意図的なアクション」も起こさないわけですからネ。もしトレーニングで「決定的な崩しのリスクチャレンジ」を意識していたならば、たとえボールホルダーが見ていなかったとしても(アイコンタクトができなかったとしても)、少なくともパスの受け手の何らかのアクションは見られたはずです。それがまったくない・・。これでは、「世界のイメージ・シンクロ・プレー」へステップしていくことなど期待できるはずがありません。

 「こんなサッカーじゃ、ホントつまらない・・」

 そんな、前述のビジネスマン諸氏の発言の意味は、「アッ!」という期待感を抱かせるプレーがない・・、ワクワクさせられるようなシーンがない・・、それに尽きるような気がします。

 なぜ人々は、(ジュビロの)中山の「動き出しの早い突っ込み(決定的フリーランニング)」に興奮させられるのでしょう。それは、「(自分主体の)意図のあるリスクチャレンジ」に対する「積極的な意志」を感じるからに他なりません。この試合の両チームの「プロ選手」、「プロスタッフ」は、そのことをもう一度見つめ直さなければなりません。少しくらいレベルが低くたって、サッカーでは、人々の「感動」を喚起することができるものです。そこに「ギリギリのリスクチャレンジ」に対する積極的な意志(姿勢)さえ感じることができれば・・

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 ちょっとキビしい言葉が続いてしまいましたが・・

 それでも、ヴェルディーには、「好転の兆し」を感じることは出来ました。前回(第六節)、マリノス戦の厳しい選評が効いたのか、その後の第七節のヴィッセル戦では、岩本は出場しなかったようです。そして勝利を飾り、内容にも「プログレッシブな面」があったと聞いています。

 そしてこの試合でも、岩本はベンチスタート。そして、ヴェルディーのプレーに、クレバー、忠実、積極的な中盤守備をベースにした、素早く、広いボールの動きなど、明らかな「ダイナミズムの向上」を感じていた湯浅です。

 四人の最終守備ブロックの前に「リンリン・コンビ」、林と小林がダブルボランチに入り、その前に山田と石塚がポジショニングし、キムと飯尾がツートップという布陣。最初の時間帯のボールの動きはカッタるいことこの上ありませんでしたが(ボールを愛しすぎているヴェルディー選手たちのパス出しのタイミングの遅いこと・・)、19分の先制ゴール(石塚の素晴らしいファウンデーションからの林のロングシュート!)あたりから、ヴェルディーのボールの動きが大幅に改善してきたのです。

 中盤上がり目の山田と石塚の出来は上々。攻撃での「素早くシンプルな」起点になるだけではなく、守備にも積極的で効果的に絡んできます。特に石塚。ちょっとケガ気味だったとは聞いていたのですが、この試合での、特に「ボールがないところでの」攻守にわたるアクティブプレーには、彼の「意識の大幅な向上」を感じ、嬉しくなったモノです。

 やっと今シーズンのポジションを見つけた石塚?!・・少なくとも岩本よりは格段に良い・・。でもそのことについては、もう少し観察することにしましょう。

 ハナシ変わってフロンターレ。中盤の「コア」、ペドリーニョを中心に攻撃を組み立てようとはしますが、いかんせん、前述した「攻撃の決定的場面でのイメージ」がまったくシンクロしません。アルバレンガの出来にも、(外国人助っ人として)大いに疑問符が残ります。これでは、ヴェルディー守備のウラを突くことなんて、夢のまた夢・・

 フロンターレの攻撃プレーに、「個人的な才能」のレベルが低い・・という低次元の問題ではなく、選手一人ひとりの「攻撃でのイメージ」のレベルが低い(意識・意図のレベルが低すぎる)と感じました。これは監督が司る「チーム戦術」という部分の問題です。とはいっても、同じ意味で、ヴェルディーが格段に上だったわけでもありませんがネ・・

 後半のヴェルディーは、中盤の「バランサー」としてクレバーなプレー(ポジショニング)を見せながら、絶対的な運動量が少なく(ダイナミズムが感じられず)、どうしても「そこそこ」でプレーしている(これは基本的なプレー姿勢というプロ選手の根幹マインドに関わること!!)という印象を拭えなかった小林に代えて、三上を左サイドに入れます。そして杉山が中央へ移動し、「スリーバック」に変更します。

 ライン気味の「スリーバック」ですが、米山と中澤が中心になったラインコントロールは、日本代表ゆずり・・といったところ。でも杉山だけは、(ネガティブな意味で)ちょっと浮いた存在になってしまっていました。

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 最後に、飯尾に代わって出場した岩本について・・

 たぶん彼は、李総監督の意図を、まったく理解していなかったに違いありません。それは彼にとっては「ラストチャンス」だったはずです。それなのに・・

 私は、彼のような「才能」が、積極的なサッカーをやらないことは「犯罪」だとまで思っています。この試合をもう一度ビデオなどで確認してください。それも岩本の「動き」を中心に・・。そうすれば、私の憤りが理解できるはずです。

 石塚が「二列目」だったときには、(特に後半)非常にダイナミックでクリエイティブな攻めが展開できていたのに、岩本が二列目に入り、石塚がトップへ上がってからのヴェルディーの攻撃からは、まったく「危険な臭い」が消え去ってしまいました。それも、そのほとんどが岩本の怠慢プレーが原因でした。

 前線での「インターセプト」のチャンスが何度もあったにもかかわらず、まったく絡んでいこうとせずに突っ立っているだけ。攻撃でも、ボールのないところでの動きがないから、フロンターレの中盤守備を引きつけることさえできないだけではなく、ワンツーで、決定的スペースへ飛び出していかなければならない状況で、例によって立ち止まり、「ボールをよこせ!!」という態度。

 一体この「交代」の意味は何だったのでしょうかネ。今の岩本には、プロとしてサッカーをやる「資格」自体がない・・。湯浅は、そう断言することにします。

 冒頭に登場した友人のビジネスマン諸氏同様、書いているうちに、最後はかなり憤ってしまった湯浅でした・・



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