湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・ファーストステージの各ラウンドレビュー


 

第6節(2004年4月17日、土曜日)

 

結果はマリノスの順当勝ちということになったけれど、内容には不満・・(マリノス対ガンバ、2-1)

 

レビュー

 

 選手個々の才能プレーを「ぶつ切り」につなぎ合わせたサッカー・・なんていう表現になるのかな・・。マリノスが展開するサッカーのことですが、高い個の能力が揃っている彼らだから、どうもそのサッカー内容に納得できない・・。昨シーズンの立ち上がりは、前へ、前へと、前後左右にしっかりとボールを動かすサッカーにトライしていたのに・・。

 対するガンバですが、彼らは、(私にとって)まさにイメチェンの高質サッカーを展開してくれちゃいました。前後左右にしっかりとパスを回しながら、相手守備ブロックの薄い部分へボールを運んでいく・・そしてそこから、個と組織がうまくバランスした最終勝負を仕掛けていく・・。少なくとも、そんなイメージで彼らが仕掛けていこうとしているのが明確に見えるのです。そこでは、ワントップのマグロンが効いているし、その周囲を動きまわる二川、フェルナンジーニョ、そして大黒の「渦巻きのようなポジションチェンジ」が抜群の実効を発揮していると感じます。見ていて楽しいことこの上ない攻撃サッカーじゃありませんか。ガンバ監督の考え方に大きな変化があった・・?!

 さてマリノス。もちろん、ツボにはまったら、チャンピオンチームの破壊力を存分に感じさせてくれます。とにかく久保、坂田、奥、佐藤由紀彦、ドゥトラたちがくりひろげる最終勝負は迫力満点。特にドゥトラ。彼は、サイドバックを基本ポジションにしてはいるけれど、それだけではなく、完全なチャンスメイカー(突撃隊長)としても抜群の機能性を発揮しています。彼が攻め上がったら、奥も道をあけるし、次のディフェンスに備えて誰かが(主に奥とユー・サンチョルが)そのサイドの穴を埋める。誰もが彼の能力を知っているから、彼がボールを持って仕掛けアクションに入ったら、周りも確実に呼応するというわけです。

 ここでちょっと、マリノスのツボについて掘り下げましょう。私が不満なのは、いつも述べているように、攻撃が「個人勝負」に偏りすぎているからです。中盤のボールホルダー(ボールを持っている選手)のプレーに時間がかかりすぎる(ボールをこねくり回しすぎだしパスを出すタイミングも遅い!)・・だから横パスや足許パスばかりで、ボールがタテに動かない・・素早く、広く、縦横にボールを動かすことで、組織プレーでも攻めの変化を演出できるのに・・これではドリブル勝負を主体にした仕掛けばかりになってしまうのも道理・・そしてチーム全体として、パス(組織プレー)で崩していこうとする意図が希薄になっていく・・その背景には、攻撃に十分な人数をかけていないという事実もある・・まあ、個人のチカラがあれほど高いと、どうしても、ドリブル勝負を中心にした仕掛けイメージということで統一されてしまうのだろうな・・。

 要は、カウンター気味の攻撃を基調に、ドリブル勝負と、久保のアタマ狙いというイメージで送り込むサイドからのクロス攻撃が成功をおさめたという事実のことです。だから「それ」に固執せざるを得なくなる・・。とはいっても、マリノス選手たちの仕掛けイメージが「それ」で統一されているから、「それ」が、マリノスのツボと呼べるような実効ある仕掛けコンテンツになっているのも確かな事実。とはいっても、それでは、ちょいと面白くなさ過ぎる。彼らほどの個の能力が集まったチームなのだから、もう少し「組織プレー」にもチカラを入れれば、確実に、仕掛けの危険度は倍増するに違いないと思うのです。

 もちろん「マリノスのツボ」には、一発ロングパス勝負も含まれます。それは、カウンター気味の仕掛けシーンにおいてだけではなく、組み立てているなかからでも出てくるからすごい。要は、後方でゆっくりと安全パスを回しながら、急に、勝負のタテパスが飛びだしてくるということです。狙うは、もちろん相手守備ブロックのウラに広がる決定的スペース。もちろんそのとき、久保や坂田たちが、タイミングよく抜け出している。そんな一発ロングパス勝負に対するイメージシンクロの質も、素晴らしいレベルにあります。

 前半23分のマリノス二点目のシーンは、まさに「それ」。中盤で、ドゥトラからの横パスを受け、ボールをこねくり回すような素振りをみせる奥。でも次の瞬間には、ズバッという一発勝負ロングパスが飛び出すのですよ。もちろん最前線では、佐藤由紀彦と久保竜彦が決定的スペースへ、それもベストタイミングで飛び出している。ホント、素晴らしいゴールでした。ということは、マリノスの「ボールのこねくり回し」は無意味に見えるけれど、本当は、そんな唐突な一発勝負パスをイメージしているのか?! さて・・。

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 この試合で先発した坂田。そのプレーには、ストライカーとしての本格感がてんこ盛りでした。

 ストライカーとしての本格感・・。それは、ボールを持ち、ドリブル勝負を仕掛けていく姿勢に如実に現れていると感じます。「少しでもマークが横にズレたら即シュート!!」・・そんな雰囲気がビンビン伝わってくるのですよ。そこには、「どれ、ちょっとトライしてみようかな・・もちろんダメになりそうだったらパスを回せばいいさ・・」なんていう安易な「アリバイ要素」など微塵も感じない・・とにかく自分自身がシュートまで行くという決意に満ちている・・というわけです。

 まあ久保はいつものように大迫力でしたが、これからは日本代表でもそんな自己主張をしなければいけません。何せ一人だけ「復帰」したのですからね。それにしてもジーコは、山田暢久をどうするつもりなのだろう。久保と同様、(能力の高さで)彼も欠くことができないメンバーのはずですが・・。

 



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