私にとっての試合テーマは、ダイナミズムにあふれる両チームの対決コンテンツ(ガチンコの意地クラッシュ!)だけではなく、ジェフのテーマである勝者のメンタリティー(勝ち切ることに対するセルフモティベーション能力?!)も対象です。何といっても、リーグ中盤の天王山ですし、選手能力の「単純総計力」では確実にチカラが上のマリノスが相手ですからネ。また、もう何度か書いているように、マリノスは、チーム戦術的にも(発想レベルと自分主体の実行コンテンツ等)、今のリーグでは最高峰でしょう。そんな強い相手と、そのホームで戦うからこそ、ジェフがこれまで志向してきた「サッカーコンテンツ」が問われるというわけです。とかにく、強い相手と戦うことほど効果的な学習機会はないということです。
とはいっても立ち上がりは、両チームともに守備を固めるといった落ち着いた展開です。ジェフの守備イメージの基調は、例によって人を意識する「マン・オリエンテッド発想。それに対しマリノスの守備は、互いのポジショニングバランスをスタートラインに、ある程度はマークの受けわたしをする「ポジショニングバランス・オリエンテッド」な発想。さて・・。
この両チームの守備が堅牢なことは周知の事実、だから、どこかで誰かが大きなリスクにチャレンジしていかなければ守備ブロックに風穴を空けることはできない・・。ジェフでは、やはり佐藤勇人や、両サイド(坂本&村井)の飛び出しでしょうか。彼らのフリーランニングはレベルを超えていますからネ。スタートし、何十メートルも「走り抜けて」しまう。もちろんボールをもってからの「吹っ切れたドリブル突破」もいい。彼らが放散しつづける高い「確信レベル」は、まさに脅威です。それがあるからこそ、効果的な仕掛けの雰囲気を相手にぶつけることができる(相手を少しでもビビらせることができる!)・・。
「まあ、走る、走るとはいっても、ウチの場合、その基盤になる発想は、味方のパスコースを作り出す・・ということだから・・」。今週号のサッカーマガジンで、鈴木啓太(レッズ)と阿部勇樹(ジェフ)が対談していました。そのなかで阿部勇樹が、そんな意味のことを言っていました。もちろん、その走ることには、高い守備意識をベースにした積極ディフェンスも含まれているのは言うまでもありませんけれどネ(誰でも、積極的に守備へ戻る=ディフェンス参加のために走る!)。
あっと・・ここでいう守備意識ですが、それは「本来の意味」での守備に対する積極的な(自分主体の=自分で仕事を探しつつける)意志のことです。巷では、守備ブロックを固めること(人数をかけて守備的に戦うこと)を高い守備意識の戦い方なんてことを言ったり書いたりしている。それは、私が考える「高い守備意識」という表現の定義とはちょっと違う。はじめから守備を固めるような(受け身の)戦い方では、彼らのプレーイメージの主体がディフェンスということになりますからネ。それに対し、ホンモノの守備意識は、人数をかけた攻め(リスクチャレンジ)が主体。そんな積極的な攻撃サッカーのなかで、次の守備へ積極的に貢献していこうとする姿勢(ディフェンスで実効プレーを展開していく強い意志)が、ホンモノの守備意識というわけです。リスキーな攻めを繰り出しつづけるからこそ、ホンモノの「実効ある守備意識」が問われるというわけです。まあ、深遠な「守備意識」という普遍的なテーマを語るうえでは、私もまだまだ舌っ足らずだと感じているのですが・・。
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あっと試合・・。
前半も15分を過ぎるころには、マリノスの攻めにも、積極的に仕掛けていく(リスクにチャレンジしていく)という雰囲気が前面に押し出されてきます。久保へのタテパスが通ったり、ドゥトラがドリブル勝負を仕掛けていったり・・。そして、ちょっとゲームが動きはじめたかな・・なんて思っていた前半19分。やりました。マリノスの久保。セットプレーから、一瞬フリーになった(ジェフ守備陣のマークが一瞬気抜けになった?!)チャンスを逃さずに、キッチリと決めたというゴール。まあ、試合の展開からすれば、唐突なゴールだったかもしれません。そしてゲームが、マリノスのペースへ傾いていく・・。
「いまは、ソコだろう!」。何度そんな呟きが出たことか。チェ・ヨンスとともにジェフ最前線に張る林の、ボールがないところでの仕掛けプレーに、どうも集中力が欠けてきていると感じていたのです。林のプレーに「無為な様子見」の状態が増え、スペースへの先取りの走り込みが(それに対する意志が)希薄になりはじめていると感じたのです。要は、クリエイティブなムダ走りに対する意志が脆弱になったということです。
一点をリードされた後半のジェフ。押し上げようとはしているのですが、いかんせん、マリノスの守備ブロックは、例によってレベルを超えて堅牢。どうしても簡単にはね返されてしまう。だからこそ、特に林の、ボールがないところでの気抜けプレーに憤っていたというわけです。堅牢なマリノス守備ブロックが相手だからこそ、相手の守備イメージを超えたフリーランニング(ボールがないところでのムダ走り)が大事なのですよ・・それが出てこなければ、守備ブロックの組織バランスを乱すなんてことは出来るはずがない。
そして、チェ・ヨンスは最前線センターのターゲットマンだから、林が動きまわるしかないじゃないか・・ってなことを考えいたら、やはりオシム監督が動きました(本当に、この部分の文章を打っている最中に、林と大柴が交代したのですよ・・ちょっとビックリ・・)。林と大柴の交代。
そして再びジェフの勢いが活性化されます。よし、ホンモノの勝者のメンタリティー(≒体感ベースの自信?!)がカタチを成してきたかな・・なんて期待がふくらんだものです。でも結局、そんな前への勢い(選手たちの積極的な意志)が、マリノスが仕掛けた一発のカウンターによって、急にしぼんでしまう・・。完全に、前への勢いの逆モーションを取られ、ゴール前で「2対2」の状況を作り出されてしまったジェフ。それだけではなく、その後も、分厚い仕掛けを連続されてしまう。やはりマリノスはチカラのあるチームだ・・そんなことを実感させられていました。
さて、残り15分の攻防。観ている人々は、マリノスの地力を体感させられたに違いない?! 同じようなプレーイメージの、攻守にわたるダイナミックサッカーを展開する両チームだから、やはり最後は、個々の選手たち個々の微妙なチカラの差が、グラウンド上の現象に如実に現れてくる・・ということでしょう。
ジェフ選手たちの「前への勝負エネルギー」をうまくかわすように、スパッ、スパッと素早くボールを動かしてしまうマリノス。高い位置でのボール奪取を狙うジェフ選手たちが、肩すかしを食らって足を止めてしまう・・そして、その意志の空白(前へのエネルギーの停滞)を待ち構えていたかのように、マリノスが急激なテンポアップで仕掛けていく・・。まあ、大したものだ。
ゲーム内容で実力の差を体感させられ、そして結果でも完敗を喫したジェフ。それでも、自分たちが志向する高質なサッカーを最後までやり遂げようとしたプレー姿勢は称賛に値します。ローマは一日にして成らず・・。ジェフのサッカーが明確に示しつづける「ローマになろうとする意気込みと実効ある行動」は人々の共感と感動をよぶに違いない・・。
それにしても、後半39分の、佐藤の攻め上がりからのラストパスをダイレクトでシュートしたチェ・ヨンスのチャンスは決定的だった・・。まあ、その1分前にはマリノスが作り出したポストシュートシーンがあったから、押し詰まった時間帯における「勝負という視点」のせめぎ合いプロセスとしては五分かな・・。
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あ〜〜疲れた。
横浜国際競技場で観戦後、すぐに愛車のオートバイにまたがって駒場へ。もちろん第三京浜、首都高速(羽田線)経由ですが、途中、池袋手前で事故があり、もう大渋滞。クルマの横をすり抜けていくのは気を遣うのです。今回も、「後ろを見ないドライバー」がウインカーを点けずに車線変更しようとしましたからネ。こちらは、後輪が浮いてしまうほどの急ブレーキ。ホント、疲れました。それでも、キックオフ直後にはスタジアムに到着しました。フ〜〜〜。
さてレッズ対セレッソ。立ち上がりは、ホームのレッズが攻め込みつづけます。それでも、例によって組織プレーの変化がないから、どうも、セレッソの守備フロックのウラを突いていけない。
ウラを突く仕掛けとは、もう何度も書いているように、ボールを中心にして、その中心から遠いゾーン(スペース)をタイミング良く突いていくプレーのこと。要は、相手守備の薄いゾーンを突いていくという、攻めにおけるベーシックな発想のことです。ということで、そこでは、タテのスルーパス(&決定的フリーランニング)ばかりではなく、サイドチェンジ等も「ウラ突き」の仕掛けだということです。
この試合での山瀬は、比較的うまく機能していたと思います。いや、もしかしたら、「もう、こうなったら、オレも個人勝負を仕掛けていくしかない・・何といったって、組織パスを基盤にしたコンビネーションでの仕掛けイメージは希薄だから・・」ってな具合に吹っ切れたからなのかも・・。とにかく山瀬「も」、積極的なドリブルチャレンジを魅せていたということです。もちろん、そんな個のアクションが、周りの「ボールなしのアクション」と連鎖するというシーンは本当に希なのですが、それでも、積極的な「個の仕掛けポイント」が一つ増えたということではポジティブかな・・。
そんな迫力あるレッズの仕掛けに対し、セレッソ守備ブロックの「最終勝負イメージング作業」もまた、しっかりと機能していると感じました。要は、レッズの仕掛けプロセスがある程度「予測」できるから、カバーリングがうまく機能しているということです。レッズ選手たちも、ワンツーなどの局部的なコンビネーションで抜け出そうとしますが、どうしても最後の瞬間にフリーになれない・・(セレッソ最終ラインの集中力に拍手!)。
セレッソは、カウンター狙いを徹底していました。とにかく、中盤でボールを持った選手は、いの一番に「決定的スペース」へのタテパスをイメージしていると感じます。もちろん最前線の大久保と森島も、常に決定的スペースへの抜け出し狙っているから、たまに、(決定的パスとフリーランニングがシンクロした)鋭いカウンターが最終シーンまでいきそうになる・・というケースも増えてくる。
もちろんそんな「冷や汗シーン」を何度か体感することで、レッズ選手たちの前への積極的な意志が、ちょっと落ち着いてくるのは当然の帰結ですよね。でもまあ、それまで「前で詰まり気味」だったレッズですから、相手を押し込み過ぎるのではなく、後方で一度タメてから素早くタテへ仕掛けていくというリズムの方が、前線も勝負をイメージしやすいかも・・。
そして案の定、徐々にレッズの仕掛けパワーが増幅していったと感じます。まず、右サイドの山田信久が、中盤からのドリブル(タテのスペースをつなぐカウンタードリブル!)で、セレッソ最終ラインを「タテに揺さぶり」ます。山田がタテへ突っかけてくるのですから、セレッソ最終ラインの誰かは彼のチェックへいかなければならない・・。そして山田が、最後の瞬間に、右サイドでフリーになった田中達也へタテパスを通し、そこからラストクロスが送り込まれたというわけです(セレッソ守備陣のミスもあって、ボールがバーを直撃するという惜しいシーンにつながった!)。
その後にも、田中達也の惜しいドリブルシュートや、平川のドリブル突破からの惜しいクロスボールが飛び出すなど、レッズも、例によって個の勝負を主体にチャンスを作り出しはじめている。逆にセレッソも、押されっぱなしではなく、カウンター気味の攻撃からシュートチャンスを作り出している。さて・・
そんな流れを観ながら、こんなことを思っていました・・。レッズ選手たちは、「とにかく今は、勝つためにこのサッカーでいい・・」と納得しているのかもしれない・・。
それほど、攻守にわたって、彼らのサッカーの徹底度がアップしていると感じられたのです。ここで「彼らのサッカー」の一つひとつを表現する気はありませんが(いつも書いていることです)、とにかくその徹底度が高揚しているから、一つひとつの個人勝負プレのパフォーマンスも上がってくるという善循環が回っているのかも・・なんて思っていました。
レッズの仕掛けには、ドリブル勝負と、(一発ワンツーや単発フリーランニングなど)単純なコンビネーションしかありませんが、徹底度が高いし、仕掛けていく選手たちのレベルも高いから(エメルソン、田中、山瀬、平川、山田!)、迫力は推して知るべしなのです。
いや、つぼにはまったときの迫力は凄いよ、ホント。もちろん「解放マインドが主導する発展性」という視点では、それに限界があるのはミエミエですがネ・・。それにしても、このままいけば、勝負強さでは、本当に「イタリア並み」になるかもしれません(もう既に、彼らのサッカーには、イタリアイメージが定着している?!)。
さて試合ですが、後半の10分、後方からのタックルでニキフォロフが一発退場処分になってしまいます。見事なカウンタースルーパスで抜け出したセレッソ選手を、たまらず後方から引っかけてしまったニキフォロフ。当然の処分でした。そしてそのことが、レッズに幸いするのですからサッカーは分からない。
その後のレッズ攻撃の勢いが増幅したのですよ。この退場劇の直後、山瀬と長谷部が交代し、内舘が最終ラインに入ります。これで中盤以降の組織は補充されました。それでも一人足りないことには変わりはない。それでもグラウンド上の現象では、逆に、レッズの勢いが増幅する・・。フムフム。
その要因として、セレッソ選手たちが、ニキフォロフの退場にうまく対応できなかったことをまず挙げなければ・・。要は、守備ブロックから一人上がって攻撃をサポートするという発想がなかったのですよ。そして逆に、一人退場になったことで吹っ切れたレッズの攻撃が「解放方向」へ振れ、山田、平川、はたまた鈴木啓太のサポートが、より活発になったということです。それによって局面コンビネーションの可能性が増え、個の勝負の危険度も増していった(選択肢が増えたことで、個の勝負も効果的になる!)ということです。
そして後半21分、まさに「レッズ的な先制ゴール」が決まります。左サイドで田中がドリブル勝負を仕掛け、二人を翻弄してタメを演出する・・その間、フィニッシャーになるべきエメルソンは、逆サイドで、これまたタメている・・そして最後の瞬間、まさにここしかないというピンポイントクロスが、ファーサイドスペースでフリーになっていたエメルソンにピタリと合わされたという次第。すごい最終勝負だね、ホント・・。
その2分後には、コーナーキックからのこぼれ球を、交代出場した長谷部が、これまた豪快に20メートルのロングシュートを決めてしまう・・。でもまだ20分あるぜ・・それも一人足りないんだよ・・なんて思っていた湯浅です。何せ、ファーストステージでの大逆転家気も、まだ鮮明にイメージに残っていましたからネ。
なんてことを思っていたのですが、結局は、一発カウンターの「個人勝負」を田中が決めて3-0とし、勝負あり。すごいね、ホントに・・。
これでレッズは堂々の二位まで順位を戻してきました。いま彼らが展開しているサッカーの本質的な内容(ハンス・オフトの発想・姿勢)にはまったく納得していないけれど、勝つことで、もしかしたら次のステップアップがあるかもしれないという期待も膨らんできた湯浅でした。