湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第11節(2001年6月16日、土曜日)

いや堪能しましたヨ・・ジュビロのハイレベルサッカーを・・柏レイソルvsジュビロ磐田(0-1)

レビュー

 やっぱり「スタジアム観戦」が基本ですネ。柏の葉スタジアムで、まずそんなことを感じました。「視野」にグラウンド全体がスッポリと入ること、また「距離感」もやはり違います。こちらは「読み」をベースに観戦するわけですが、その「読みのファクター」が、テレビの「タクティカル・アングル」などとは比べものにならないほど多岐にわたって把握できるんですよ。ということで、今回のコンフェデカップは、今でも残念で・・

 ところで「柏の葉スタジアム」。「劇場」というコンセプトからはかけ離れた、旧態依然とした(体育会系の!?)陸上競技場です(日立柏サッカー場の方がよっぽど『シアター』!)。それに、交通の便の悪いこと・・。「政治的な思惑」で使用することが決まった(!?)このスタジアムについては、ファンの方々からの様々なネガティブ意見があったとか・・。さもありなん。

 まあ、前時代的な「生活者無視という姿勢」の官僚的な組織は、長つづきしませんよ。小泉政権が誕生したことだって、生活者の皆さんが「ノイジー・マジョリティー(サイレント・マジョリティーの反語ですよ!)」になっていることを如実に証明しているというのに・・。

 知り合いの、有名なマーケッター(マーケティングのエキスパート)が、私にこんなことを言ったことがあります。彼はドイツ人です・・。「みんな、私のことを素晴らしいマーケティング分析家&プラナーとか誉めてくれるけれど、オレはさ、単に、マジョリティー生活者の本音のマインドや意見をしっかり把握しているだけなんだヨ・・」。素晴らしく含蓄のある言葉ではありませんか。

 政治や官僚(的な)組織、はたまた企業やメディアも含め、いま世界的な大競争時代に呑み込まれようとしています。大きな「パラダイム(枠組み)チェンジ」が、否応なしに進行しているのです。もちろんそこでの主役は「生活者」。そのことに気づかない(生活者の方々を、いまだに「一般大衆」と捉えている!?)組織は、確実に淘汰されるということです。

 あっと・・、ちょっと脱線しすぎてしまって・・

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 さてレイソル対ジュビロ。まず感じたことは、彼らのサッカーの「内容」に明らかな差があるということです。その意味ですが、守備では、互いのポジショニングバランスをベースにした、相手の次の展開に対する「読み」のレベル、そして攻撃では、何といってもボールの動きです。

 選手たちのプレーを見ているだけで、明確に、両チームの「戦術的な発想レベルの差」が見て取れるというわけです。

 守備については、また別の機会にゆずるとして、ここでは、攻撃での「ボールの動き」に注目しましょう。

 ジュビロの場合は、本当に「シンプル」に、そしてスムーズにボールが動いていきます。要は、パスを受けた者が、ボールをこねくり回さず、素早く「ある程度フリー」の味方へ展開できているということです。それがレベルを超えている。まさに、素早く、広い『ロジカルな』ボールの動き・・といったところ。

 そんなボールの動きに、中盤でのクリエイティブな集中守備を標榜するレイソル守備陣の「足」が止まってしまいます。最後の時間帯などは、「あの」ホン・ミョンボでさえ、「あっ、これはダメだな・・」なんていう雰囲気を漂わせてしまって・・

 それに対してレイソルは、一人ひとりのボールホルダーが、必ずボールをこねくり回し(時間のロス=パスを受ける方のアクションの停止!)、そして「詰まった状態(=ジュビロ守備陣が簡単に次のパスを読める状態)」から、それも「パスをしてはいけないところ(ジュビロに読まれているところ)」ばかりへボールが動いていくんですよ。これでは・・

 ジュビロの中盤選手たちは、全員が、常に「次の展開」をイメージしながら「パスレシーバー」になるために走ります(フリーランニング)。だから、ポンポンとパスがつながり、最後には、例外なく「相手がいないところ」へボールが動いていくのです。心地よいことこの上ないですよネ。

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 前半26分でしたかネ。例によって、レイソルの「ミエミエのパス」を簡単にカットしたジュビロが素晴らしい展開の攻めを展開したシーンです。清水、藤田、西が、はたまた福西が、「まず」右サイドで、素早く「ショート&ショート」のパス回しをします。これでレイソルの守備ブロックは、全体的にそのサイドへ引き寄せられます。

 次の瞬間、中央スペースへ、スッと移動してフリーになった服部へパスが回されたのです。このとき服部のアタマには、明確な「次の展開イメージ」が描かれていたに違いありません。スパッとトラップし、本当に自然な動きでタメを演出し(事前にイメージしていたことの証明!)、左サイドでまったくフリーで上がっていたジヴコビッチの前のスペースへ、正確なスルーパスを通したのです(もちろんジヴコビッチは、服部がボールをもったときには既に、確信のフリーランニングをスタートし、そして走り抜けていた!)。

 そして、ジヴコビッチからの鋭い「ラスト・ピンポイントセンタリング」が送り込まれます。もちろん、ボールが飛んでいくゴール前のスペースには、(たぶん服部へボールが回された時点から!?)明確に「次の最終勝負」をイメージしていた「ゴン隊長」が、全力で、本当に全力で、突っ込んできていました。

 この攻撃は、レイソルのスーパーストッパー、薩川の、「サスガ」の忠実マンマークによって、「隊長」の眼前で、ヘディングでクリアされてしましたが、それは、それは美しくクリエイティブで、危険な攻撃ではありました(それ以外にも、ジュビロ先制ゴールの後、何回、複数プレーヤーの勝負イメージがクリアにシンクロした美しいカウンター攻撃が繰り出されたことか・・)。

 『中央でショート&ショートのパスを回し、素早く、相手守備ブロックが薄くなったところへボールを動かすことで、シンプルに最終勝負に入っていく・・』。大拍手じゃありませんか。

 そんなところにも、複数のチームメイトたちが描く「次の展開イメージ」が、本当に高い次元で常にシンクロしている・・という、ジュビロの強さの秘密をかいま見たものです。

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 ということで、たしかに「1-0」という最小ゴール差ではありましたが、「内容」では、ジュビロが(アウェーにもかかわらず)レイソルを完璧に凌駕したといったゲームでした。

 それにしてもジュビロ選手たちの「プレー姿勢」からは、本当に「大人の落ち着き」を感じます。まあ、「余裕がある」なんていう言い方もありますが、彼らの一つひとつのプレーに、そんな成熟した「(ハイレベルな)戦術的発想」を感じるんですよ。だからこそ、攻守にわたり、落ち着いてプレーすることが出来る・・。「伝統」・・っちゅうことですかネ。

 たとえば、「1-0」とリードした最後の時間帯ですが、ジュビロ守備ブロックの「冷静さ」はレベルを超えていました。彼らには明確に見えていたんでしょうね。レイソルの「次の勝負アイデア(勝負ゾーン)」が・・。いや、素晴らしい。

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 この試合では、ジュビロの全員がヒーローでしたが(そのことも、ジュビロのコンセプト!!)、特に「ゴン隊長」が魅せつづけた爆発(&忠実)フリーランニングには、相変わらず「深い感動」を覚えました(この試合唯一の、コーナーキックからのヘディングゴールは、まさにその報酬!!)。

 この試合では、名波、奥、高原がいないということで、ジヴコビッチ、西、そして清水が先発。そのなかでは、清水範久の「グラウンド全域でのガンバリ」が目立ちに目立っていたと感じました。ボールを持ったら、正確な技術をベースに、シンプルに展開したり、チャンスとあらばドリブル勝負を仕掛けたり。またボールのないところでの強烈なフリーランニングもインプレッシプ。そして前線からの忠実でダイナミックな守備参加。見ていて楽しい限りではありました。

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