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ジェフは、チェ・ヨンスとサンドロがケガで欠場。でも彼らに対する期待内容は変わりません。何といってもジェフサッカーの見所は、高質なサッカーコンセプトですからネ。全員守備、全員攻撃の「トータルサッカー」。それをどのようにグラウンド上に具現化していくのか・・。それこそが、ジェフサッカーの観戦ポイントというわけです。
選手たち自らが理想サッカーに近づこうとする強い意志をベースに、考えつづけることとほぼ同義ともいえる抜群の運動量(攻守にわたる、クリエイティブなムダ走り!)を誇るジェフ。ファーストステージ最終節での「悔しい敗戦」と、試合後にハンス・オフトが、ジェフサッカーに対して言い放った(根拠のない?!)アロガントコメントもありましたから、ジェフ選手たちのスピリチュアルパワーは上限知らずといったところでしょう。
対するレッズ。室井がケガで戦列を離れたことで、内舘をストッパーに起用するなど、選手のポジションをいろいろと試していました。そして前節、ニキフォロフ、ゼリッチ、坪井のスリーバックで落ち着いた(結果もついてきた)。
とにかく守備ブロックを固め、攻撃では、極力リスクを避けるという戦術サッカー(勝つことだけをターゲットにした規制サッカー!)を標榜するハンス・オフト。そんな、勝利至上の戦術サッカーをどこまで引っ張りつづけるのか・・。私は、いつも書いているように、そんな方向性のサッカーは、決して選手たちの発展ベースにはならないと思っているのです。とにかく、サッカーの理想型が、人々に感動を与えるリスクチャレンジを基盤にした「美しさ」と、戦術(決まり事)ベースの「勝負強さ」がハイレベルにバランスした状態にあることは誰にも否定できない事実ですからネ。さて・・。
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そんな条件を前提にゲームを観はじめたという次第。そしてはじまって間もなく、ジェフが、セットプレーを起点に先制ゴールを挙げます。まあ、立ち上がりのゲームの流れ(ジェフが圧倒するゲーム内容)からすれば、まさに順当なゴールではありました。
とにかく、レッズの「前後分断の規制サッカー」に対し、ジェフが展開するダイナミックな高質サッカーの目立つこと。ここで、具体的な現象を例にとって、そのことを検証しましょうかネ。
まず(カウンターを除く)攻めでは、常にジェフが前線に6-7人という人数をかけて仕掛けていくのに対し、「前後分断」のレッズは、常に決まった三人だけという現象(言わずと知れた山瀬、田中、エメルソン)。
まあ「スリー・ライン」は保ってはいるけれど(あっと・・日本代表監督当時のハンスは、トライアングルなんていうキーワードも持ち込んだっけ・・)、それでも最終の仕掛け段階じゃ、スリーラインなんていうカタチにこだわることが逆にジャマになることは自明の理。何といっても、攻撃においてもっとも重要なコンセプトは「変化」ですからネ。要は、レッズの変化は、「個のチカラ」だけが頼りということです。それに対しジェフは、(仕掛けに人数をかけているからこそ!)組織と個がうまくバランスした変化を演出できている・・。
そのことは、ジェフが仕掛ける最終勝負において、前線のツートップと二列目センターの羽生だけではなく、両サイドの坂本と村井、はたまた守備的ハーフの佐藤たちも後方からどんどんと飛び出してくることで(ボールのないところで)決定的スペースを狙うという積極リスクチャレンジプレーに如実に現れています。そこでくり返されるタテのポジションチェンジ(後方からの追い越しフリーランニング!)。それこそが、ボールがないところでのアクションをペースにした変化を演出するというわけです。とにかくジェフの組織的な仕掛けアイデアは秀逸です。まあこの試合では、チェとサンドロという「個の変化の演出家」が欠けていましたからネ。
そんなハイレベルな現象については、常にジェフ選手たちがボールがないところでのアクション(仕掛けのフリーランニング)を狙っているだけではなく、「パス&ムーブ」という個人戦術プレーが、脳裏の深いところまで浸透していることも背景にあると思っている湯浅です。基本中の基本ともいえるボール絡みのコンビネーションを忠実に実行しているからこそ、効果的にスペースを使いつづけることができるということです。
また逆に、こんな見方もできるかもしれません。レッズが前後分断だからこそ、多くのジェフ選手たちが積極的に前線へ押し上げていけた・・。
要は、レッズ選手たちの次の攻めでの「前への爆発ダッシュ」が活発ではないから、ジェフ選手たちが、攻め上がっても十分に戻れるという自信をもっているということです。もちろんその大前提が、レッズのカウンターの芽をしっかりと抑制するというところにあるのは言うまでもありません。ということで、この試合では、山瀬をマークする阿部勇樹が押し上げるシーンは希でした(=ジェフのゲーム戦術的プラン)。
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まあ守備は、同じような「発想」をベースにしています。両チームともに「マン・オリエンテッド」タイプのチーム戦術ですからネ。最初から「人をマーク」するディフェンス。そのタイプの場合、どうしても周りにスペースができてしまうわけですが、そこを使おうとする相手選手をしっかりとマンマークしていれば問題ない・・というわけです。
でも実際の現象面は、大きく違う。それは、ジェフ選手たちが、常に、ボール奪取の後の「次の攻撃への押し上げ」を意識してディフェンスに就いているのに対し、レッズの守備ブロック選手たちは、自分が受け持つ相手をマークすることに気を取られすぎていると感じるのです。「そこのポジションとタスク専門」という意識に凝り固まっているレッズの選手たち?! だから、ボールを奪い返しても、とにかく素早く「前線の仕掛け人」へのタテパスをイメージしていることばかりが目立ってしまって・・。
とにかくジェフが、攻守にわたって、忠実に「数的優位な状況」を作り出しているという事実の背景に、重いコノテーション(言外に含蓄される意味)があると思っている湯浅なのです。
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でも結局ゲームは「2-2」のドローで終わります。まあ内容的には、(チェ・ヨンス&サンドロの不在にもかかわらず!)完全にジェフが凌駕したわけですが、あれだけ決定機がありながらゴールに結びつけることができず、逆にレッズに、数少ないラッキーチャンスを決められてしまうのではネ・・。
まあそれも経験です。とにかくジェフは、有意義な経験を積んでいますよ。もしこれで、彼らの「勝者のメンタリティー」が発展・深化しないのなら、それはもうクラブ全体の体質的な問題としか言いようがない。まあそれについては、それからの継続的な観察ということになります。
オシム監督も、この試合でジェフが展開したサッカー内容にご満悦のようでした。オシム監督のコメント骨子は、「良いゲームだった・・選手たちは、しっかりと闘い、しっかりと走っていた・・このゲームは、確実に次につながる・・」ってなところだったでしょうか。
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さてレッズ。どうも、数字的な結果が上がっていることもあって、ファーストステージに兆しが見えた、ポジティブな山瀬効果(≒クリエイティブな組織的仕掛けをミックスしていくことや、タテのポジションチェンジなど、ボールがないところでのクリエイティブなアクション等々)が完全に影を潜めてしまいました。要は、監督の言うことを聞かざるを得ないという雰囲気がチームを支配しているということでしょう。それでは、(ハイレベルな守備意識を基盤にした!)次の仕掛けでのクリエイティブなルール破りというポジティブなプレー姿勢が発展するハズがない。本当に残念・・。
ハンス・オフトは、大分とのアウェーゲームで必殺カウンターゴールを重ねて勝利をおさめた後に、「連敗から立ち直り、自分たちのサッカーを取り戻した・・勝ちに舞い上がらず、安定した戦いをしていく」なんてことを言っていたらしい・・。
まあハンスが、やり方を変えるはずないか・・。
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さて、ガンバ対ヴェルディー。
両チームもとに、上位チーム(アントラーズ、ジェフ、マリノス、レッズなど)が引き分けたことを知っているはずです。上位が足踏みしているときに勝ち点を稼げられなければ、絶対に優勝なんてできるはずがない・・。そんな積極的プレー姿勢が、如実にグラウンド上の現象に現れていました。両チームともに、持ち味を活かした積極オフェンスを展開するのですよ。でも「実際の内容」では・・。
しっかりとボールを動かしながら攻め上がるヴェルディー。以前の彼らは、(シュートを打つことではなく)中盤でキープすること(ボールポゼッション)が彼らの攻めの目的だ・・なんて揶揄されても仕方のないカッタるいサッカーに終始していました。キープ率は高いけれど、それが、まったくと言っていい程シュートに結びつかないのですよ。そんな「マスターベーションサッカー」を、オジー・アルディレスが修正し、ようやく、彼らの才能レベルに見合った質の高いサッカーが展開できるようになったヴェルディー。パスタイミングがシンプルになりましたし、周りのボールがないところでの動きも活発になっている・・だから、スペースをうまく活用することができるようになってきた・・だからこそ組織パスプレーと、ドリブルやタメなどの個人勝負プレーがハイレベルにバランスするようになる・・。
とはいっても、この試合でも(前節のセレッソ戦同様に!)、どうも組織プレーイメージが活性化してこない。沈滞気味のボールの動きだから、以前のように、個の勝負で抜け出せなければチャンスを広げられないし、簡単に次のパスを読まれ、悪いカタチでボールを奪われてしまう・・。
逆にガンバは、そんなカッたるいヴェルディーの攻めを、まさに完璧に逆手に取ってしまいます。しっかりと守備ブロックを固めてヴェルディーの攻めを受け止め、タイミングの良いカウンターを仕掛けていくガンバなのです。
とにかくガンバ選手たちは、ヴェルディーがキープするボールをどこで奪い返すかという明確なイメージが描けていると感じました(それほどヴェルディーのボールの動きが緩慢!)。だから彼らは、次のカウンターで狙うべき前方スペースを明確にイメージしながら守備アタックに入っていける・・。とにかく、ピタリ、ピタリと、面白いようにガンバのボール奪取とカウンター攻撃が、効果的にリンクしつづけるのです。
最前線に張るマグロンのポストプレーとヘディングの基点プレー。そこを中心に、小型衛星のようにアクティブに動きまわってスペースを突いていく大黒。両サイドバック(特に左サイドの新井場)や守備的ハーフ遠藤のオーバーラップ等々。それらの攻め手が、まさにイメージ通りにピタリ、ピタリとはまりつづけるのです。そこでは、アリソンの攻守にわたる貢献が目立ちつづけていました。
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ヴェルディーは、「これに勝てばリーグ首位だ・・」という意識で、硬くなってしまった?! まあそうなのかもしれませんが、それでプレー内容が大幅に乱れてしまうのでは首位に立つ資格などありません。
だから私は、攻撃でのボールの動きやサイドゾーンの活用、また特に中盤ディフェンスを中心に、ヴェルディーの後半のプレー内容に注目していたのです(換言すれば、ハーフタイムでのオジーの刺激に注目!)。何といっても、個人の能力の「単純総計力」ではリーグトップレベルの彼らですからネ。それを、どのくらい、実効あるカタチでグラウンド上の現象に転換していけるのか・・。
そんな期待を込めてジックリと後半のゲーム内容を観察していたという次第なのです。でも結局は、「あ〜あ、この試合はダメだな・・」なんてネ。とにかくコンビネーションプレーが連鎖しないし、決定的スペースを突くフリーランニングも少なすぎる(平野が挙げた唯一のゴールシーンでは、平野の飛び出しと林のタテパスがうまくシンクロしましたが・・)。
ボール絡みでは、全員が素晴らしいプレーを魅せるのに、ボールのないところでのプレーに明確なイメージを載せることができない。それって、トレーニングの欠陥?! まあ、そうとも言えそうです。それもまた、チームとしてのイメージのシンクロ状態が、まだまだ確固たるレベルまで高揚していないことを如実に証明する現象ですからネ。有機的に連鎖しないボール絡み、ボールなしのプレー。これでは、いくらボールを支配してもシュートにつながらないのも道理。
それには、この試合でのガンバの守備が非常にクレバーだったということもあります。
常にボールホルダーのプレーを遅らせるという明確なイメージをベースにしたチェック(決して無理なアタックを仕掛けず、ある程度の間合いでしつこく付く!)。それをベースに周りの味方が、ボール奪取アタックへの感覚を研ぎ澄ましていく。とにかくゲーム終了直前まで、このゲームに対するガンバ監督の意識付けが非常にうまく機能していたと感じていた湯浅なのです。でも結局、ロスタイムにはいってから同点ゴールを決められてしまうガンバ・・。これで二試合連続とのこと。さてその背景には「何」があるのやら・・。
ツキ?! まあそれもあるでしょうが・・。試合終了間際のゲーム展開で、急にガンバの守備ブロックを落ち着きを失い、選手たちがボールウォッチャーになってしまうシーンが増えたと感じていた湯浅ですから、ツキがなかった「だけ」ではないのだろうな・・なんてことも思っていたという次第です。もしかしたら、これまた、クラブマネージメントや現場マネージメントの「体質的」な問題や課題なのか?? さて・・。
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それにしても終了間際にヴェルディーの小林慶行がたたき込んだ同点ゴールは見事の一言でした。まさに粘りのゴール。シュートした足先には、確実に「意志」が通っていたに違いない・・。
この試合でも小林慶行は、守備的ハーフとして、攻守にわたって粘り強いプレーをつづけていました。以前の小林のついて私は、才能は十分でも、サボりのプレーが多すぎるし、自分から仕掛けていかない斜に構えたプレー姿勢が嫌いでした。でも最近になって、明らかに、内からわき出るようなポジティブなプレー意志を感じるようになりました。
サッカーは、効率的になんてプレーできるものじゃない・・プレーを有機的に連鎖させるためにも、無駄な(でも実際にはムダではない)プレーを積み重ねなければならない・・。そんなサッカーのメカニズムが理解されたということなのでしょうか?!
いや・・、私は、以前は通用した「斜に構えた、見せかけのクレバープレー」が、今ではまったく通用しなくなった・・という事実があると考えます。だから才能ある選手たちも、攻守にわたって忠実にプレーせざるを得なくなったということです(そうでなければプロとして通用しなくなった!・・Jの環境が、本物のプロらしくなってきた!)。
まあ、それにしても、才能ある「上手い選手」が、攻守にわたって、目立たない忠実プレーにも精を出すことで「本物の良い選手」へと脱皮していくプロセスを観察することほど心が満たされることはありません。