湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第1節(2001年3月10日)

「内容的」には順当な結果になりました・・FC東京vs東京ヴェルディー(2-1、延長Vゴール!)・・(2001年3月10日、土曜日)

レビュー

 いや、本当にヴェルディーの守備は強い・・。逆に、FC東京の攻めにはまだまだ稚拙な部分が多く見られる・・。それが全体を通した試合の印象でした。

 試合は、立ち上がりから完璧にFCペースではじまります。とにかく中盤のダイナミズムで、完璧にヴェルディーを凌駕しているのです。そのエッセンスは、もちろん「中盤守備」。FCのそれが、とにかく忠実、そしてアクティブなのです(まあこれは、もう彼らの伝統ともいえるまでになっていますが・・)。でもそこからの攻めが・・

 その攻撃ですが、特に「最後の仕掛け」での変化に乏しくて・・。目立つのは、アマラオの突破ドリブルばかり。とはいっても彼にしても、欲しいカタチ(決定的なフリーランニングのタイミング)で勝負パスが出ないものだから、焦れて、戻ってボールをもらい、自分自身でドリブルで突っかけていってしまう。それも、「次の決定的な仕掛けをイメージ」するサポートなしに。これでは・・。

 あれほどダイナミックな中盤守備を展開しているのですから、そこからの攻めにおいても、ボールの動きにもっとダイナミズムが出てきてよさそうなものなのですが・・。まあ、ヴェルディーの老練なディフェンスを誉めるべきなのかもしれませんがネ・・。

 ヴェルディーの守備ブロックは、それは、それはクレバー(効率的&効果的)なプレーを展開します。もちろん、山田、西田、北沢といった忠実なプレッシング要員がいればこそなんですが。彼らの「前段階」でのクレバープレッシングをベースに、林、米山などが、うまいクリエイティブ守備を魅せるのです。ヴェルディーの守備ブロックは、本当に高質にバランスしていると感じます。(ちょっと唐突ですが・・)もちろん中澤のハードマーキングも、いつものように特筆モノでしたしね・・。

 それでもヴェルディーの場合、攻撃が・・。このことについては、「スポーツ・ナビ」で書きましたので、そちらを参照してください。

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 前半の立ち上がりには、呂比須の左サイドへのパスが「自分の」身体に当たってしまい、理想的な「タテパス」になって抜け出したアマラオが、うまいコントロールでバー直撃のシュートを放ちます。あれが入っていれば、そのまま東京が押し切ったのかもしれない・・!? いや逆に、早い時間帯の失点で、才能レベルでは確実に東京をリードしているヴェルディーの攻撃に火がついたかも・・

 とにかく、東京が完璧にゲームを支配し、ヴェルディーが「余裕」をもって守る・・という展開が続きます。「あの」不可思議な先制フリーキックゴールか決まるまでは・・

 ハーフタイムに記者室でビデオを見ました。あまりにも不思議だったもので、もしかしたら東京GKの土肥は、カゲから走り込んできた誰かに意識を引きつけられて「前へ」重心がかかったのかも・・なんて思っていたんですが、結局それは、完全に土肥のイージーミスでした。たしかに三浦のフリーキックは、グニャッとは曲がったんでしょうが、それにしても・・。

 そしてそこから、完璧にヴェルディーの「ツボ」にはまったゲーム展開になっていきます。必死に攻め上がる東京。でも、攻撃の最終段階では、どうしても「変化」を演出できないことで攻めあぐんでしまう(ヴェルディー守備ブロックに、仕掛けを先読みされてしまう・・)。フム、このままかな・・

 そんなことを思っていた残り一分。やってくれました・・、三浦文丈が。呂比須からのバックパスを受けた三浦が、意を決した勝負ドリブルで、ヴェルディーの最終ラインへ向けて大迫力のストレートドリブルを仕掛けていったのです。これです。この「変化」が、ヴェルディー守備ブロックのバランスを崩すのです。案の定。三浦へは、三人のヴェルディー選手が集中します。そして三浦から、彼本来の才能を感じさせる「フワッ」という、ヴェルディー選手の「腰」のあたりを抜ける決定的スルーパスが、(マーカーが三浦に引き寄せられたことで)まったくフリーになっていたアマラオに通ったのです。

 GKの菊池新吉まで抜き去ってしまうアマラオ・・。そこで菊池がアマラオを、足で引っかけてPK! また菊池もレッドカードです。交代GKの本並は、74分に、永井に代わって入ったばかりの飯尾に代わって登場したのですが、「ボールプレイヤー」ばかりのキャスティングのなかで、飯尾は良いアクセントになっていたのに・・なんて思っていた湯浅だったのですが・・。

 ところで、この三浦文丈が演出した「変化」ですが、これには、浅利と交代した中盤の才能、増田忠俊(元日本代表・・前アントラーズ)の、攻守にわたる迫力あるプレーも、心理的に大きく影響していたと思う湯浅なのです(彼の積極リスクチャレンジが、チームメイトたちにとってのポジティブな心理的刺激になった!!)。浅利に代わって左サイドに入った増田は、本当に、至るところで攻守にわたって大活躍。攻撃では、意味のある「タメ」を演出したり、頻繁にドリブル突破にトライしたり・・、また守備でも「読みベース」のインターセプトを何度披露したことか・・。頼もしい限りじゃありませんか。

 でも、「継続性」という意味では、まだちょっと課題が・・。要所では優れたプレーを披露するのですが、どうも「隠れた」ところで(特にボールがないところでの守備!?)気を抜いてしまう印象を拭い去ることができませんでした。それが、増田が先発で使われない理由なんですかネ・・

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 延長は、10人対11人で戦うことになったわけですが、そこでも東京が、(数的に優位なチームの気が抜けてしまうケースが多いなかで!)「数的に有利な状況」をうまく活用するサッカーで、ガンガンと攻め込みます。それも、全体的な運動量とポジショニングバランスがしっかりとしているからなんでしょう。もう誰も彼らの勢いを止められない・・(!?)。それでは同点ゴールが決まるまでの攻撃は一体何だったんだ・・ってなことを思ってしまって。

 それには、ヴェルディーの右サイド、西田が、延長に入ってから、ケガで退場になってしまったことも大きく影響しました。ヴェルディーのベンチに残されていたのは、前園と武田だけ・・(結局、前園が出場)。そして、それまで中盤守備の「心臓」だった山田が、右サイドへ回り、動き回って疲れ切っていた北沢が守備的な位置へ・・。それでも三浦淳宏は、まだ中途半端なプレーに終始してしまって・・。これでは守備ブロックのバランスが崩れてしまうのも・・

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 ヴェルディーは苦労するかもしれません。松木監督には頑張ってもらいたいのですが、何せ「ボールプレイヤー」を、ベンチも含め、あれだけ登用するんですから・・(スポーツ・ナビを参照してください)。もちろん「何らか」の確信があったからなんでしょうが・・

 これでは、日本代表、三浦淳宏までもが、「朱に染まって・・」しまわないとも限らない・・そんなことまで心配になってしまいました。とはいっても三浦は、まだ、中盤での「自ら積極的に仕事を探す」というプレーには慣れていませんから、これから・・なのかもしれませんが。

 とにかく三浦淳宏にせよ、永井、前園にせよ、才能は十分なのですから、とにかくいまは、「何か」から吹っ切れたプレーを望んで止みません。それがなければ、本当に「手遅れ」ということに・・

 私は、彼らのような「才能」を、ヨーロッパでの経験も含め、もう何百人となく観察し、分析しています。もちろん彼らの「(栄)盛」だけではなく「(枯)衰」の両方についてです。「心理環境的なプロセス」も含め、しっかりと・・。だからなおさら、彼らのことが心配になってしまって・・。まあプロに対する余計なお節介ですかネ・・



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