湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第5節(2002年4月6日、土曜日)

パープルサンガの爽快なサッカー、そしてヴェルディーの不快なサッカー・・パープルサンガ対ヴェルディー(5-1)

レビュー

 「J」レポートについては、本当にご無沙汰してしまって。前節は、私のHPのトピックスレポートにも書いたとおり、まだ外国にいたもので・・。

 さて第5節。所用でスタジアム観戦がかなわず、出先のテレビでパープルサンガ対ヴェルディーの試合を観戦することにしました。ということで、インプレッションだけをまとめることにします。同時進行の他チャンネルではヴィッセル対ジュビロも行われています。この試合は、名波の復帰が大きな注目を集めています。でも私は、連敗同士の対戦となったこの試合の方に、より大きな興味があったのです。

 いったい彼らは、どんな「意識」でサッカーをやっているのだろうか・・。戦術的な状態は・・? 心理的なフォームは・・??

 そして、試合を見はじめてすぐに「あ〜ららっ」なんていうため息が出てしまって・・。ヴェルディー選手たちのプレーに、まったくといっていいほど「緊張感」が感じられないんですよ。緊張感!? それは、自分から仕事を探すという意味でのディフェンスや、攻撃では、ボールを動かす意識レベル、ボールがないところでの動きなどに如実に現れてきます。私は、まずその姿勢をしっかりと観察するようにしているんです。

 対して、ドイツ人監督、ゲルト・エンゲルスに率いられる京都パープルサンガ。試合前の彼の「日本語」でのインタビュー。大したものだ。ポジティブなパーソナリティーを感じます。彼とは、以前はよく話したものですが(もちろんドイツ語で・・私と同じライセンスをもっている仲間としてネ)、近頃は、ちょっと「遠く」なっていました。だから、テレビに向かって、思わず「おい、ゲルト。ガンバレよ!」なんて声が出たりして。

 そして、試合がはじまってすぐに、「ゲルトは、本当にいい仕事をしているようだな・・」と確信していました。パープル選手たちのプレー姿勢の積極的なこと。守備においても、攻撃においても。選手たちのプレー姿勢は、「監督を映す鏡」ですからネ。

 試合前のインタビューで、「チャンスは作っているんだけれど・・、とにかくそれを、しっかりと決めなければ・・。それと、やはり攻守の切り換えで、J-1との差を感じるよネ・・」なんて言っていましたが。少なくとも攻守の切り換えだけは、意識の改善がすすんだようで、抜群でしたよ。特に、ボールを奪い返されてからの中盤ディフェンス。ボールプレーヤーに対するチェック、「次」の周りの選手たちのポジショニングと、読みベースのアタック、またボールがないところでの「ムダ走り(マーク!)」等々、感動的でさえありました。「どうして、こんないいサッカーをやるチームが四連敗なんだ・・」、なんてネ。

 「選手タイプ」がうまくバランスした危険なストライカーコンビ、黒部、アンで構成するツートップだけではなく、パク、石丸、そして特に松井が演出するダイナミックな中盤(両サイドも良かったですがね!)。攻守にわたって、素晴らしくアクティブなサッカーを展開します。

 ひょうひょうとした二列目の「松井」ですが、守備でも攻撃でも、「行かなければ」ならないところでは、ほんとうに忠実にアクションに入ります。私は、「ここだ!」なんて、攻守にわたって「行かなければならない」ところをイメージしながら観戦しているわけですが、そのイメージが、本当に頻繁に松井のそれとシンクロしちゃうんです。心地よいことこの上ない。パスレシーブで相手を「いなし」たり、ラストパスを出すまでのプロセス、はたまたドリブル突破チャレンジなどで魅せるテクニックも素晴らしいし、シンプルパスに代表される「チームプレーの創造性」も十分。また、ココゾ!のシーンでは、忠実な「ボールがないところでのムダ走り(=決定的フリーランニング)」も魅せます(彼が挙げた二点目は、まさに正当な報酬!)。そして、クリエイティブで忠実なディフェンス。ちょっと誉めすぎですかネ・・。とにかく、「自由にプレーしてよいポジション」を、本当に自由に、抜群の「実効」につなげていた彼に対する興味がわいてきた湯浅でした。

 この試合では、パープルサンガが「5-1」とヴェルディーに大勝をおさめたわけですが、まさに順当。パープル選手たち、そしてゲルトにとって、自分たち主体で「勝ち取った」、爽快な勝利でした。

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 さてヴェルディー。これは重傷ですよ。

 なんといっても、自分主体でアクティブにプレーするという「基本的な姿勢」に問題がありますからね。パスを足許ばかり、それも、こねくり回した後のタイミングなのですから・・。何をかいわんや。もちろんそれは、周りの動きが緩慢なことと、各ステーション(ボールホルダー=パスレシーバー)のプレーが「遅い」からです。

 守備でも、ボールに対するチェックが甘いから、周りの「読みディフェンス」がうまく機能せず、どうしても後手、後手の「守備での仕掛け」になってしまう。最終ラインのプレーにも、確信のポジショニングが感じられない(彼らの押し上げにも、自分主体の積極性が感じられない!)。そして、ボールがないところでの忠実マークにも、まだまだ問題山積・・。これでは・・。

 とにかくヴェルディー選手たちは、まず自分たちが置かれている「立場」を、しっかりと見つめ直す必要がありそうです。

 彼らは、サッカーのプロ。目的は、美しく、強い(魅力的・感動的な)サッカーをやることで(それを目指す姿勢を明確に示すことで!)人々の興味を喚起し(需要の創出!)、それをベースにして、日本における「サッカーの社会的なポジションアップ」に貢献することです(=結局それが、自分たちのポジションアップと収入アップにつながる!)。

 「おいしいところだけをつまみ食い」なんていう姿勢なのだったら、もうプロは辞めて、プレジャーサッカーへ行くべき・・なんてことまで思っていました。要は、彼らのサッカーが不快だったんですよ。何人かの選手たちのプレー姿勢には、明確に、「おいしいところだけ・・」という姿勢が明確に見えていましたからネ。もちろん中には、「何とかしなければ・・」と一生懸命にチャレンジしようとする姿勢の選手たちはいます。それでも、いかんせんサッカーが「本物のチームゲーム」であるために、そのポジティブな意志も、まったく機能せずに空回りするばかり。仕方のないことですが、だからこそ湯浅は、そんな、プロの世界では「ガン細胞」とまでいえる、「斜に構えた」輩に対する怒りがこみ上げてくるんです。

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 明日は、レッズ対サンフレッチェを観戦予定。「内容的」には調子が上がっていると言われるレッズ。また、サンフレッチェの「久保」。興味は尽きません。ではまた明日。



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