湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第2節(2001年8月18日、土曜日)

降格の危機にあえぐ「名門」・・その復活は!?・・柏レイソルvs横浜Fマリノス(0-1)、東京ヴェルディーvs浦和レッズ(2-1)

レビュー

 さて、セカンドステージ第二節。ここでは、降格の危機にある名門、マリノスとヴェルディーが、どのような「再生プロセスの兆し」を感じさせているか検証しようと思います。

 まずマリノスから・・

 彼らの場合は、何といっても、ラザロニ新監督が連れてきた二人のブラジル人ディフェンダー、ナザ(左ストッパー)とドゥトラ(サントスなどで活躍した左サイドバック)が、チーム全体のパフォーマンスアップに、もの凄く貢献しているということを強調しなければ・・。ラザロニ監督は、まず、守備意識と「ダイナミズム」を高揚させる「作業」に取り組んだと聞いていたのですが、そのコンセプト通りの首尾一貫した「補強」ではあります。さすがに百戦錬磨のプロコーチ(フラメンゴ、バスコ・ダ・ガマ、ブラジル代表監督、フィオレンティーナ監督、ジャマイカ代表監督など、)。

 とにかく、この二人が入ったことによって、マリノスの、中盤から最終ラインにかけての守備ブロックが格段に「安定」したことだけは明確な事実。やはり、サッカーにおけるすべての基盤は「守備」だということです。

 守備的ハーフの二人ですが、この試合では上野が、(ダイナミズムに欠けるとはいいながら)大事な「バランサー」役をクレバーにこなしながら、攻撃でも、中盤の底から、広い「ボールの動き」を演出します。そして彼のパートナーである遠藤が、基本的な仕事である中盤守備をしっかりとこなしながら、チャンスを見計らって攻撃の最終シーンに絡んでいく・・。まだまだ「ダイナミズム・レベル」は低いものの、守備を安定させなければならない「最初のステップ」における重要なタスクの担い手としては、まあまあの出来だったとすることができそうです。

 最終ラインですが、例によっての堅実な守備をみせる松田と小村のコンビに、ディフェンス能力に抜群の力強さをみせるナザが加わったことで、最後の砦が、往年の堅実さを取り戻しつつあると感じます(アイツのところで『止まる!』という互いの信頼関係!)。それに、攻守にわたって安定したパフォーマンスをみせる両サイドバック、波戸とドゥトラが効果的に絡んでくるというわけです。

 というわけで、たしかにマリノスの守備は再生しつつあります。でも攻撃では、まだまだ課題が山積・・

 中村俊輔は、たしかに決勝ゴールを「美しく」演出しました。とはいっても、全体的な出来は低調の極み。フォーム(物理的・心理精神的な調子のこと!)の悪さを感じさせます。運動量が少ないことで、ボールに触る回数が極端に少ない・・、ボールをキープするにしても、次の決定的な展開を意識したクリエイティブなもの(リスクチャレンジのタメなど!)ではなく、相手のディフェンスアタックを「しのぐ」のが精一杯・・といった具合なんですよ。もちろん一つひとつのアクションには「才能の輝き」を感じます。でもそれが、チームにとっての「実効」を生み出していないということです。

 また最前線の「城」の出来も最悪。新人の坂田が魅せたパフォーマンスの方が目立ってしまって・・。城は、ボールのないところでの動きの「量と質」がストライカーのクオリティーを決定するという「メカニズム」を再認識する必要があります。それに対して坂田は、たしかに「最終勝負の危険度」にはまだまだ課題はあるものの、そこへ至るまでのプロセスにおける積極的な姿勢は(組み立て段階の組織プレーのなかでも、常に最終的な個人勝負シチュエーションを意識している!)高い評価に値します。そんな「バランスのとれた積極性」が、決勝ゴールとなって結実したのです。その瞬間に魅せた、「中村の才能に対する確信」をベースにした決定的フリーランニングの鋭かったこと。マークしていたレイソルの渡辺は、彼の「消える動き」にノーチャンスでした。

 まあ、攻撃に課題は多いものの、マリノスの再生プロセスに「ポジティブな傾向」が見えていることだけは確かな事実でした。結果だけではなく、内容的にも、強豪のレイソルを上回ったマリノス。この「実質的内容」ならば、勝ち続けることで「本物の自信」が蘇ってくることでしょう。いくら勝ち続けたって、「内容」が伴わなければ決して「本物」になりっこない・・。要は、選手たちの「自信の再生」にとっては、「数字的な結果」ではなく、自分たちが体感する「内容」のみが「実のある心理ソース」だということです。

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 さてヴェルディーですが、何とコメントして良いやら・・。とにかく、小野が抜け、トゥットも欠いているにもかかわらずの「レッズの活き活きとしたサッカー」が目立ちに目立ってしまって・・

 ヴェルディーは、レッズが魅せつづけたシンプルでダイナミックな攻撃に、最後までタジタジ。ヴェルディーの突撃隊長、桜井の「ここ一番の勝負」がなければ(前半の先制ゴール生み出したドリブルからのロングシュート、そして後半にPKを取ったドリブル勝負)どうなっていたことか・・。たしかにダイナミックにはなっているけれど、どうしても「一本調子」で変化に乏しいレッズの攻撃に助けられた!?

 ヴェルディーにも、新助っ人が加入しました。最終ラインのエメルソンと、最前線のマルキーニョス。たしかに「戦力」にはなっていますが、それでも「比較的」といったレベル。格段の戦力アップというわけではありません。

 また中盤で、少し上がり気味のポジションに入った林も、例によっての「ダラダラプレー」のオンパレード。私は、彼が「全力ダッシュ」をしたシーンを、ほとんど見ていないのですが・・(現代サッカーでは、15キロくらいにはなる中盤選手たちの運動量のうち、25-30%はフルスプリント!)。特に、全力でいけば追いつけるような守備での決定的シーンでも、何か「そこへ行くことだけは、状況的に義務だから・・」という「ぬるま湯マインド」を感じてしまって・・。いや、フラストレーションがたまりますネ・・彼のプレーには。もちろん「才能」があるからなおさらなんでがネ(ボールプレーヤーの覚醒に、監督の本物の手腕が見えてくる!)。彼は、たしかにボールをもったときのイマジネーションには才能を感じるものの(PKだけは確実に決めました)、チームにとっての実効ある「総合的な仕事レベル」という視点では、確実に落第です。

 それ以外では、最終守備ライン(この試合では、西田、中澤、エメルソン、菊池のフォーバック)、守備的ハーフの北沢、山田、また前出の桜井などは(特に守備において)集中したプレーを展開してはいましたが・・

 マリノスとは違い、(危機感が高まりつづけていることで!?)戦うマインド「だけ」は活性化する傾向を見せているものの、全体としては、まだまだ「本格的な再生の兆し」とまでは言えないヴェルディー。これからも厳しい戦いがつづきそうです。



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