湯浅健二の「J」ワンポイント


2001年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


第5節(2001年9月15日、土曜日)

苦しみながらも貴重な勝利を掴んだヴェルディー・・マリノスvsヴェルディー(1-2)

レビュー

 どのようにレポートしたらいいんだろう・・。まずそんなことを思い悩んでしまいました。

 両チームともに「動きのない」低調サッカー(まあ、立ち上がりは慎重に・・ってなゲームプランだったんでしょうが・・)。とにかく「足許パス」ばかりで、スペースを使おうという意志が感じられません(スペースへ入り込む者がいない・・また、いたとしても、そこへパスを出そうというリスクチャレンジマインドが希薄!)。

 もちろん「攻撃の最終段階」では、急激なテンポアップや決定的フリーランニングはありますが、それでも組み立て段階における「ボールの動き」が停滞しているから、両チームの守備ブロックが「余裕」をもって守れるのも道理・・ってな具合なんですよ。ファウンデーション(組み立て)におけるボールの動きで、いかに相手守備ブロックの「バランス」を偏らせることができるか・・というところに「最終勝負における可能性」が大きく左右されるのに・・。まさに、ワクワク感がまったく沸いてこないサッカー。

 まあ、「後がない」ヴェルディーと、前節でエスパルスに大敗し、絶対に連敗は避けたいマリノスですから、「攻撃でのリスクチャレンジ」に慎重になるのも分からないではありませんがネ。

 それでも、前半20分過ぎあたりからは、ちょっと「動き」が出はじめてきます。マリノスの甘い中盤守備に乗じた、ヴェルディーのチャンスメイク。マリノスの巻き返し(マリノスの攻めにおけるダイナミズムは、後方のゲームメーカー、上野良治のアクティビティーに比例する!?)。でも試合自体の「ダイナミズムレベル」は、まだまだ平均以下。「本当にこのままのペースで最後までいってしまうんだろうか・・」なんていう心配が、冒頭の「思い悩み」になってしまったという次第。ただ・・

 そうです。ヴェルディーが先制ゴールを奪ったのです。前半35分のことでした。

 右サイドを、ボールをつなぎながら(まだ足許パスがメインですが・・)攻め上がるヴェルディー。マリノスの守備ブロックが引きつけられます。そして最後は、小林から西田へパスが回り(この時点で、マリノス守備ブロックの視線と意識は完全に右サイドへ集中してしまって・・)、そこからズバッと、逆の左サイドでまったくフリーになっていた前園へ「ラスト・サイドチェンジパス」が通されます。冷静に、「突っ込んでくる」川口の身体の「下側」を通してシュートを決める前園。相手の「意識のウラ」を突いた、絵に描いたような美しいゴールではありました。

 でもこのプレーで、前園が、川口と衝突したことでリタイアしてしまいます(代わって小林大悟が入ります)。ただゲームは、この刺激(もちろんゴールのことですよ!)によって「やっと」活発に動きはじめます。

 テンポアップするマリノス・・。それでも、チャンスメイカーである中村のプレー内容だけは「アップ」せず・・。そこが「ボトルネック」となって、マリノスの前への勢いが、効果的な「最終勝負シーン」を演出するまでに至らない・・。目立つのは、左サイドで攻守にわたってダイナミズムを演出しつづけるドゥトーラ、そして最前線のブリットくらい・・。中村、城がうまく機能しない・・、また守備的ハーフコンビの遠藤、上野にも、押し上げのエネルギーを感じない・・。

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 そして後半、ケガをしてしまった中澤に代わり登場した菊池利三が、これまた西田のセンタリングをキッカケに、「ドカン!」と見事な中距離シュートを決めます。これで「2-0」。後半がはじまって2分と経っていないタイミングでした。

 それまで、リードされているにもかかわらずペースを「上げ切る」ことができなかったマリノスですが、もうこうなったら「失うモノ」は何もありません。やっと、本当にやっと、「オレが行ったる!」というリスクチャレンジの姿勢が見えはじめます。そして、ガンガン押し込みつづけることで「追いかけゴール」までも奪い取ってしまいます。

 後半13分。左サイドのドゥトーラのセンタリングを、まず城がヘディングシュートし、それがバーに当たって跳ねかえってくるところを、ブリットが左足一閃! いや、素晴らしい「仕掛けの流れ」ではありました。

 やれば出来るんじゃネ〜〜か! それまでのマリノスのサッカーに、素早いボールの動きや、タテのポジションチェンジ等という「クリエイティブな攻撃エッセンス」は、まったくといっていいほど見られませんでしたから、思わず・・。

 そしてそのゴールをキッカケに、当然の成り行きとして、マリノスの「リスクチャレンジ・パワー」が何倍にも増幅していきます。

 上野が、遠藤が、はたまた右サイドバックの田中隼磨や、最終ラインの松田までが、どんどんと最前線に顔を出すようになります。もちろん、ヴェルディーにカウンターを仕掛けられるというリスクはあるわけですが、それでも、選手たちの「マインド」が活性化されていれば、心理的にキツい「攻撃から守備への切り替え」も、よりアクティブでスムーズになるもの。マリノスは、時折ヴェルディーが仕掛けるカウンターにも、何とか持ちこたえます(そこでの、ナザのクレバーでダイナミックな守備プレーに感嘆!)。

 そして、城が、松田が、はたまた田中隼磨が、「これぞ決定機!」というシュートチャンスを得ます。城が、ブリットからの「これ以上ない」というラスト横パスをダイレクトシュート! 松田が、パスプレーから抜け出しての決定的シュート! そして田中が、自らのドリブル突破から、完璧に抜け出しての決定的シュート! またゲーム終了間際には、坂田大輔が抜け出して送り込んだセンタリングが、僅かにブリットに合わず・・という決定的チャンスもありました。でも結局、それら全てのチャンスを棒に振ってしまって・・。まあ、この敗北(連敗!)は自業自得・・っちゅうことです。

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 リーグ残留に向けて厳しい状況に落ち込んでしまったヴェルディー。苦しみながらも、貴重な勝利を手中に収めました。

 彼らのサッカーは、「有機的なプレー連鎖」という視点では、まだ決して良いものではありません。攻守にわたる「ボールのないところでのプレー」に、まだ十分な活力がみられないのです。それでも、(前節のジュビロ戦における『内容』も含めて!)選手一人ひとりのプレー姿勢に、「斜に構えた」ところが薄れてきているなど(とにかく何とかしようとする意志が前面に出てきている!)、改善の「兆し」はありそうな・・。

 その背景に、「林健太郎を外す」などに代表される、小見監督の「心理オペレーション」、また選手たちの「危機感(J2には落ちたくない!)」があることは確かなことです。これでケガ人が戻ってさえくれば・・(特に、三浦淳宏と石塚のケガは痛い!)、なんていう期待が高まる湯浅でした。



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