湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第9節(2001年5月12日、土曜日)

互いに譲らない、ハイグレード&ハイテンションの「膠着ゲーム」ではありました・・清水エスパルスvsジュビロ磐田(1-0、Vゴ〜〜ル!)

レビュー

 この試合ですが、どうしてもはずせないスケジュールが入ってしまったために、テレビ観戦ということになってしまいました。そして、地上局でしたから、後半が終了した時点で、「残念ですが・・」ってなアナウンス。(諦めながらも・・)メディアも、本当の意味での「顧客志向」にならなければ、世界的な(また、ビジネスセクターを越えた!)大競争時代を生き抜けないぞ!・・なんて、理不尽に憤っていました。まあ、自分勝手な怒りではあります。自分が「Jチャンネル(!?)」に加入しさえすればいいんですからネ・・

 それまでの「サイレントマジョリティー」の人々が、着実に「ノイジー・マジョリティー」へと変身しつつある現代の日本社会。そんな「変化の時代」では、(今までと何の変わりばえもしない、過去の栄光を引きずった発想をベースに!)自分たちが「そうに違いない!」と思いこんでいる顧客のニーズをクリアしていくだけの「組織」では(供給者意識に染まったままの体質では・・)、確実に淘汰されてしまう・・。「ニーズ(需要)」の内容は、どんどんと変化していきます。それに対応するだけではなく、自ら「ニーズを創造する」という努力を怠った「組織」は、必ず淘汰されてしまうと思うのです。もちろんマーケティング理論をベースにした「実感」からの発言ですよ・・

 ・・ってなことを「しつこく」書いてしまうのは、前述したように「途中で」放送を切られちゃったから。ホント、残念で・・。というわけで、私は、平松の決勝「Vゴール」は見られず仕舞いでした。

 延長戦はどのような展開だったのでしょうかネ。それまでの「全体的な展開」どおりに、降着したものだったんですかネ・・

 最後まで見られなかったのですが、とにかく絞り込んだテーマだけはレポートしておかなければ思い、落胆しながらもキーボードに向かった湯浅だったのです。

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 さて、まず何といっても、「名波の不在」が目立っていたことについて・・

 決して、名波の代わりに「中央」にはいった藤田の出来が悪かったわけではありません。ただ、名波がいなかったことで、中盤の「心理的なバランス」が失われてしまったことだけは確かな事実だと思うんですよ。その意味は、「中盤選手たちの、互いの信頼レベルの揺れ動き」というふうに定義しておきましょうかネ。

 守備では、(基本的なポジションとは関係なく)「読みベース」でボールへの勝負にいく者、「次」のカバーリングにはいる者(適切なカバーリングがあると確信できるからこそ、ボールをチェックする者が思い切り行ける!)、はたまたボールのないところでの忠実マークを確実に実践する者など、そのコンビネーションに「穴」のないことが、互いの信頼のベースになります。

 また攻撃では、二列目、三列目の選手たちによる、ボール絡み、またボールのないところにおける「チャンスを見計らった攻撃参加」が頻発しても、「次の守備」における前後左右のポジショニング(スペース)バランスが崩れない・・そのことに対する「互いの信頼」が、後ろ髪を引かれない、吹っ切れた勝負のベースというわけです。

 このことについては、(ジュビロをモデルに)来週発売のサッカーマガジンで書きましたので・・

 私は、その「信頼関係」が不安定になったことの大きな「要因」の一つが、平野だったと思っています。

 それくらい、今シーズンはじめて先発した平野の、「腹が立つほど」怠慢・緩慢なプレーが目立ちに目立ってしまって・・。彼は、左サイドの「中盤ゾーン」で上がり下がりする「だけ」の、実効の「ジの字」も感じられないプレーに終始したのです。もちろん「ボール回り」になれば、攻守にわたって、少しは「勝負所」に絡みはします。それでも、サッカーの最も重要な「発想」である「ボールのないところでのプレー」が怠慢で、緩慢で・・。そして、攻守にわたり、「足許」だけのプレーに終始する・・

 このことは、フランスワールドカップ当時から何度も書き続けてきたことです。そしてこの試合においても、彼の「プレー姿勢」に何らの変化も見られなかったことに対し、心から落胆してしまったというわけです。グランパスをクビになり、パープルサンガの降格を防ぐことが出なかったことでジュビロにたどり着くなど、「プロ」である彼にとっては、願ってもない「変化(=新しい環境=大いなる刺激)」の連続だったにもかかわらず・・

 「ハイレベルな才能」だからこそ、私の「落胆と怒りレベル」が天文学的に高まってしまったというわけなんですよ。

 それに対して、奥大介の「大きな発展」が目立っていること・・。嬉しくて仕方ありません。私は彼についても、リーグや日本代表の試合で厳しい評価を書き続けてきました。それもこれも、彼の「天賦の才」が惜しくて仕方かったから・・。それがここにきて、攻守にわたる「積極性レベル」が、格段に好転しはじめているんですよ。

 平野と同様に、サイドを基本ポジションにしている(右サイド)にもかかわらず、また直接的な相手が「あの」アレックスであるにもかかわらず、チャンスとなったら、ズバッと、決定的スペースへのフリーランニングを敢行したり、ドリブルで切れ込んでいったり・・。もちろん守備での「実効レベル」も大きく向上しています。

 蛇足になりますが、ここのところのレッズの小野伸二も、奥と同じように、「何かを掴んだ」ように、好調な「積極プレー」を展開しています。このことについては、数日前にアップした『Isize Sport 2002 Club』で書きましたので参照してください(タイトルは「ゲームを楽しみはじめた小野伸二」)。リンクボタンは、トップページにありますので・・

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 試合展開は、とにかく「膠着状態」そのもの。互いに中盤守備を強化することで、相手の「強みを消す」という戦術でゲームに臨んでいるのです。とはいっても(前半はともかく)、後半にはいると、ちょっとゲームが「動き」はじめる気配は見せてはいましたがネ・・

 その後半の立ち上がり、(緩慢な平野が抜けたことで!?)ジュビロの中盤が活発になります。両サイド(奥と西)の押し上げも、一つの「攻撃ユニット」において、どちらかは常に「最終勝負ゾーン」まで顔を見せるようになっていましたからネ。そんな積極姿勢が、鳥肌が立つくらい美しいタイミングの決定的フリーランニングをベースにした、「隊長」の決定的シュートや、その後に奥が放った惜しいヘディングシュートなどにつながったと思うのです。それに対し、両サイドからの攻撃がままならないエスパルスは攻めあぐみ続けてしまって・・

 全体的には、ジュビロの方が、「最終勝負の発想」という意味で、エスパルスを上回っていたと感じます。何といっても、機能性が高いミッドフィールドだけではなく、「隊長」と高原もいますからネ。この試合では特に中山。彼の「闘う姿勢」は感動的でさえありました。オレたち(ジュビロ)は自分たちのサッカーができていない・・、よし、とにかく仲間を刺激しなければ・・と、決定的スペースへ抜けるフリーランニングだけではなく、オトリのフリーランニング、シンプルな展開プレー、最前線からの積極守備、はたまた刺激的な(!?)大声など・・、ダイナミズムをほとばしらせるのです。

 対するエスパルスでは、やはり、最終勝負へ向けた「仕掛けの発想」に、まだ「迷い」があるように感じます。アレックスにしても市川にしても、はたまた、二列目、三列目から攻め上がってくる選手たちにしても、とにかく「バロン」を、もっとターゲットマンとして活用した方がいい・・と感じたのです。

 例えば伊東や澤登が、どんどんと後方から、彼の足許へ「強烈」なタテパスをつけるのです。潰されてもいいじゃないですか。相手ゴール前のゾーンで「こぼれ球」を狙えれば・・。バロンにしても、かなりの確率で、しっかりとした「ポストプレー」を成功させられるだけの能力を持っています。それなのに何故もっと「バロンを有効に使ったチャレンジ」を仕掛けないのか・・なんてことを感じていたんですよ。

 たしかにジュビロのディフェンスは強固だから簡単ではないのでしょうが、シンプルなボールの動きから、最前線のバロンへ向け、「アクティブ・プレー・エリア」を大きく前進させることにトライしなければ・・。両サイドのアレックスや市川にしても、前が詰まった状態でも「無理に」ゴールラインを目指すのではなく、もっと頻繁に「アーリークロス的」な早めの展開パスを「バロンへ」上げ、その後の爆発ランニングで、ボール周りゾーンへ突進していけばいいのに・・。それは一見、アバウト攻撃のようですが、明確な「仕掛けイメージ(チーム戦術的な合意)」さえもっていれば、確実に「実効」をともなうものなのです。そうです。今シーズン開幕前のゼロックススーパーサッカーで魅せたような・・

 攻めのプロセスに、そんな「明確なアクセント」が出てくれば、全体的な「攻めの変化」も、うまく出てくるものなんですよ。例えば・・

 アレックスが左サイドでボールを持ち、シンプルにバロンへ上げるような素振りをする・・ジュビロ守備陣が「中央」へ寄る・・その瞬間アレックスがタテへドリブル勝負を仕掛ける・・そのタテスペースをカバーするジュビロのディフェンダーはもういない・・そこから、今度は狙いすましたピンポイントのラストセンタリングを上げる・・ってな具合にね・・。

 攻撃におけるもっとも重要なコンセプトは、「広さ」と「変化」なのです。

 それにしても、延長の試合展開はどんなものだったのだろう・・。また平松のゴールは、どんなプロセスで入ったんでしょうかネ・・。フ〜〜

 乱文・・失礼いたしました。



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