湯浅健二の「J」ワンポイント


2003年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


第2節(2003年4月6日、日曜日)

レッズについては、いつも同じようなコメントになってしまう・・レッズ対グランパス(0-0)

レビュー

 「湯浅さん、オフトは、やり方を絶対に変えませんよ・・」。何人ものメディアの方からそんな言葉を聞かされていました。彼らは、日本代表、ジュビロを通じてオフトのやり方をよく知っている人たちです。まあ、そうなんだろうな・・。私は、それ以前のハンス・オフトも知っていますよ。ヤマハや広島で臨時コーチをやっていた彼のこともね。当時の彼からは、そんなにスクウェア(四角四面)な印象は持たなかったのですが・・。

 この試合のレッズも、グランパスの攻撃ブロックに対し、まさにオールコートマンマークという執拗なディフェンスを展開します。やり方を明確にしていることで、個々の責任の所在も明らかになる守備のチーム戦術。そこには発想の柔軟性のカケラも感じません。ウェズレイには坪井。ヴァスティッチには室井。藤本には鈴木。酒井には内舘。もちろん両サイドの山田と平川は、それぞれ、グランパスの両サイド、滝沢と中村をケアーします。首尾一貫。スゴイね、本当に・・。

 もちろん攻撃は、例によって「前後分断」の個人勝負ばかり。この試合では、開幕ゲーム同様、退団したエジムンドに代わり、長谷部が先発なのですが、彼とエメルソン、そして永井の三人が「わたし攻める人」っちゅうわけです(まあ長谷部は、より柔軟に対処していましたがネ)。そして後方から押し上げた者は、ほとんどのケースで、前線の味方にボールを預けて止まってしまう・・もちろん、ボールがないところで「追い越していく」選手がいるはずもない。

 攻撃のあとに待っている「責任の所在が明確になるディフェンス」に意識が向いてしまっている?! 監督から「攻め上がるのは9対1くらいの割合で・・」なんて言われている?! さて・・。それでも、前半でチャンスになりかけたシーンのすべてが、山田と平川、そして鈴木啓太が押し上げた状況だったという事実は残ります(もちろん単発でしたが・・)。後方から上がってくる選手が有機的に絡む変化(タテのポジションチェンジやコンビネーション等々)。それこそがチャンスを生み出すキーポイントなのに・・。

 対するグランパス。開幕戦での「連鎖サッカー」は、アウェーということ、またレッズの執拗なマンマークに慣れていないために(いくら動きまわっても、常にマーカーの影が・・)、うまく機能しません。それでも決定的なカタチという視点では、確実にグランパスの方が上回っていました(シュート数は、グランパスの10本に対し、ホームのレッズは僅かに4本!)。

 特に前後半ラストの時間帯では、素早い展開から、惜しいチャンスを作り出していました。それも、厳しいマンマークに慣れ、どのようなカタチでも一人さえ外せば(マークのプレッシャーから少しでも自由になりさえすれば!)確実にチャンスになるということを体感したからでしょう。藤本、ヴァスティッチ、はたまたウェズレイ等が、何とかマーカーをかわしそうになったら(ボールを持って間合いを取ったり、キッチリとボールをキープできたら)、後方からの押し上げも含めて、周りの動きが急に活発になったものです。

 グランパスの攻撃は、ボールを動かすコンビネーションのなかに、ウェズレイ、ヴァスティッチ等の個の勝負を柔軟にミックスすることで(その組み合わせで攻撃の変化を演出し)相手守備ブロックを崩していこうというイメージでしょう。後方からの「追い越しフリーランニング」(タテのポジションチェンジ)など、攻めの基本的なアイデアという視点では、確実にレッズを凌駕しています。とはいっても、前節ホームでのエスパルス戦ほどの出来ではありませんでしたが・・。

 ところでハナシはブッ飛びますが・・エジムンドの退団劇について。そこでは、ハンス・オフトとの意見の食い違いがあったとか・・。まあそれはそうでしょう。下がってボールを持っても、追い越していく味方があれ程少ないのでは、彼がイメージするコンビネーションなど演出できるはずがない。彼がボールをもったとき、前方でパスレシーブに入れるのが、相手にタイトにマークされたツートップだけというのではネ・・。

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 さてマンマーク。忠実に遂行しようとするレッズですが、一瞬の「すり抜け」や素早いコンビネーションで置き去りされてしまうなど、忠実&タイト(相手に身体を預けるくらいの密着マーク)であるからこそのマイナス面も目立つようになったと感じます。また、相手の一瞬のダッシュで間合いを空けられてしまうのも避けがたいですしね。

 特に後半のグランパスの攻撃に、前方でタテパスを受けた味方が、相手マークから余裕をもった瞬間を狙った後方からの押し上げ(追い越しフリーランなど)という「変化」も出てくるようになりましたから、レッズのディフェンスも徐々に安定感を欠くようになっていったというわけです。

 何といっても、マンマークのレッズ中盤には、マークする相手に付いていくからこそのスペースが常に空いてしまうわけですからネ。もちろんレッズ選手たちは、押し上げる相手もことごとくマークしてしまうわけですが、グランパスがマークの間合いに慣れてきたこともあって、徐々にスキを突かれるようになっていったということです。そして、前線の三人(ウェズレイ、ヴァスティッチ、藤本)を追い越すように、両サイドや酒井、吉村が勝負所へ押し上げていく・・。

 そんな展開のなか、後半開始早々の4分、右サイドをドリブルで突破した中村からのラストクロスを、ニアスペースへ入り込んだ藤本が、ヘッド一閃。シュートされたボールは、ガツン!と、レッズゴールの右ポストを直撃していました。フ〜〜。

 その後も、ウェズレイやヴァスティッチ等が、かなりきわどいシュートチャンスを作り出します。まあ、内容では、完全にグランパスに軍配が上がるゲームだったということです。

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 後半の18分、エメルソンが、ケガで田中と交代します。そしてレッズの攻めの勢いが、減退の一途をたどっていく・・。「個の勝負だけ」を前面に押し出した攻撃イメージですからネ、それも当然の成り行きです。私は、前節アントラーズ戦の最後の時間帯で魅せた「吹っ切れた組織攻撃」の再現を期待していたのですが・・。

 もう何度も書いたことなのですが、レッズ選手たちのディフェンスに対すする意識は確実に向上しているのですから(危急状況でのカバーリングや、仕方ない状況でのマークの受けわたし等々)、そろそろ選手たちのマインドを、攻守にわたって「解放の方向」へ軌道修正しはじめていもよい頃なのでは・・。もちろん最初は、より「規制」に重きが置かれるのは仕方ないにしても・・。

 まあ、「規制と解放のバランス」は難しいテーマではあります。さて、これからハンスはどのようにチームを発展させていくのか(どの方向にチームを導いていくのか)、注目しましょう(何度もくり返した同じフレーズの締め・・ご容赦アレ!)。



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