マリノスでは、上野が奥の代役をやっている・・というか、前気味のチャンスメイカーポジションへ、ユー・サンチョル、遠藤、そして上野が、柔軟に入っていくというプランなんだろうけれど、まあ基本的には上野が前気味イメージでプレーするという解釈でよさそうです。
でもそんな布陣が、どうもうまく機能しない。上野は、ボールがないところでガンガン動きまわることでたくさんボールに触り、ダイナミズムを司るエネルギーを創造できるような選手じゃありませんからね。様子をみながら(足許へ)ボールが回されてくるのを待つというシーンが目立つのですよ。これでは、アントラーズ守備ブロックを不安に陥れるファクターとして機能できるはずがない。まあそれでも、ボールが回されてくれば、そこそこのパサープレー(タメとパスの演出)はできますからね。何か、ちょっとダイナミズムを勘違いしているように感じられてスッキリしない・・。
まあそれも、連日のヨーロッパ選手権に目が慣らされているからでしょう。彼らの、攻守にわたる、ボールがないところでのテンションとアクションに対してネ・・。誰でも走ることはできるでしょう。高質なサッカーは、クリエイティブなムダ走りを積み重ねていくことでしか実現できないのだから。だから、上野の、ちょっと斜に構えたプレー態度にガッカリしていたというわけです。まあ、日本代表にもいますよね・・、いまのところはうまくいっているけれど、肉を切らせて骨を断つという本物の勝負になったとき・・本当の意味でのギリギリのダイナミズムが求められるときに、攻守にわたる泥臭い汗かきプレーを率先して引っ張ろうとするのではなく、逆に、ミスをしないで済む「様子見の逃げプレー」にはしってしまうような頼りにならない選手が・・。
あっと・・またハナシが逸れてしまった。さて試合。互角の立ち上がりですが、自分たちの前で胴上げをされたくないというアントラーズが展開する失うものが何もないリラックスサッカーの方が、ちょっと硬いマリノスを、総体的な「流れ」で僅かに上回っている・・なんていうことでしょうかね。決定的チャンスの量と質では、アントラーズに軍配が上がるということです。右サイドバックの名良橋が、逆サイドからのサイドチェンジクロスに二度も飛び込んで決定的チャンスのコアになったシーンもありました。
それでも20分を過ぎたあたりから、それまで慎重だったマリノスも、決定的ピンチが彼を覚醒したのか、徐々に前へ重心を移していきます。攻撃に人数をかけはじめる・・そして、ドリブル突破チャレンジや、ゴール前に人数が入り込んだカタチでのクロス攻撃など、得意の最終勝負を仕掛けていく。さて、ここからだな・・。
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後半、攻守にわたってダイナミズムを充填できず、どうも浮き上がった存在だった上野に代わって、ケガが伝えられていた奥が登場します。そして開始早々の1分、こぼれ球に、足裏を見せて飛び込んだアントラーズの本山が一発退場処分になってしまう。こぼれ球に飛び込んできた相手GKと足裏で接触してしまったのです。そんな危険なプレーだから、まあレッドカードは仕方ない・・。
注釈(後から挿入!):上記部分の描写・コメントに対して、何人かの方々から抗議のメールがあり、急遽帰宅してビデオを確認しました。そしてその抗議の正当性を認識し、ここに間違いを認めて皆さんに対し(特に本山選手に対して)謝罪する次第です。まず「あれ」は、一発レッドではありませんでしたし(イエロー二枚目だった!)、足裏をGKへ向けたわけでもありませんでした。私の思いこみの完全なミス・・。これを貴重な学習機会とし、これからも慎重に、確実に、詳細な事実確認をしなければと自戒している次第です。ご指摘いただいた方々に対し、心から感謝・・
(・・ということでつづきです・・)そして次の瞬間、「アチラのゲーム」でジュビロが「2-1」にしたという情報が入ってくる・・またその数分後にも、ジュビロの前田が「3-1」となるゴールを決めたという情報がつづく・・さて、ドラマがはじまった・・。
私はそのとき、とにかく岡田監督は「失うものが何もないという状況になった」ことを、なるべく早く選手たちに明確に知らせるべきだと思っていました。とはいっても、試合が流れているなかで、相手が一人退場になってしまったという気が弛む状況にもかかわらず選手たちのダイナミズムを倍加させようというのは難しい作業ですよ。何といってもサッカーは本物のチームゲームだし、ボールがないところでの「主体的な無駄プレー」の質と量がエッセンスですからね。選手たちのマインドを統一して高揚させるのは難しいということです。だからこそ監督は、何らかのレベルを超えた刺激を与えたりするのです。もちろんベストなのは、強烈なグラウンド上のリーダーシップをもっていること。それは、監督の「エクステンション・ハンド(監督の右腕)」とも言えるグラウンド上のリーダー。「オイ! もう失うものは何もないぞ! 何をビビッているんだ! ガンガンとリスクにチャレンジして行くぞ!!」等々(もちろん実際はもっと強烈な言葉での)刺激を与えながら、チーム全体のスピリチュアルエネルギーを高揚させられるような真のリーダーのことです。
とにかく、どうもペースアップしない、できないマリノス。そんな状況で岡田監督は、久保竜彦を投入するのです。ケガが100パーセント癒えていいるわけではない久保を、敢えて投入するというレベルを超えた刺激・・。さてマリノスが最終勝負態勢に入った・・。
そして何度かのチャンスメイクの後の後半17分、カウンター気味の攻撃で3対3の状況を作り出し、最後は、奥が、タメにタメた突っかけドリブルから、左サイドのアン・ジョンファンへラストパスを出すのです。そして、奥のファウンデーションプレーによって完璧にフリーになったアン・ジョンファンは、一度ボールを持ち替え、余裕をもって、アントラーズゴール右隅へ「ゴールへのパス」を決めたというわけです。このシーンでは、とにかくアン・ジョンファンの落ち着きが際立っていました。何度も修羅場をくぐった「体感」が為せるワザ・・ってなところでしょう。このままマリノスがリードして勝利すれば、彼らがファーストステージ優勝チームということになります。さて・・
マリノスは、数的に優位ではあるけれど、前後左右の人数バランス・ポジショニングバランスを決して崩しません。だから、マリノスの後方では、常に「5対2」の状況になっている。フムフム・・。たしかに最後の15分間は、完全にアントラーズペースになり、何度かチャンスになりかけた状況もありました。それでもマリノスは、最後の最後まで集中を切らさず、もう一度のドラマを期待するこちらに肩すかしを食らわしてしまうのです。
普通だったら、人数が十分にいるからという気の緩みが選手たちの足を止め、特に守備において、ボールがないところでのダイナミズムが減退して致命的な現象につながるなんていうミスだって起きるはずです。でもそんなミスは、マリノスには無縁。
とにかく、ここぞの時間帯に、チーム一丸となってゴールを奪いにいき、実際に決めてしまう・・そしてその後は、余裕をもって相手の反撃をはね返してしまう・・。もちろんアントラーズの本山が退場になったという状況をもしっかりと意識してネ・・。本当にマリノスは強いチームですよ。岡田武史監督に、心からの拍手をおくっていた湯浅でした。
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ところでマリノスのプレーコンテンツですが、試合前に、「Opta」の方から、興味深い分析結果をいただきました。2004年シーズン、ファーストステージ第14節が終了した時点でのデータ分析結果。守備と攻撃のプロセスでは、マリノスとジュビロで大きく違う・・等々の貴重なデータ情報が詰め込まれた分析です。まあここでそれらを詳細に紹介するなんていう意匠権の侵害などできるはすばもないわけですが、でも一つだけ許してもらおうかな・・。それは、マリノスが、速攻、遅攻を合わせた攻撃の回数でトップだという事実。それは、合わせて「684回」ということなのだけれど、その背景にあるのが、マリノスが、もっとも被シュート数と失点数が少ない、守備がもっとも強く安定したチームだという事実なのですよ。要は、すべてのベースはディフェンスにありということが言いたいわけです。もちろん、ここで対象にしているのは「攻撃回数」ですからね、ボール保持(パスでのポゼッション)ではリーグ随一のジュビロは、たぶん「時間換算」ではマリノスと同等のはずですけれど・・。簡単ですが、とにかく、守備が抜群に強いマリノスが、攻撃回数でもトップに君臨しているという相関関係の背景ファクターの意味を考えることには意義があるということで、そのポイントに触れておくことにした次第。機会をみて、このポイントをもっと掘り下げたいと思います。
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本当に身体が厳しいので、これから少し寝ることにします。もちろん明朝のスウェーデン対オランダ戦をとことん楽しむためにネ・・。
FC東京に競り勝ったレッズの試合レポートは、明日ゆっくり取りかかりますので・・。