湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第1節(2002年3月3日)

沈滞ゲームは、ホームのマリノスに軍配!・・横浜Fマリノスvs浦和レッズ(1-0)

レビュー

 フ〜〜ッ。一人多いレッズが攻めきれず、結局マリノスが、前半に挙げた、セットプレーからのウィルのヘディングゴールを守り切って勝ち点「3」を勝ち取りました。

 松田の二枚目イエローによる退場(前半42分)の後でも、レッズは、本当にフラストレーションが喉元までせり上がってくるような沈滞サッカーしか展開できません。ただ、その鈍重ペースの元凶だったアリソンが田中と交代してから、やっと攻撃に「流れ」が見えはじめます。要は、「二列目からの一発スルーパス」しかアタマになく、いつも止まってパスを待つアリソンのせいで、最終勝負の「起点ポジション」としてもの凄く大事な二列目の中央ゾーンが、いつも意義なく埋まってしまっていたということです。

 それでは、後方からの押し上げがままならないのも道理。また、後方からの押し上げにとって欠かせない「ツール」であるワンツーにしても、「壁」になるべきアリソンの「寄り」がほとんどないから、うまくイメージできない・・、そして結局、遅れ気味のリズムで外へ開くから、マリノス守備に潰されてしまう・・。後半では、「フリー」のアリソンを無視するような展開ばかりが目立ってしまって・・。チームメイトにしても、彼のプレー姿勢に納得していなかったことを如実に証明する現象だと思っていた湯浅でした。

 レッズでは、阿部敏之の不在が目立ちに目立っていました。彼が守備的ハーフに入れば、そこからの素早く、大きな展開も期待できるだろうし、チームメイトたちを心理的にドライブしただろうに・・。

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 この試合でのレッズは、「マンマーク」を主眼にゲームに臨んでいました。もちろん展開のなかでの「マーク受けわたし」はありますが、基本的には、(早い段階で)決まった相手を、相手攻撃が一段落するまで忠実にマークしつづけるというわけです。

 そのことで、必然的に空いてしまう中盤スペースですが、あれだけ忠実にマーキングしていれば、そのスペースを「フリー」で使える相手も出てこない・・というわけです。ハンス・オフトの「チーム作りの最初のステップ」は、守備に関しては、まあまあうまく機能していたとすることができそうです。それでも、あまりにも攻撃が犠牲になっていた・・。エメルソンへの一発タテパスや(もちろん、イメージがシンクロしているアリソンから!)、福田をオトリに使ったエメルソンのドリブル突破などを狙っていたんでしょうが、攻め手がそれだけでは・・。

 私が最も期待する若き才能、鈴木啓太にしても、どうしても「次の守備」をイメージし過ぎてしまうようで、前へのエネルギーを爆発させられるまで行きません。また「前のゾーン」は、動かないアリソンが常に埋めていますから、押し上げるすき間がないだけではなく、コンビネーションパスで上がっていこうにも、そのパートナーになるべきアリソンが、「オレはフリーなんだから、オレの足許にパスを出せよ!」と、止まってパスを待っているだけですからネ。

 どうしてもアリソンの緩慢プレーが気になってしまって・・。もう何度も書いているとおり、彼は、攻守にわたり、それなりの才能に恵まれています。前線のエメルソンにしても、彼のパス能力に対する信頼があるからこそ、アリソンがボールを持った瞬間に(いや、持つ以前のタイミングで!)爆発アクションをスタートするんですよ。そしてそこへアリソンからのタテパスが・・(二本くらいでしたかネ、エメルソンへの勝負パスが通ったシーンは・・)。でも「全体的な貢献度」では、完全に不合格。逆に、明らかにチームのブレーキになっていた・・。

 特に、数的に優位な状況になった後の緩慢プレーには、怒りさえ感じていました。ボール際では才能を発揮する。だからこそ、攻守にわたって、もっともっとボールに絡んでいかなければならないのに・・。

 アリソンについて書きながら、本当に「イヤな思い」をしています。私は、良いプレーを称賛するというのが基本的な姿勢です(その方が健康的!)。サッカーが好きで、好きで仕方ないから、「結果としてのミス」を理不尽に責めたりするような愚は絶対に犯さないつもりです。不確実要素が満載のサッカーでは、最後には自由にプレーせざるを得ない・・、だからこそ、自分主体の闘う(積極的な)プレー姿勢に対する「前向き」な敬意が、サッカーをより振興し、レベルをアップさせると確信しているのです。

 だからこそ逆に、「できる」のに、「やらない」選手に対する憤りが倍加されてしまう・・。

 昨年アリソンがレッズに加入してきた当時に感じていたこと。それは・・、基本的な能力には秀でたものがある・・、また攻守にわたるプレー姿勢にも積極性が見える・・、ボールを持ってからも、ドリブル突破にトライしたり、タメを演出したりなど、積極的にリスクにチャレンジする姿勢が見える・・、でもまだまだ出来るはず・・、これから彼は、自らの努力で、チームメイトたちに認められ、チーム内での確固たるポジションを築いていかなければならない・・。それが、昨シーズンの、特に残留が決まった後の彼のプレー姿勢を見ていて、「これは、ダメかもしれない・・」なんて思いはじめてしまったんですよ。

 そして今日のマリノス戦。誰もが、彼がグラウンドから出た後のレッズの「勢い」が数段アップしたと感じたはずです。もちろんそれには、中盤へ下がった福田の、攻守にわたる積極プレー、交代出場した田中達也の、例によっての飽くなきチャレンジ、そして鈴木啓太や両サイドバックの押し上げなどが大きく貢献していたことは言うまでもありませんが、そのような吹っ切れたダイナミズムが出てきたのも、中盤の「邪魔者」が消えたから!?

 このような現象は、どこかで見たような・・。「あの」、アド・・。

 とにかく私は、今でも、アリソンを伸ばすことが、レッズの発展にとって重要案件だと思っています。なんといってもレッズは、二列目の、自由なクリエイティブプレーヤー(チャンスメーカー)を必要としていますからね。だからこそコーチングスタッフは、ビデオを使ったりして、彼と、とことん話し合うべきだと思うのです。それとも・・

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 マリノスですが、彼らにしても、レッズの忠実ディフェンスを崩すところまで、どうしてもいけない。二度くらいでしたかネ、個人のボールコントロールや、素早いコンビネーションで、レッズの守備ブロックを崩しかけたのは。忠実なマンマークですから、一人でもマークを外され、置き去りにされたら、即、大ピンチにつながってしまうというわけです。何せ、レッズ最後尾のフリーマンは、「一対一」に不安を抱える井原なんですから・・。

 とはいっても、組織的に崩すようなシーンを演出するところまでいけない。まだまだ、ボールの動きが緩慢だということです。中村俊輔も、中盤では、もう少しシンプルにボールを動かすようにリードしなければ・・なんて思っていました。レッズが、タイトなマンマークへ移行するタイミングが早い「タイプ」の守備を展開しているからこそ、ボールがないところでの活発な動きをベースに、よりシンプルにボールを動かすべきなんですよ。

 私は、この試合では、奥がどのようなプレーをするのかを見たかったのですが、結局は出ず仕舞い。情報が不足しているため、「何故」については知りません(ケガなんでしょうネ・・なんて書いたら、早速、情報が寄せられました・・それによると「昨年の天皇杯での退場処分が継続されていて、今日は出場停止」とのこと・・ご協力感謝いたします)。奥と中村のコンビが、素晴らしい「機能性」をみせるのか、それとも・・。注目! じゃありませんか。

 ドゥトラがいなかったとはいえ、マリノスの守備は安定していましたよ。中村俊輔にしても、クリエイティブな積極ディフェンスを展開していましたしね(特に10人になった後)。でも、「あんな」レッズの停滞攻撃だったら・・とは思いますがネ。とにかくマリノスの守備は、松田が退場になってからも、ナザ、中澤、波戸、三上で組んだ堅牢な最終ラインだけではなく、中盤選手たちの献身的なプレーによって、安定感に大きな崩れはありませんでした。この試合は、日産のカルロス・ゴーン氏が観戦しているということで、とにかく勝利を・・というゲーム戦術だったのでしょう。

 強力なストライカー、ウィル、中盤ダイナミズムを確実にアップさせるに違いないチームプレーヤー、久永と清水、日本代表候補の中澤と奥、出戻りの安永聡太郎(交代出場した彼のプレーは良かったですよ!)等の新戦力を獲得したマリノス。彼らの今後に期待しましょう。



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