湯浅健二の「J」ワンポイント


2003年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第1節(2003年8月16日、土曜日)

 

後半は、期待通りのエキサイティングマッチになりましたよ・・マリノス対ヴェルディー(2-2)

 

レビュー

 

 さて、マリノス対ヴェルディー。セカンドステージ開幕戦でもっとも期待できる勝負マッチです。

 どうして期待値が高いのかって? もちろんそれは、基本的なキャパシティー(チカラ)の高いヴェルディーに復活の兆しが見えてきているからです。それについては、以前の「ナビスコカップ・コラム」を参照してください。そこで強調した「復活ポイント」は、何といっても、ボールがないとろでの動き(素早く広いボールの動き)をベースにした組織的な仕掛け。「組織パスプレーベースの変化」が冴えるからこそ、そこにバランスよくミックスされてくる彼ら特有の「個のエスプリプレー」も冴えるというわけです。組織プレーと個の勝負プレーのバランス。さて、そんな復活の兆しが見えてきたヴェルディーが、「兆し」を、どこまで実体あるホンモノにまで高められるのか・・。

 でも前半は、そんなヴェルディーに対する期待が、完全に空回りしてしまいました。攻守にわたるせめぎ合いで、マリノスにペースを奪われつづけたのです。その背景としては、まず、マリノスの出来が素晴らしかったことを挙げなければ・・。もちろんそのバックボーンは、遠藤、那須、それに奥と佐藤由紀彦による中盤ディフェンス。素晴らしかったですよ、本当に。

 ボールホルダー(次のパスレシーバー)への、素早く厳しいチェックアクション・・その「守備の起点」をベースにした次の「読み」ディフェンス勝負(パスレシーバーに対するアタックやインターセプト等)・・。その中盤ディフェンスが機能したからこそ、ヴェルディーがペースを握れなかったということです。とにかくボールを動かすことがままならないヴェルディー・・各ステーション(ボールホルダー)でボールの動きが停滞気味になることで、次でのミスパスが増える・・そんな悪循環のなかで、エムボマも、まったくといっていいほど「良いカタチ」でボールを持つことができない・・。

 もちろんユー・サンチョル、中澤、松田、ドゥトラで構成するマリノス最終ラインも「全面」にわたって強い、強い。強力な中盤ラインと最終ライン。その守備ブロックが、基本に忠実に、ステディーなディフェンスを展開するのですからネ。まあメンバーだけを見てみても・・改めて、強くて当たり前だと思えてくるじゃありませんか・・。

 そんな展開のなか、何度もマリノスが必殺のカウンターを仕掛けていきます。もちろんマリノスの選手たちは、「なるぺく高い位置でボールを奪い返し、手数をかけずに素早く相手ゴールへ迫る・・」というイメージでプレーしているわけですが、逆に、その効果的カウンターの要因をヴェルディーサイドから探れば、三浦、柳沢というサイドバックと、平野と山田で構成する両サイドハーフによる「前後のコンビネーション」だけではなく、小林慶行と田中隼磨で組んだ守備的ハーフの攻守にわたるコンビネーションも「曖昧」だったからということになるでしょうか。要は、誰が押し上げ、誰が戻り気味のバックアップポジションを埋めるのかという、状況に応じた「タテ方向のバランス感覚」が欠如していたということです。もちろんヴェルディーが、組み立てから仕掛けに移る段階において、非常に悪いカタチで(味方が前へ重心を移している状況で)ボールを奪われたということもありますが・・(うまく仕掛けられないことで、曖昧に、攻撃に人数をかけ過ぎていた・・皮肉なことに、そのことが逆にパスミスを誘発した!)。

 とにかく、「中盤ディフェンスでの忠実さ」で確実にマリノスに軍配が上がるといった内容の前半だったわけですが、そんなゲーム展開が、後半は、ガラリと様相を異にします。ヴェルディーが、期待されていた「復活の兆し」を感じさせてくれたのです。

 後半は、攻守にわたって互角以上のゲームを展開できるようになったヴェルディー。そのバックボーンは、何といっても、ラモンの登場でした。田中隼磨との交代だったのですが、ラモンが登場したことで、ヴェルディーの攻撃に明確な「コア」ができたのです。ほとんどすべての展開に絡んでいくラモン(味方も、彼を捜してボールを集めようとする!)。それも、ボールをこねくり回すのではなく、素早く、広くボールを動かすというイメージでプレーするのです。そんな、実効あるイメージリーダーが登場したのですから、ヴェルディー選手たちの、攻撃におけるコンテンツ(仕掛けイメージ)が「統一」されていくのも道理。そして、ボールが動きはじめたことで、選手たちのボールなしの動きを心理・精神的に支える「確信レベル」も高揚していったと感じます。ボールと人の動きの善循環・・。

 ラモン効果は、攻撃ばかりではありません・・。いや、というよりも、彼の登場でディフェンスがしっかりと機能しはじめたからこそ(小林慶行のプレーにも、メリハリが出てきた!)、攻撃の勢いを加速させることができたという見方の方が正解でしょう。だからこそ、前述した両サイドペアの「タテの役割チェンジ」も、よりスムーズにいくようになった・・そしてチーム全体の守備意識の向上が、攻撃の善循環を加速させた・・ということです。

 後半でのヴェルディー攻撃のコンテンツは、「質的」にもマリノスを凌駕していましたよ。組織プレーと個人勝負プレーの高質なバランス。それに対して、マリノスの仕掛けは、先日のナビスコレポートでも書いたように、かなり「個に偏り過ぎ」だと感じます。だから相手守備ブロックも、組織として対処し易い・・。もちろん、マリノスの個の勝負はダイナミックだから(ドゥトラ・・マルキーニョス・・久保・・奥・・佐藤・・等々)、ツボにはまれば怖いことこの上ないのですが、それでも、仕掛け段階での組織プレーが向上すれば、彼ら本来の「個のチカラ」が、より効果的に発揮される?! まあ、ということだと思いますよ・・繰り返しになりますが・・。

 さて最後に林について・・。能力のある選手です。もちろん守備においても。でも、まだまだ「安易なプレー」が多すぎる。自分の能力に対する過信・・?! まあそういうことでしょう。以前も、忠実なポジショニングを取るよりも、怠惰にインターセプトポジションに入ってアタマを抜かれたりするような安易なプレーが目立っていました。この試合でも、マルキーニョスにやられた前半の二点は、まさに林の「安易なミス」が原因だったといっても過言ではないし、後半ロスタイムにおける、ゴール中央へのパスなどは許されるものじゃありません(あれは、クリアミスであって欲しい・・あれが、味方への横パスを意図したものだったとしたら、もう完全にディフェンス失格!!・・まあ奇跡的にクリアできたわけですが、アレが入っていたら、後半のヴェルディーの努力が水泡に帰してしまう!!)。

 たしかにロペスよりは安定しているとは思いますが、それでも林は、心を入れ替えなければ、肝心なところでの決定的なミスを犯すに違いありません。そう、昔のようにネ・・。それは、ヴェルディーの「復活劇」を台無しにしてしまうレベルのものになりうるかもしれない・・。それほど、最終ラインセンターの役割は重要なのです。さて・・。

 ==========

 明日は、ヴィッセル対ジェフの試合をレポートしますが、機会を見て、本日埼玉でおこなわれたレッズ対ジュビロの試合も簡単に分析してみようと思っていますので・・。

 

 

 



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]