それでも、そんな「危険な流れ」のなか、ピッタ監督が、「うまい」選手交代をみせます。エスパルスに追いかけゴールを決められた後、まず、まったく走れなくなってしまったアリソンに代えて、土橋を入れ、最後の時間帯では、これまた燃料を使い果たしたエメルソンに代えてフレッシュな田中を投入したのです。もちろん最初のアリソンは、レフェリーに注意されながらも「最後」まで歩いてグラウンドを去り、エメルソンも同様にゆっくりと・・。これでレッズが(最後には、前述の一発チャンスを作られてしまったとはいえ)一息つき、逆にエスパルスが、「それまでのエネルギー増幅イメージ」を殺がれてしまって・・
最後は、一進一退の展開から、レッズが「余裕の逃げ切り」。
それにしてもエスパルスは、レッズの「戦術的な術中」に完璧にはまり込んでしまいましたネ。この試合は、レッズの作戦勝ちというところでしょう。
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まず「構図」から。あっと・・またまたレッズを中心に書くことをお許しください。何といってもこの試合は、エスパルスの「良さを消した」レッズだったもので・・。
「構図」ですが、それは、開始1分に、エメルソンのスーパーゴールが決まったから・・という考え方もあるでしょうが、私は、ピッタ監督がはじめから計画していた「ゲーム戦術」だったと思っています。要は、レッズが、「7人+一人」で忠実に守備ブロックを作り、ボールを奪い返したら、「3人+一人」で攻めるということを最後まで徹底したということです。
まず守備ですが、井原を「スイーパー」に、抜群の忠実さと強さを魅せつづけるストッパーコンビ、石井と路木が最終ラインを形成します。両サイドは、右が山田、左が城定。その前に、鈴木と阿部の守備的ハーフコンビが並び、その「7人のブロック」に、前線の三人のうち、その時点で一番後ろにいる選手が、前からのチェイシングを主体に守備参加するという発想です。その守備参加にしても、誰かサンのように「アリバイ」ではなく、しっかりとした「実効ある」ものでした。それも、成功の要因です。
そのなかでは、(両ストッパーもそうですが・・)とにかく両サイド、そしてミッドフィールドの鈴木が魅せつづけた貢献度が抜群でした。
山田は、アレックスを「ほぼ」完封し、城定は、市川に仕事をさせませんでした。また鈴木は、エスパルスの「二列目」に対する(ケースバイケースで決まってくる)マークを、本当に忠実に「最後の最後まで」やり遂げるのです。
山田とアレックスの勝負では、アレックスが、サイドスペースをドリブルで突破したシーンは皆無(山田の競り勝ち!)。時間が経過するにしたがって、徐々に自信をなくしていったアレックスが、横パスに逃げるシーンが出てきてしまったりして・・。「あの」アレックスが・・ですよ。とはいっても、最後の時間帯では、増幅したチームの勢いに乗って、何度か、中へ鋭く切れ込んでいくシーンはありましたが・・。まあ、この一騎打ちは、山田の「ハイレベルな能力」を証明する結果になったということです。強い、強い・・
それに対し城定は、忠実で堅実な「サイドスペースを埋めるディフェンス」に徹します。これまた、市川にチャンスを作らせるシーンは、ほとんどありませんでした。
そして鈴木啓太。この試合では守備に徹します。そして、相手の攻めの流れのなかで(最終勝負ゾーンをしっかりと見極めて!)、「コイツだ!」と決めた(自然と決まってくる)相手を、本当にスッポンのように、「最後の最後まで」マークしつづけるのです。もちろん、味方の最終ラインを追い越してまでも・・。
また彼自身は、テクニックでも秀でた才能をもっています。だから、ボールを奪い返したら、阿部と同様に、しっかりとした「組み立てのスタートラインとしての起点」にもなれるのです(とにかく相手の前からのプレッシャーでも、落ち着いて前線へつなぐ・・もちろんミスはあるが、それで自信レベルが揺らぐことはない・・セカンドステージで何度か体感した修羅場が効いている!?)。抜群に高い守備意識(これこそインテリジェンスの証明!?)をもった「技術系プレーヤー」、鈴木啓太の今後に、大いなる期待が沸いてきたモノです。
ということで私は、この試合のレッズは「トリプル・ストッパー」なんていうイメージで守備ブロックを機能させていたと思っているんですよ。石井、路木、そして鈴木。これほど高い意識の選手たちに囲まれて、井原は幸せ者・・!?
井原については、まだまだ「ポジショニングの不安定さ(曖昧さ)」を感じます。それって、自分自身の「足の遅さ」に対する不安心理が原因・・!? まあそれでも、「周り」が抜群に安定しているから、経験ベースの「読み」も冴えていましたけれどネ。
ということで、ほとんどの時間帯、ゲームを支配しつづけたエスパルスでしたが、「最終勝負の仕掛け」では、活路を見いだすことができないままに時間だけが過ぎていきます。彼らの攻撃における生命線ともいえる両サイドと二列目の飛び出し(もちろん、バロンのヘディングでのラストパスなど=ポストプレー=をイメージしてですよ!)を、ほぼ完全に掌握されてしまってはネ。
こんな展開だからこそ、「仕掛けの最終段階での変化」を演出できる選手が、「両サイド以外」にも必要なんですよ。最後の時間帯に魅せた、縦横無尽のポジションチェンジからのサイド攻撃は、抜群の危険度ではありましたが(そんなダイナミズムを、どんな状況においても、物理的、心理的にリードできる選手がいない!?)・・
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さて、エメルソン、アリソン、そして永井で構成するレッズの攻撃陣。縦横にポジションチェンジをくり返す、彼ら「トップ三人」に、必ず、後方から「一人」はバックアップしてきます。とはいっても、この試合では、その「一人」は、阿部と、山田に限定されていましたがネ。
それでも山田は、アレックスが「疑心暗鬼」にかかるまでは、そうそうは前へは行けません。だから最初の時間帯での「後方サポート」は、阿部が主体。彼の「左サイドスペース」への押し上げは、何度か効果を発揮していました(もちろん守備をベースにして!)。そして、前半も中盤を過ぎる頃になってからは、アレックスの心理を「コントロール」した(確信レベルが高揚した)山田も、どんどんと攻撃の最終シーンに絡んでくるようになってきます。前半ロスタイムでのロングシュートは見事! カーブ・ドロップ・シュート!?
それにしても、エメルソン。彼の突破力は、それは、それはレベルを超えています。またこの試合では、シュートも安定してきていると感じました(フルパワーシュートばかりではなく、コントロールキックも心がけていた!?)。それに、(最初の25分間くらいまでではありましたたが)アリソンも、また永井も、どんどんと実効あるリスクチャレンジプレーを魅せていましたからネ。そんなこともあって、抜群の強さを誇るエスパルス最終ラインも、何となく「下がり気味」になってしまって・・。そして、そのことで「空いた」中盤の上がり目ゾーンを、どんどんとポジションチェンジをくり返す「レッズのトリオ」が活用していくんですよ。
たしかに、カウンター気味の「攻撃回数」は多くはありません。それでも、一回、一回が、抜群に危険な「ニオイ」を放つのです。
2-3本ありましたかネ。エスパルス最終ラインの「背後の決定的スペース」を完璧に攻略したオフェンスが・・。アリソンとエメルソンの「ワンツー」(前半31分)、アリソンと永井のワンツーで、アリソンが抜け出したプレー(後半2分・・でもアリソンはオフサイド)、山田とエメルソンの「大きなワンツー」からの決定的スペースの攻略(右サイドの決定的スペース・・そこから、エメルソンの完璧なトラバースパス・・でもゴール前の永井は、そのパスをイメージできていなかった・・)等々。
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とにかくこの試合は、スキャンダラスとまで言える「さいたまスタジアムでの最低ゲーム」を、少しはリカバーできるような内容だったとすることができるでしょう。とにかく選手たちは、最後の、最後まで集中を切らさず、徹底し、堪え忍んで、泥臭い勝利をモノにしたんですから・・。
選手たちには、この試合で勝ち取った「闘うイメージ」を増幅させていかなければいけません。そしてそれをベースに、「ハイレベル・サッカー」へのステップを上っていって欲しいモノです。
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アッと、「アリソン」についてショートコメントを・・。
少なくとも彼のプレーからは、攻守にわたる「本物の実効プレー」ができると(また、やろうとする積極的な意志も)明確に感じました。守備における「ボールを奪い返すゾ!」という意欲。そして攻撃での「リスクチャレンジ姿勢」。プレー内容も、良かったですよ・・最初の25分間くらいまではネ。
それでも彼のコンディションは悪すぎます。心理的、精神的な部分が原因・・!? まあそれは分かりませんが、前半25分を過ぎたあたりから、彼の「実効レベル」が地に落ちてしまったことだけは事実ですからネ。彼の交代は遅すぎた!? 何といっても、後方での「ボールホルダーへのチェック」が甘くなったことが、エスパルス攻撃の「危険度を上げた」ことの大きな要因でしたから・・。
まあ、もう少し観察することにしましょう。
さて湯浅は、これから、テレビ埼玉の「レッズナビ(25時スタート!)」に出演するために移動します(この原稿は駒場スタジアムの記者室で仕上げました・・乱筆、乱文、失礼!)。ではまた・・