湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第7節(2002年4月20日、土曜日)

レッズファンのフラストレーションは良く分かります・・ヴェルディー対レッズ(2-1、Vゴール!)・・また、ジュビロ対マリノス(1-3)に関してもショートコメント

レビュー

 ちょっと、何かモヤモヤが晴れなかったので、とにかくまず「単車」に乗ってから・・と思い、公式記録をピックアップしてから、愛車にまたがって調布の東京スタジアムを後にしました。でも今日の甲州街道の上りは、ものすごい渋滞で、逆にフラストレーションが増幅されてしまって・・。

 この試合は、コメントするのにエネルギーが要る展開でした。レッズファンの方々が抱いているに違いないフラストーションも、手に取るように分かります。何といっても、ヴェルディーの「二倍」ものシュートを放ち、それも、何度も、何度も決定的なカタチを作り出しながらの逆転負けですからネ。

 とはいっても、全体的には、レッズが発展しつづけていることを明確に感じられたし、阿部敏之も復帰しましたから、冷静に考えればポジティブな要素も多かった試合でもあったんですよ。これに結果が付いてきていたら、本当に気持ちよくワールドカップを楽しめたのに・・。まあ、常に「ロジカルな結果」が付いてくるわけではないというのもサッカーだということです。

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 試合内容ですが、後半ロスタイムに、ヴェルディーが同点ゴールを決めるまでは、完全にレッズの流れでした。リードされているヴェルディーの攻撃からは、チャンスの芽さえ感じられません。例によって、ボールのこねくり回しからの「足許パス」ばかりという展開です(詰まった状態でのパスばかり!)。唯一、エジムンドがボールをもったら、何か起きそうな予感だけはしましたがネ・・。

 逆にレッズは、エメルソンが・・、交代した田中が・・と、リードした状況で決定的チャンスを作り出しつづけます。でも、決め切きれない。それでも、逆転されるような「雰囲気」は、まったくといっていいほど感じられなかったのに・・。

 同点ゴールの場面では、ヴェルディーの相馬が魅せた「最後の力を振り絞った」突破とセンタリングに拍手をしなければいけません。彼は、延長に入った早々のタイミングでも、エジムンドのタテパス(FK)に、これまたギリギリのタイミングで追いつき(よく諦めなかった!)決定的なセンタリングを上げましたしネ(最後は、ポストに当たるシュートを放たれてしまいました!)。あっと・・後半には、エジムンドのタテパスを受け、一人かわして決定的シュートも放ちましたったけネ。大したものです。

 決勝Vゴールが決まるまでは、レッズがペースを握っていました(前述の、エジムンドのタテパスから、相馬がセンタリングを上げたシーンの後ですよ!)。でも最後は、カウンター気味の攻めから、決勝ゴールを奪われてしまいます。右サイドを駆け上がった高木にパスが通り、そこからのパスを受けたヴェルディー選手がシュート。それが左ポストに当たって跳ね返ったところを、詰めていた永井に押し込まれたというわけです。

 まあ、こんな試合も、たまにはあるさ・・。

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 この試合では、「中盤の発電器(ジェネレーター)」という発想をテーマにしましょうか。

 ヴェルディーには、そのジェネレーターがいないんですよ。基本的に、後方からのエネルギッシュな押し上げが、発電の典型的なカタチなんですが、山田は、林に遠慮がち!? 逆に林は、はじめから、まったくといっていいほど、動きまわる意志なし。まあこれではネ・・。

 これには、それぞれの選手が、ボールを「こねくり回し」過ぎだという背景ファクターもあるわけですが、まあ、これまで数限りなく言いつづけたことですから・・。もう、疲れた・・。

 「ロリ」ヘッドコーチに代わった前節は、新顔を何人も使うなど、サッカーに「ダイナミズム」が出てきたと感じたものです。だからエジムンドも「楽しそう」にチームプレーに徹する場面が多かった!? でも、そんなポジティブな印象を与えたプレーが、今節では、またまた、例によっての「斜に構えたサッカー」に逆戻りしてしまって・・。いくつかの「ヴィールス」がいます。それがチームに蔓延しています。でも「抗体」がチーム内にできてくる気配は、まったくといっていいほど感じられない・・。

 まあヴェルディーについては、今後三ヶ月間におよぶ「ワールドカップ・ブレイク」での、ロリさんの手腕に期待するしかないですネ。

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 さてレッズの「ジェネレーター」について・・。

 私は、この試合でも、アリソンに期待していました。どんどんと動きまわり、常に「シンプルな展開の起点」になる・・、そして勝負所では、タメからのスルーパスやドリブルなど、しっかりとリスクにもチャレンジする・・、また守備でも、ボールホルダーへの「素早い寄せ」をベースに、常にクレバーなインターセプトや、彼独特の「ボール奪取テクニック」を存分に発揮する・・。過去二試合での彼の「ブレイク」については、既に書いたとおりです。だから自然と、期待が高まるっちゅうものじゃありませんか。でも・・。

 どうもアリソンのパフォーマンスは「高みで安定」しない。この試合でも、たしかに「局面」では、素晴らしい守備(基本的にはボール奪取の場面ばかり!)や、パス、ドリブル、フリーランニングも魅せました。でも、足りない。

 要は、「局面の数」が少ないということです。攻守にわたって「実効ある局面プレー」を、もっと、もっと増やす(運動量を増やす! 全力ダッシュの回数を増やす!)というのが彼の、深刻な課題なのです。そう、ベンチやファン、はたまた「ウルサイ評論家」が何も言えなくなるくらいにネ・・。

 さて、満を持して登場した阿部敏之。アリソンとの交代で、後半から登場しました。全体的な出来は、良かったと思います(またまた平坦な表現でスミマセン)。でも、トップフォームからは、ちょっと遠い・・というのが私の印象でした。でも、攻守にわたる「前向きプレーに対する強固な意志」は明確に感じましたから、これはもう「試合勘」を積んでいけばいい。ちょっと分かりにくい表現ですが、実戦は、何ものにも代え難い「トレーニングの場」だということです。まあ彼のことだから、数試合でもこなせば、確実に、以前の「フォーム」に戻してくるに違いありません。

 エメルソンや鈴木啓太という「期待通りの活躍をする選手」に対するコメントが少ない・・というクレームが来るんですが、まあご容赦アレ。それにしてもエメルソン。凄いですネ、彼は。確実にヨーロッパの一流ネーションでも通用します・・というか、確実に「外国人として期待される活躍」を魅せられますよネ・・。まあ「事実」ですから・・。

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 守備についても、たしかに「マン・オリエンテッド」ではありますが、それも、徐々に「発展」していると感じます。「マン」の長所は、最後の勝負場面に近づいた状況での「忠実マーク」が外れないということ。だから「周り」も、協力プレスやインターセプトチャレンジなど、効果的にサポートアクションに入れるのです。でも、それ「以外」の、例えば相手の組み立て段階などでは、より余裕をもって「マークのうけわたし」をするようになっているということを感じた湯浅でした。

 この、ハンス・オフトによる「ディフェンスの発展プロセス」は、非常にうまく機能しているということです。だからこそ、攻撃にもポジティブな影響がある! 今後の彼らの「発展プロセス」に対する興味が、天井知らずで高まっていきます。

 さてレッズに、本物の「競争」が根付く雰囲気が感じられるようになってきました。そこには、阿部敏之ばかりではなく、石井もいますし、その他にも、モティベートされた選手たちが虎視眈々と・・。いいじゃありませんか。

 それにしても、この試合では、「結果」が・・。まだ、フラストレーションから解放されていない湯浅でした。

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 ビデオで観たジュビロ対マリノスですが、このゲームポイントは、一言。それは、「マリノスの守備ブロックが素晴らしい機能性を魅せ、それが最後の最後まで減退せず、ハイレベルで安定していた・・」というものです。

 マリノスは、ジュビロが演出する「素早く、広いボールの動き」を明確にイメージしたクレバーで忠実なディフェンスを展開していたということです。だから、ジュビロのボールの動きに「振り回される」シーンがほとんどなかった・・。

 いつもだった、素早いコンビネーションでどんどんとフリーになってしまう(最終勝負の起点を作り出してしまう)ジュビロ。でもこの試合では、いつものイメージ通りにコトが運ばない。選手たちは、「アレ・・!?」なんていう感じだったに違いありません。

 その中心にいたのが「奥」。前にも書きましたが、彼は「マリノス」という新天地で、イメージまでも新鮮によみがえらせているようです。攻守にわたって魅せる自分主体プレーの「コンテンツ」は、本当に良くなっています。また中村俊輔も、日本代表とは見違えるほどの積極プレーを展開します。攻撃だけではなく、守備においても・・。

 でもメンバーを「再認識」したら、彼らのパフォーマンスアップも、ナルホドと頷けますよネ。スリーバックの中央に「松田」。両側は、中澤とナザ。両サイドは「波戸」とドゥトラ。守備的ハーフに上野と奥。二列目に中村俊輔。そして、「あの」ウィルと、ジュビロから移籍した清水範久。フムフム・・

 ジュビロの出来は、悪くはありませんでしたよ。例によっての、攻守にわたるダイナミックサッカーを展開していましたし、キッチリとチャンスも作りつづけていました。それでも、中盤から最終ラインにかけてのマリノスの「忠実&クリエイティブ」な守備が、この試合では、殊の外うまく機能していた(集中がまったく切れなかった!)ということです。

 これでマリノスがリーグのトップに躍り出ました。これまでの彼らのパフォーマンスを考えれば、「勝ち取ったトップ」といえます。さてこれで、ワールドカップ後の「J」も楽しみになってきたではありませんか。

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 明日は、「久保竜彦」を中心に、サンフレッチェの試合をテレビ観戦する予定。発見があったらレポートしますし、彼については「週間プレーボーイの連載」でも採り上げる予定です。では・・



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