湯浅健二の「J」ワンポイント


2002年J-リーグ・セカンドトステージの各ラウンドレビュー


第14節(2002年11月24日、日曜日)

最後は、全体的な評価としては「順当」な結果に落ち着きました・・(FC東京対浦和レッズ=1-0、延長Vゴール!)

レビュー

 グシャッ! グシャッ! グシャッ!

 そんなニブい音が聞こえてきそうな中盤での激しいぶつかり合い。両チームともに、中盤での忠実で激しいディフェンスを前面に押し出していることで、仕掛けの起点(中盤の高い位置でフリーでボールを持つ選手)を演出することがままならない・・、だから、基本的にチャンスは、カウンター状況でしか作り出すことができない・・、そして、またまたグシャッ!。フムフム・・。

 それでも攻撃では、明らかにFC東京の方が危険度は高い。まあそれは、FC東京の守備のチーム戦術が、より「解放」へ振れているからでしょう。互いのポジショニングバランスをとり、相手マークを受けわたしながらレッズの攻撃を(パス出しポイントを)抑制し、次の勝負所でボールを奪い返す。そして、その状況でチャンスがある者は、例外なく誰でも、攻撃の最終シーンへ絡んでいく・・。そんな「解放された発想」が、結果として、両チームの攻守コンテンツの「差」になって現れているということです。

 この試合でのレッズは、やはり基本的な守備イメージは、限りなくオールコートの「マンマーク」。だから守備に入った選手たちは、「まず」自分がマークすべき相手を捜す・・。それに対してFC東京は、まず互いのポジショニングバランスを取ることをイメージし、臨機応変に守備での勝負を仕掛けていくというわけです。だから次の攻撃でも、より大きな「変化」を演出することができる・・。

 レッズの攻撃は、例によって「前後分断」(攻撃の最終シーンに絡んでくるメンツが常に同じ!・・もっと言えば、行けるのに止まってしまうという姿勢が明確に見える!)。対する東京は、両サイドの馬場&藤山、石川&加地がタテのポジションチェンジを繰り返したり、守備的ハーフの宮沢が、クリエイティブなボール奪取から、最前線まで飛び出していったりするのです。まあ、両チームともに、しっかり守り、素早く直線的な攻撃を仕掛けていくという基本的な発想に変わりはないにしても、攻守にわたって、東京の方が、(組み立ての発想には難があるとはいうものの)明らかによりモダンな発想で、より「解放されたマインド」のサッカーを展開しているということです。

 いつも書いている通り、たしかにレッズ選手たちの守備意識は高揚しました。誰もが、ボールを奪い返されたらすぐに守備に入ってしっかりと「人を見る」という意識を強く持っているのです。それでも、守備の目的は「相手からボールを奪い返す」ことですからね。何が起こるか分からないサッカーですから、そんな、守備での「究極の目的に対する意識」を高めることこそ重要。レッズの守備意識では、マークする相手を捜すことと(その相手選手に仕事をさせないことと)、ボールを奪い返すことが「同格」に位置づけられているように感じられてなりません。

 私が言いたいのは、(これまた)いつも書いている通り、ここまで高まった守備意識を、今度は、よりクリエイティブな方向へ振ることが大事だということです。もちろん相手トップに対するオールコートマンマークはいいですよ。東京でも、エメルソンには、茂庭がピタリと付いていますしネ(それでも、ケースによっては、ジャーンとマークを受けわたす!)。でも、オールコートマンマークは、それくらいでいいじゃありませんか。後は、マークを臨機応変に受けわたす・・。そんな意識が徹底されれれば、今のように、相手にマークを外されるような危急状況でも慌てずに対処できるだろうし、攻撃にも勢いが出てくるものです。

 とにかく前半では、決定的チャンスを作り出したのがFC東京ばかりだったというのは明らかな事実でした。

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 後半も同じような展開。それでも、レッズのマンマークが、東京のカウンターがあまりにも素早いということで、臨機応変に対処せざるを得なくなります。そして、そんなゲームの流れの変化に応じて、攻守にわたるレッズのプレーも好転しはじめます・・。ケガの光明?! まあ、試合の展開によって、コンテンツが変化していくのは当たり前ですし、そこで選手たちの自分主体の応用力が問われるれというわけです。その意味では、試合の流れが、レッズ選手たちのマインドを「解放した」と言えるかも・・。

 とにかく、時間が進むにつれて(また東京のアマラオがケガで退場したこともあって)、全体的な流れが、徐々に互角になっていったと感じます。それでも、決定的チャンスという視点では、まだまだ東京に軍配が上がる・・。

 それにしても東京のサッカーは小気味いい。石川が、ケリーが、宮沢が、はたまた交代した鈴木が、忠実なディフェンスをベースに、どんどんと吹っ切れた仕掛けを展開していきます。ドリブルあり、タメからの一発タテパスあり、最前線を追い越す決定的フリーランニングあり。たしかに直線的(まあ、それが彼らのチーム戦術だから仕方ない)。それでも、タテのポジションチェンジも活発だから、マンマークばかりに意識を取られるレッズの守備ブロックを崩しかける場面が続出するのです。とはいっても、あれだけ決定的チャンスを作りながら決められないのでは、逆に「レッズのツボ」にやられてしまうぞ・・なんてことも思っていた湯浅だったのですが、結局は、フリーキックからのこぼれ球を、やっとの思いで福田健二が決めて、FC東京がゲームに決着をつけました。このシーンでは、交代出場した福田健二の忠実な詰めが印象的でした。全体的な内容からすれば、順当といえる東京の勝利ではありました。

 その他にも、優秀な守備的ハーフの宮沢(東京)、その忠実さがチームの心理的な安定に大きく貢献している浅利悟(東京)、素晴らしい突破力の鈴木規郎(東京)、どんどんとパフォーマンスをアップしつづける学卒コンビの坪井と平川(レッズ)、また、ボール絡みや、ボールがないところでの実効パフォーマンスがあまりにも低すぎる福田正博(レッズ)を使いつづけるハンス・オフト(まあ、このところはあまり指摘していませんでしたが・・バランサーという意味のはき違え・・等)などなど、いろいろなポイントがありました。それらについては、また機会を見て・・。

 さてこれから「外国人」たちの試合を観戦することにしましょう。あっと・・昨日行われた、プレミアの「フラム対リバプール(3-2)」では、最後の20分間、稲本が登場しました。それでも、フラムに退場者が出たために数的不利な状態で「3-1」のリードを守らなければならない・・その守備固めという意味合いで稲本が投入された・・ということで、コメントする内容は、あまりありませんでした。まあ、少ない時間でも、とにかく動きまわって相手からボールを奪い返すようなアクティブプレーがあれば、もっとポジティブに「次」につながっただろうに・・なんていう印象くらいでしょうか。最初から出ていたにもかかわらず動きのダイナミズムが落ちずに、攻守にわたって目立ちつづけたマールブランク等が、あまりにも目に付きすぎてしまって・・。とにかく「もっと」ガンバレ、稲本!!



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