湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第6節(2002年4月13日、14日)

今回は、三試合をショートレポート・・ヴェルディー対ヴィッセル(1-1)、ジュビロ対アントラーズ(2-0)、ベガルタ対レッズ(1-2)

レビュー

 土曜日のことですが、どうも朝から体調がすぐれず、静岡まで行こうと思ってたのを、急遽、調布でのゲーム観戦に切り替えました。ヴェルディー対ヴィッセル。小見監督が休養し、坂田社長も退任したわけですが、その「刺激」が、どのような影響を与えるのかというポイントにも興味がありましたからネ。

 そしてゲームを見終わり、帰宅した瞬間でしたかね、急に、全身に悪寒がはしってしまって。ほとんど風邪はひかないから、エッ!・・なんていう感覚です。そして熱を計ってみたら「39度」。いや、こうなっては思考もままならず、レポートが日曜日になってしまったというわけです。

 とにかく、葛根湯を「熱湯」で溶かして二度ほど飲み、厚着をしてベッドへ。そのまま日曜日の昼まで寝てしまいました。起きたら、ベッドが汗でグショグショ。まだアタマはフラフラしますが、まあ熱だけは下がったみたいです。それでも、この風邪は、腹にもくる・・。いや、まいりました。

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 ということで、まずヴェルディー対ヴィッセルの試合から。

 ヴェルディーのメンバーは大幅に入れ替わりました。若手の小林大と富沢が先発しただけではなく、新人の柳沢も途中から出場し、ものすごい自己主張をしていましたよ。

 また最終ラインも、米山を「中央」にするスリーバックへ。守備が不安定では、「復活」もできないということでしょう。それでも、ヴィッセルも本当に良いチーム。ヴェルディーの中盤から最終ラインにかけての守備ブロックが何度も振り回されてしまって・・。ヴィッセルの攻めには、中盤から前線へかけての「仕掛け」に、良いリズムの「変化」があります。その演出家は、何といってもダニエル。

 私は、この試合でのダニエルのパフォーマンスだったら、ヴェルディーの守備的ハーフ、山田が、ほとんど「マン・ツー・マン」になるくらいのタイトマークをしてもいいかな・・と感じていました。でも結局は、(ベンチの指示もないまま)「受けわたしマーク」でゲームが進行していきます。そして、そのダニエルに先制ゴールをたたき込まれてしまうのです。それは、それは素晴らしいフェイク動作でしたよ。ヴェルディーのディフェンダーを、二度、三度の切り返しで翻弄し、最後は、ドカン!と、ゴール左サイドにたたき込んでしまったのです。前半26分のことです。

 でもその後は、ヴェルディーも盛り返し、前半34分には、エジムンドからの目の覚めるようなスルーパスが、抜け出したマルキーニョスに通って同点! まさに「ブラジルのあうんの呼吸」といったマルキーニョスのスタートタイミングではありました。

 ヴェルディーの攻めは、どうしても、エジムンド、マルキーニョス頼り。二列目に入った長田と小林大の出来は、攻守にわたってまあまあではあったのですが、それでも、まだまだ自己主張が足りない・・。というか、エジムンドに遠慮しすぎているのが目に見えるんですよ。何度、彼ら自身が仕掛けていった方がチャンスになるという状況で、(その仕掛けの流れに遅れがちの)エジムンドに、死に体のパスが「戻された」ことか。

 でも、後半は、完全にヴェルディーペースになります。マルキーニョスが、エジムンドが、何度も決定的なチャンスを演出するのです。まあ、あれほどの才能だったら、周りは「汗かき」に徹した方が・・!? いやいや、そんなプレー姿勢では、結局は、チーム全体のパフォーマンスは奈落の底・・ですよね。とはいっても、「今のところ」は、攻撃の最終段階では、この二人のイメージに「周りが合わせる」方が正解でしょうがネ。

 それにしても、エジムンドとマルキーニョス。彼らが演出する「最終勝負のコンビネーション」は見応え十分でしたよ。ギリギリまで「タメ」て(スローテンポ)、急激なテンポアップ。ブラジルサッカーの真骨頂! そんな驚き満載の仕掛けだったら、カネを払って見る価値は十分にあります。

 ヴィッセルですが、中盤のアタリバ、前線のダニエルという外国人が交代してから、攻めを組み立てるのに苦労します。「なんだ、日本人だけじゃ何もできないのか・・」なんて思っていたんですが、延長に入ってからは、全員での守備、タテのポジションチェンジを駆使した攻撃など、完全にゲームを掌握する時間帯もありました。いや、よくトレーニングされたチームだな・・、これで、チーム内の「イメージ・シンクロ・レベル」が上がってくれば・・なんて思っていました。これからは、ヴィッセルにも注目することにしましょう。いや「面白いチーム」です。

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 さて次は、ジュビロ対アントラーズ。この試合でのポイントは、唯一、ミッドフィールド。

 「誰が攻めにいっても、一人か二人は、次の守備に備えて残っているという約束事がウチの中盤にはある・・」。服部選手が、試合後に、そうコメントしていたということですが、まさに、それです。それがあるからこそ、クリエイティブな「タテのポジションチェンジ」を頻繁にくり返しても、前後のバランスが崩れないんですよ。それを、選手たちのハイレベルな「戦術眼」なんて表現するわけです(高い守備意識なんていう言い方もできますかネ)。

 もちろん、その「中心」は名波。彼の「攻守にわたるハイパフォーマンス」は、感動的でさえありました。満を持していた名波・・ということでしょう。あれほどの才能を備えた選手が、守備でも「泥まみれ」になれる・・。素晴らしいじゃありませんか。それこそ、インテリジェンスの証明です。

 (特に中盤選手に)才能があればあるほど、まず守備意識を高めるように指導する・・。それはフットボールネーションでの常識です。現代サッカーでは、本当の意味で実効あるディフェンスができない、やらない、という選手は、いくら「ボール扱いがうまく」ても使いものにならないのです。

 名波のプレースタイルは、確実に未来を示唆するレベルにあります。日本サッカーは、中田英寿、名波浩という素晴らしい「イメージリーダー」に恵まれました。課題は、いかに効果的に、彼らが創造しつづけるイメージを、日本サッカーに、広く、深く普及させていくかということ。特に、若く、才能がある選手たちには、彼らのプレーをビデオなどを駆使して見せつづけましょう。かならず、最高の「イメージトレーニング素材」になるはずです。何といっても、同じ日本人ですからネ。

 とにかく、メンバーが戻ってきたジュビロは、日本サッカーのイメージリーダーとして、再び、目映いばかりの輝きを放ちはじめました。嬉しい限りです。でも、彼らに「リーグ独走」されることだけはノーサンキューなんですが・・。痛し痒し・・。

 ちょっと、まだアタマがフラつくので、この試合についてのコメントは、ここまでにします。ご容赦・・

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 最後に、ベガルタ対レッズ。

 勝負強さを魅せて二連勝したレッズ。良かったですよ。どんどんとチームのパフォーマンスが、ハイレベルで安定してきていると感じます。堅実な守備のチーム戦術をベースに、トゥット、エメルソンという才能を十二分に活かす攻撃。まあ、どんな戦術でも、それを徹底すれば、確実にチームパフォーマンスは上がっていくことの証明ということです。

 「チーム作り初期」でのプランに成果が見えはじめたレッズ。ハンス・オフトも満足していることでしょう。もちろん、より「高い目標」に近づいていくための「プロセス(初期段階)」としてネ。

 この試合では、ベガルタ攻撃のキーマン、岩本輝を、山田が完璧に抑え込んだことが、一つの大きな勝因だったと思います。それまでは、岩本からのアーリークロスを、最前線のマルコスがヘッドでつないだり、そのままヘディングシュートする・・というのが一つのパターンでしたからネ(周りの味方も、そのイメージをシェアしているから、カタチになりかけた瞬間に、ボールのないところでのアクションが始まる!)。もちろん岩本のセットプレーの危険度は、まだまだ大きかったのですが・・。

 はじまって15分もたったら、山田と一対一になった岩本は、完全に「蛇ににらまれた蛙」になっていましたよ。そして、「逃げの横パス」。だから、次、その次で確実にボールを奪取できる。また山田は、余裕をもって守備ができたこともあったのでしょうが、攻撃でも大きく貢献していました。岩本には、効果的な守備など期待できませんからネ。いや、素晴らしい。

 この試合では、またまたアリソンが目立っていました。前節で、何か「プレーイメージ的」に吹っ切れるものがあったのでしょう。もともとボールを奪い返すテクニックは、かなりのレベルにありましたし、それに、ボールホルダーへのチェックの素早さ、ボールのないところでのマークなどにも格段の「忠実さ」が見えてきたことで、その守備テクニックに抜群の実効が伴いはじめたということです。また攻撃でも、効果的なプレーを見せ続けていました。何といっても、全体的な運動量が増えたことと、「全力ダッシュ」の回数が格段に増えたことが、彼の「確信」を象徴していると思います。本当に「やっと」・・。

 もう一人、福田。これまでの彼は、中途半端なプレーに終始していました。彼にしてみれば「バランスプレーだよ・・」なんていうことになるんでしょうが、チームにとっての「実効」という視点では、マイナス要因以外の何ものでもありませんでした。それが、この試合では、攻守にわたって「深く入り込んだ」プレーを披露します。自軍深くまで戻った効果的な守備。そして、後方からの(二列目からの)、決定的スペースへのオーバーラップ(最前線のトゥットとエメルソンを追い越すフリーランニング)。彼自身も、「本当の」満足感を得たに違いありません。とはいっても、パス出しには難はありますが・・。

 ハンス・オフトは、我慢して、「ほぼ同じ構成のチーム」をここまでパフォーマンスアップさせてきました。とはいっても、よりクリエイティブな戦術への移行、世代交代など、「長い目で見た目標」を外してもらっては困りますが・・。とにかく、レッズの今後が楽しみになった一戦ではありました。

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 コメントする「コンテンツ・イメージ」はたくさんもっているのですが、どうもアタマが・・。頭のせいにばかりして、ゴメンナサイ。本日は、これからローマ対パルマの試合を観ます。もし発見があれば・・。では・・。



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