湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第2節(2000年7月1日)

ヴェルディー対レイソル(1−0)

レビュー

 暑い、暑い・・気温は、35度ちかくまで急上昇。そして湿度も高い。サッカーをやるには本当に厳しい気象条件です。

 だから、両チーム監督の「戦術的柔軟性」が試される?! とにかく、攻守にわたってバランスのとれた効率サッカーを心がけなければ。そして確実に「勝負所」に対する「アンテナ」を鋭く保つ・・それです。さて、両チームの戦い方は・・

 案の定、両チームともにゆっくりとした立ち上がり。どこで彼らが、この「ゆっくり・ゆったり」というペースに、「別」の意味づけをすることができるか・・。要は、「攻撃の変化」のことなのですが、ゆっくりボールを動かしているだけでは何かを起こすことなど望むべくもないわけで、いつかは、パサーとレシーバーの「イメージシンクロ」をベースにした素早いコンビネーションや、勝負ドリブルなど、急激なテンポアップで「爆発(リスクチャレンジ)」しなければならないわけです。さて・・

 それにしても、ヴェルディーの「技術」がしっかりとしてることが目立ちます。「状況に応じた方法」でボールを止め、相手のプレスにもかかわらずしっかりとコントロール出来ています。とはいっても、それが「勝負のテンポチェンジ」につながらない。それでも、前半9分、左サイドにいた石塚(だと思ったのですが・・)からの「ダイレクト」での「小さなサイドチェンジ」で、最後は、右サイドにいた広長がフリーシュートまでいったシーンには、少なくともヴェルディーの選手たちが「勝負所(つまり攻めの変化)」を意識しているな・・とは感じましたがネ。

 その後は、ちょっとレイソルが押し返す雰囲気が感じられたり、その間隙を突いて、ヴェルディーがカウンターから決定的なカタチを作りかけはしますが、ついぞ、組み立てをベースにした攻撃の展開からの「決定的な(そして爆発的な)変化」は見られず・・

 ただ28分、ヴェルディーのオフェンスで、何度か「変化の兆し」の仕掛け人を務めていた桜井が、「ココゾ!」のドリブル突破にトライし、薩川のファールチャージを誘います。あそこは、守備の勝負の場面ではない。足の速い薩川なのだから、最後まで付いていけば何も起きなかったのに・・なんて思ったものなのですが、それでも「PK!」。「ペナルティーキックの職人」、林が、冷静に決めてヴェルディーが先制ゴールを奪いました。ゴールは前半29分のことです。

 桜井ですが、長い「ケガのトンネル」を抜けて、やっと復帰。やはり、李総監督が考えるチーム戦術にとって、桜井、北沢(彼はまだ復帰していませんが・・)の「運動量豊富な仕掛け人」は欠かせない?!

 その後、右サイドの梅山からの「人の山を越えるセンタリング」がピタリと石塚に合ったり(シュートはバーを大きく越える!)、左からのセンタリングが、まったくフリーの広長に合ったり(見事なシュートミス!)と、押し込まれているように見えるヴェルディーが、逆に「実質的なゲームペース」を握ってしまいます。

 それでも前半37分、後方から「クサビパス」を受けた北島が、米山のハードマークを「回り込む」ように外してフリーシュートまでいきます。ギリギリで右外側へ外れてしまったとはいえ、この決定的なチャンスは、確実に、レイソルにとっての「心理的な刺激」になったはず。また、41分には、またまたレイソルの加藤が、本当に惜しいフリーキックを放ちます。前半最後の時間帯は、もう完全にレイソルペース。どんどんと「活動量」が増えていきます。

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 この傾向は、後半はもっと顕著に・・。

 ホン・ミョンボを上げることで(前気味リベロといった具合!!)最終ラインを四人にし、後半早々には、何度か決定的なカタチを作りかけます(一度は、左サイドからの完璧なフリーシュート場面を作り出した!)。それは「攻撃に参加する人数」を増やしたことによるのですが、レイソルは、固い守備を少し「開き気味」にして、その分、攻撃への意識を高めた・・ということです。

 もちろんヴェルディーのカウンターチャンスは増えるわけですが、「オレたちの守備ラインの人数が足りなくなっている・・だから、ボールを奪われたら、とにかくまずしっかりと戻らなければ!!」と、レイソル選手たちの守備意識が格段に鋭いものになっているから、そうそう簡単にはチャンスを作り出すことが出来ないでいます。

 そんな「前がかり」のレイソルなんですが、結局は、(上に書いた)後半早々の左サイドからのフリーシュート「だけ」が、自ら積極的に作り出したチャンスということになってしまいました。

 彼らの攻撃では、「クリエイティブな仕掛け」のためのファウンデーションが弱いだけではなく、周りの見方の「ボールがないところでのアクション」に対する意識の低いことが目立って、目立って・・。「ここが勝負!!」という瞬間での「タメ」や、逆サイドでの(ボールがないところでの)爆発フリーランニング、はたまた、ヴェルディー守備ラインの「薄い」ところでボールを持った選手の「ドリブル突破トライ」など、「勝負所」を意識したクリエイティブな攻めが見られません。要は、ヴェルディーの守備陣が、レイソルの「次の仕掛け意図」を正確に読めてしまうから、タイミング良く、そしてイージーに対処できてしまっている・・ということです。

 左サイドで、人数をかけて「仕掛けのボールキープ」をしている・・、そんな状況で、右サイドのレイソル選手は、そのアクションを、足を止めて見ているだけ・・。「目が合って、はじめでボールがないところでのアクションを起こす・・」、また「ボールが出てから走る・・」なんていうレベルでは、ホンモノの勝負所を作り出せるはずがない・・。勢いを取り戻したヴェルディーがどんどんと危険な場面を作り出すのに対し、レイソル選手たちは、まったく危険な場面を作り出すことが出来ません・・

 それを象徴するシーンを一つだけ例に挙げましょう。後半41分のことです。

 中盤後方でボールを持ったホン・ミョンボが、二列目の選手にタテパスを通し、バックパスを受けます。ここが、ダイレクトでの勝負展開の勝負の場面!! そのとき、逆の右サイドには、レイソルの右サイドを担当する渡辺毅がポジションしていたのですが、彼は、ヴェルディーの三上と「一緒」に、そのホン・ミョンボを中心にしたボールの動きを眺めているだけ。彼の眼前に、決定的スペースがあるにもかかわらず・・。たぶんホン・ミョンボは、渡辺が、タイミング良く「ボールがないところでのアクション」を起こしていれば(スペースへ走り込む準備・素振りをしていれば・・)、確実に、その「勝負所」をイメージしながら「タテパス」を交換」し、そこからのダイレクト・スルーパスを狙ったに違いないと思うのですが・・

 レイソルの攻撃からは、「ボールがないところで勝負が決まる」という、サッカーの普遍的なコンセプトが、うまく選手たちの意識のなかに刻印されていない・・ということを感じました。寂しい限りではありませんか・・

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 まちろん、まだ湯浅は、ヴェルディーのサッカーに(厳しい気象条件を差し引いたとしても)納得できているわけではありません。彼らほどの能力がありながら、まだまだ「足の止まったスタンディングサッカー」の傾向から脱していないと思うのです。それでも、後半に飯尾が登場してからは、桜井とのコンビネーションや単独勝負だけではなく、後方で攻守にわたってクリエイティブなプレーを繰り広げた石塚も絡んだ危険な「仕掛け」を続けてはいましたが・・

 彼らには、もっともっと、素早く、広いボールの動きからのクリエイティブな「仕掛け」を期待している湯浅なのです。何といっても彼らには、それができる(技術的・戦術的な)キャパがそなわっていますからネ。

 睡眠不足、また猛暑のなかをオートバイで移動したりで、ちょっと疲れ気味の湯浅ですが、これから国立競技場へ、マリノス対エスパルスの試合を観戦にいってきます。もしエネルギーが残っていたら、その試合もレポートしようと思っているのですが、もし出来なかったら・・ご容赦アレ・・。ということで、マリノス対エスパルスの「レポートスペース」だけは下に確保しておくことにします・・では・・

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