湯浅健二の「J」ワンポイント


2000年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第6節(2000年7月26日)

FC東京対サンフレッチェ(1−2)

レビュー

 ツゥットが突っ込んでいく・・ア〜〜、ラストパスがずれた!

 最後方から、小峰が、内藤が、最前線へアバウトな縦パスを送り込む・・ア〜〜、ヘディングでクリアされてしまった!

 神野とのワンツーからアマラオが抜け出す・・そのままシュートか・・ア〜〜、上村がギリギリのタイミングでタックルを決めた!!・・ア〜〜

 試合の最後の5分間、一点を追うFC東京が、チーム内でのポジショニング&人数バランスが崩れることなどお構いなしに、大迫力で攻め込み続けます。最終ラインのサンドロまでもが最前線に張り付きっぱなしで・・

 サンフレッチェのベンチからは、トムソン監督が、「何やっているんだ! 下がりすぎるな! 上がれ! 上がって、中盤からの球出しや、仕掛けの芽を抑えろ!」と、声の限りに叫んでいます(・・そう叫んでいたに違いないと思います・・)。

 このゲームは、最後の最後まで目を離すことができないエキサイティングなものになりました。あ〜、面白かった・・

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 試合は、両チームともに堅実な守備をベースに、注意深く攻め合う・・といった展開で始まります。両チームともに、選手たちの守備に対する意識が高く、なかなか決定的なチャンスを作り出すことができない・・という展開なのです。それでも、東京ではツゥットや増田が、サンフレッチェでは、言わずと知れた久保と藤本、はたまた服部が、ココゾ!の勝負を仕掛けていくことで、「淡い雰囲気」ですが、チャンスの芽を感じます。

 東京では、前半の12分に、中盤の「バランサー」、浅利がケガで退場してしまったことは大きな痛手でした。とにかく、チームメイトの「吹っ切れた攻め上がり」を一人で支えていた「インテリジェンス溢れる」浅利の退場によって、東京の戦いが(心理的に?!)非常に不安定になったと感じるのです。交代した小池も、そこそこの出来でしたが、彼とても、浅利がいるから「吹っ切れた攻撃参加」や、守備でのリスクチャレンジができていたのですからネ・・。小池にとっては、すぐに、それまでの「プレーイメージ」を大きく変更するのは難しかったのかも・・

 目立たない「インテリジェント・バランサー」、浅利。彼の早い回復を願わずにはいられません。

 さて試合ですが、確かに浅利の退場したあたりから、FC東京の全体的な「バランス」に、上がりすぎ・・、今度は逆に下がりすぎ・・という状況が目立つようになってきます。

 ただ、前半21分に生まれたサンフレッチェの先制ゴールの場面は、そんな「ゲームの流れの中でのバランス」とは関係のない、スローインから。左サイドタッチラインからの、上村のロングスローインをポポビッチが頭で流し、最後は、右サイドでフリーになっていた久保が、左足一閃!!

 このシーンでは、スローインと、「おとり」のポポビッチに、東京守備陣の「意識」が引きつけられ過ぎていました。そんな「最高テンション」の瞬間でも、冷静に、逆サイドにポジションする久保へボールが流れる「可能性」を感じられるディフェンダーがいたとしたら、もう世界レベル・・ということなんでしょうがネ・・

 この上村のロングスローは、サンフレッチェの常套手段。そのことを東京が知らないはずがない・・?! それでも、前半40分過ぎにも同じようなカタチでもう一度ピンチを迎えたことからすれば、彼らは、その攻撃に対する対処イメージを持っていなかった・・ということになりますが・・

 さて、先制ゴール。その後は、東京が「自分たち主体で攻めなければ・・」という展開になります。東京にとっては、あまり得意な展開ではない!?(先制ゴールを奪われたのはセカンドステージでは初めて!)

 人数を掛けてガッチリ固めるサンフレッチェに対し、東京の攻めは、ヨイショ、ヨイショと急ぎすぎ。いったい何を焦っているのか・・。一度、ゆっくりと後方へ展開して組み立て直すとか、最後方からロングボールを入れるとか、サイドチェンジを多用するとか、ロングシュートを打つとか・・何らかの「攻撃の変化」が必要なのに、彼らの攻めからは「ステレオタイプ」のイメージしか感じられなくて・・

 唯一、「変化」を演出できるとしたら、ツゥットの「中盤からの迫力ドリブル突破」くらいでしょうか。彼が、中盤で一人を抜き去ったときの展開が、もっとも危険な臭いを放っていたことは事実なのです。

 また東京では、負けたとはいえ、増田がチームになじんできていることも感じます。小林の代わりということなのですが、セカンドステージの最初の頃は、攻守にわたって中途半端なプレーが目立っていたのが、ここにきて、しっかりと「前でも後ろでも」効果的な絡みを魅せるようになったと感じます。今後の彼の活躍に大期待です。

 それにしてもサンフレッチェの守備のねばり強いこと。人数がいても、譲り合ったり集中がとぎれることなく、「まずオレがチェックする!」という積極的な意識を持ち続けます。脱帽!! これもトムソン監督の「意識付け能力の高さの証明」といったところです。特にポポビッチと上村。彼らのクリエイティブで激しい守備プレーに拍手です。後半は、押し込まれ続けましたが、ファイブバックにトリプルボランチでカウンターを狙うサンフレッチェに、結局東京は、ツゥットの突破からのセンタリングを神野が決めた一点止まりという結果に終わりました(神野のポストシュートなど決定的なチャンスはありましが・・)。

 確かに東京のサッカーは、高い守備意識と吹っ切れたダイナミック攻撃など、全体的には向上してきてはいますが(特に彼らの自信レベルの向上には目を見張らされる!)、自分たちが主体で攻めたときの「攻撃の変化」というポイントで課題が見え隠れした試合ではありました。

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 ここでは、久保の素晴らしい突破から生まれた藤本の追加ゴールについては触れませんでしたが、それについては今週号の「ヤフースポーツ2002クラブ」で、久保を中心に取り上げようと思っています。ご期待アレ・・

 さて、トップグループの三チームのうち、東京とガンバが負け、アントラーズだけが、しっかりと勝利を重ねました。

 アントラーズのチーム力が一歩抜きんでていることは周知の事実。これで彼らの独走になる・・?! いやいや、まだまだ波乱があるに違いない・・と「期待」する湯浅なのです。

 それにしてもアントラーズ。ベベトという「問題(プレーしていたときの最低パフォーマンスだけではなく、去った後の心理的なシコリも含めて・・)」をどのようにクリアしたのか興味がつのります。まあたぶん、選手たちが大人・・、ジーコという「ストロングハンド」がいる・・、そしてトニーニョ・セレーゾの「心理的な事後処理」がうまくいった・・ということなのでしょうがネ・・。とにかく誰かが、選手たちに対して「頭を下げた」ことだけは確かだと想像する湯浅なのですが・・



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