湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第3節(2001年3月31日、土曜日)

いや素晴らしい、エスパルス・・ヴェルディーvsエスパルス(1-2)

レビュー

 前節(第二節)のヴェルディー対アントラーズ戦。私は見ていないのですが、多くの方からレポートを送っていただきました。内容は、異口同音に、「湯浅さん、後半ヴェルディーは見違えましたヨ!」なんて・・。つまり、後半に登場した武田が、チーム全体にとってのレベルを超えた「刺激」になり、ゲーム内容が見違えるほど向上した・・ということなのですが、そのレポートを読んで、「そうか、ヴェルディーは、バランスのとれたキャスティング」を見つけたのか・・なんて思っていました。

 「バランスのとれたキャスティング・・」。この表現は、第一節の後に、スポナビに発表した「激烈なコラム」の最後に使った表現です。つまり、「ボールプレイヤー」ばかりじゃ、中盤での「ダイナミズム(=活動性)」を活性化できるはずがない・・ということなのですが、「その後半」では、中盤のボールプレイヤーが(特に三浦淳宏が!?)、武田の「闘う姿勢」に大いに刺激され、自分主体で、攻守にわたって「ボールがないところでも」闘いはじめた・・と思ったというわけです。

 その意味で、このエスパルス戦に大いなる期待をもっている湯浅です。まずは「導入部」でした・・。さて実際のゲームでは・・!?

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 試合は、エスパルスペースで進みます。要は、中盤での守備、そして攻撃でのボールの動きで、ヴェルディーを凌駕しているということです。また、攻撃の最終ステージにおける「決め手イメージ」でも、エスパルスの方が完全に上回っています(エスパルスは、最終勝負シーンにおける危険度で格段に進歩している!)。

 この「決め手イメージ」ですが、要は、エスパルスには、両サイドの市川、アレックスという「仕掛けイメージのリーダー」がいる・・ということです。そしてもう一つ。グラウンド状態を考え、どんどんとミドルシュートも打ってくるなど、攻撃の変化でも魅せます。

 それに対し、ヴェルディーは、攻撃のカタチを作り出すことがままなりません。やっと前半の27分に、永井のラストパスから矢野が惜しいシュートを打ちましたが、それでも、まったく単発のイメージを払拭することができなくて・・

 もしヴェルディーが、前節、アントラーズ戦の後半において「良いサッカーのイメージ」を、武田とともに掴んだのならば、それを変えるべきではなかった!? 「ウイニングチーム・ネバー・チェンジ(良いプレーイメージで勝ったチームは決して変えるべきではない!)」という、サッカーのセオリーがあるんですが、松木監督は、武田を「ゲームペースを変える切り札」的に考えているということなんですかネ・・。

 とにかく前半では、エスパルスの「ダイナミズム」ばかりが目立ってしまって・・。そして、小気味よいサッカー内容が、最終的な「結果」に、どんどんとつながっていきます。彼らのダイナミックなサッカーが、決定的シュートチャンスの創造につながっていくのです。両サイドの、市川、アレックスを中心に・・

 以前には頻繁に見られた、アレックスや市川による「強引な突破トライ」も、この試合では、突破にチャレンジすると見せかけてのラストパスなど、最終シーンでの仕掛けが、どんどんとスマートになっていると感じます。それも、「バロン効果」なんでしょう。

 エスパルスの「ダイナミズム」ですが、そのベースが、中盤における積極的な「予測ベース」の守備だけではなく、攻撃での、ボールがないところでの「クリエイティブな無駄走り」であることは言うまでもありませんよね。

 とにかく、見ている方々にとっては、エスパルス選手たちが魅せる「積極的な仕掛けの動き」が、ヴェルディーのそれを完璧に上回っていることは明らかだったに違いありません。それが、中盤でのボールの動きに如実に現れていたということです。

 そして41分、試合内容を象徴する先制ゴールが決まります。エスパルス・・

 カウンター気味の状況から、左サイドのアレックスにボールがわたります。この瞬間、安永が、「ニアポスト側」へ爆発ダッシュを仕掛けます。もちろん、一人のヴェルディーディフェンダー(米山)を「引き連れ」て・・。そしてアレックスからの「ラスト・センタリング」が、その「ウラスペース」へ忠実に走り込んでいた横山へ送り込まれたというわけです(彼へのマークは、中盤の林か、左サイドの三浦か・・?? どちらにしても、彼らのマークが大失敗したことだけは確かな事実です!)。こんなところにも、エスパルス選手たちの「最後の仕掛けイメージ」が大きく発展していると感じる湯浅なのです。

 それにしてもヴェルディー。特に感じるのは、彼らの攻撃における「各ステーション(ボールを持った選手)」での、次のプレーに対するイメージが鈍重だということ。つまり、ボールをもったそれぞれの選手たちが、本当にイヤになるくらいボールを「こねくり回す」ということです。これでは、ボールを動かすという「攻撃の基本的なコンセプト」を実践できるはずがない・・。つまり、周りの選手たちも、どのタイミングでパスを受けるのか分からず、結局「足を止めて」しまい、心理・精神的な悪魔のサイクルに落ち込んでしまうということです。

 ここは、議論のポイントなのですが・・。それは、(ボールの鈍重な動きの原因が)周りが動かないからパスから通らないのか、ボールホルダーがボールを「こねくり回す」から・・ということです。私は、ヴェルディーの選手たちが、「まずしっかりとチーム内でボールをキープする」というイメージが強すぎるために、ボールを持った選手たちが、「確実にパスをつながなければ・・」と意識し過ぎているからだと思っているわけです。

 それに対し、エスパルスのボールの動きの小気味よいこと・・。彼らは、「確実な・・」などというのではなく、リスクを冒してでも、とにかく「前向きの仕掛けを・・」というイメージで、素早く、広く、そしてリスキーにボールを動かしつづけるのです。いや、素晴らしい・・

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 さて後半。やっと出てきましたよ、武田が・・。でも、中盤のダイナモ、北沢が交代してしまって・・。それも出てきたのが「典型的ボールプレイヤー」の前園。これで、前気味の中盤は、永井と前園・・。フ〜〜。(この厳しい評価を彼ら自身がどのように認識するかが、すべてのスタートライン・・僅かに残された期待も含めて、敢えて・・)

 ただ後半の立ち上がりは、ヴェルディーが、両サイドバック(西田と三浦)に対する「積極的な押し上げ」という意識付けも含め、スリーバック気味にしたことが功を奏し、最初の数分間は、彼らがペースを握ります。オッ、これは・・なんて、「武田効果」も含めて、彼らの「変身」に対する期待が膨らんだモノです。それでも結局は、10分を過ぎたら、ヴェルディー「本来」の「キープ&キープ」ペースに戻ってしまって・・。これでは・・

 武田ですが、たしかに「実効(刺激)レベル」は向上しました。自分主体でどんどんと動いてパスレシーバーになる・・、パスがこないことなど関係なく、すぐに次のパスレシーバーポジションへ急行する・・、そしてその動きをくり返す・・。いいじゃありませんか。でも、その「アクティブプレー」をサポートする選手たちが・・

 前節の試合では、武田が出場してきた時点では、まだ「チームのダイナミズム」という意味で可能性をもった選手たちが残っていたように記憶しているのですが、この試合で中盤を構成したのは・・。フ〜〜。

 厳しい評価ですが、このことは、観ていた方々が切実に感じていたに違いないと確信する湯浅なのです。

 バロン、澤登という中心選手を欠いていたにもかかわらず、「最終勝負シーンでの仕掛け内容」でイメチェンを果たしつつ、「素晴らしい内容」でヴェルディーを凌駕したエスパルス。とにかく彼らは強い。

 これでエスパルスは、完全に優勝候補の一角を担うことになりました。面白くなってきたじゃありませんか。



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