両チームともに、スタートのポジションバランスは「4-2-2-2」。そして両チームともに、そのバランスを、「次の守備を考えて」保ち続けます。自らリスクにチャレンジしていかなければならない攻めにおいても・・。ということで、両チームともに守備に入ったときのバランスはまあまあ。とはいっても、これでは攻撃が・・
たしかに、ある程度しっかりとボールは止まりますし、次元の低いコントロールミスも目立ちません。それでも、これくらいボールの動きが遅ければ、「次のウラ取りにつながる展開」など期待できるはずがない・・。スパッとコントロールしから、周りの状況を見る・・、そして敵にプレスを掛けられる状態まで待ってからパスを回す・・、でもその「次の選手」のところでは、(各ステーションで時間が掛かりすぎているから)展開を予測した相手ディフェンダーに狙われ、ガチャ、ガチャという競り合いになってしまう・・。とにかく、両チームともにボールをしっかりと動かすという意識がなさ過ぎます。これでは、ワクワクしたサッカーなど望むべくも・・
たしかに、前半7分の、ヴェルディー、キム・ヒョンソクのFKと、決勝ゴールになった前半38分の、ヴィッセル、ハ・ソッチュのFKは見事の一言でしたが、ゲームの流れの中での「ワクワク」させられるチャンスメイクは、ヴィッセルの同点ゴールのシーンのみ・・といった体たらくなのです。
とはいっても、ヴィッセルの同点ゴールは見応え十分ではありました。前半12分のこと。左サイドで、森とハ・ソッチュ(だったと思いますが・・)が、ワンツーを交換し、素晴らしいタイミングで森が抜け出します。そしてリターンパスを受けた森は、そのまま全くフリーで、センタリング気味のラストパスをヴェルディーゴール前へ・・。そこには、後方から爆発フリーランニングで上がっていた吉村(二列目からの飛び出し!)がしっかりと詰めていたのです。そして、そのまま「チョン!」とゴールへ流し込みます。 同点ゴール!!
ホントに、胸のすく「ワクワク・ゴール」ではありました。このゴールは、ヴィッセルの若武者、森にも0.8点くらいは献上しなければなりません。両チームを通じて、「ボールがないところでの勝負」を仕掛けているのは、この森一人でした。
森一紘は、ヴィッセル神戸ユース育ちの、弱冠19歳ということですが、その快活なプレーには、カッタルい試合の中で唯一の光明が見えたものです。二列目で、前後左右に大きく動きながら、相手の横パスを狙う。ヴェルディーの緩慢なパス回しにタイミングが合ってきた前半の半ばを過ぎた頃からは、何度も「高い位置でのインターセプト」を成功させかけます。また後半には、見事なインターセプトを成功させ、決定的なチャンスまでも作り出してしまいます。ただその「ダイナミズムの権化」が交代してしまった後は、攻撃のアクセントがなくなってしまって・・
また、両チームともに「前後のポジションチェンジ」もほとんど見られません。
ヴィッセル、吉村の同点ゴールは、意を決したボランチの吉村が、タテのスペースへ後方から走り上がったことで生まれました。後方から、ココゾ! のチャンスに走り上がってくる相手選手をチェックするのは難しいもの。つまり、それがチャンスの芽になるというわけですが、そんな「後方からの見慣れない侵入者」が、とんと出てこないのです。両チームともに、最初に書いたとおり「次の守備バランス」ばかりを気にした、変化のない攻めをくり返すだけ・・、これでは・・
後半も同様の展開。ボールの動きが遅い、つまり「次の守備のターゲット」を絞り込まれてしまうから、どうしても中盤での「ガチャ、ガチャ」という当たり合いに終始してしまう。これでは、人々をワクワクとさせる魅力的サッカーなど望むべくもない・・
ちょっと言い過ぎですかネ。いや、私はそうは思いません。今年のヨーロッパ選手権で上位を占めたチームは、例外なく、未来を示唆する、ダイナミックなサッカーを展開していました。例外のない高い守備意識に支えられた、攻撃における「ボールがないところでのクリエイティブなムダ走り(リスクチャレンジ!)」。それこそが、人々を「ワクワク」させるだけではなく、選手たちの大いなる発展も促す、魅力的なダイナミックサッカーの根元的なエッセンスなのです。
彼らとは選手個々のチカラが違う!? いやいや、選手たちの「基本的な発想」が確固たるものであれば、(成功するかどうかは別にして・・)確実にグラウンド上の個々のプレーに現れてくるものなのです。それが・・
以前見たヴィッセルは、守備が堅実であるにもかかわらず(全員の高い守備意識)、攻撃での「自由度」と「リスクチャレンジ度」が高く、かなりのワクワク感を味あわせもらったと記憶しているのですが、この試合では、相手がヴェルディーということで(また、まだセカンドステージでの勝ち星がないということで!?)、「次の守備のためのバランス」ばかりを考え過ぎた攻めを展開していた・・ということなんでしょうかね。
あまりにも、変化のない「同じリズム」の攻撃プレーを見せられ、ちょっと閉口してしまった湯浅でした。