湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第10節(2004年10月24日、日曜日)

 

やっとジュビロが本来のプレー感覚を取り戻した・・(ジュビロ対アルビレックス、3-1)

 

レビュー

 

 今日は朝からリラックス。昨日の夜、アントラーズ対レッズのレポートを書いているときに録画しておいたドイツ・ブンデスリーガのドルトムント対ハンブルクを観ながら、高原直泰のプレーを分析していました(レポートは、中田英寿、中村俊輔とともに明日アップする予定)。その後は本を読んだり、テレビの討論番組を観たり。そして日曜日の「J」、ジュビロ対アルビレックスを観はじめました。レポートするかどうかは内容次第だったのですが、両チームが展開するダイナミックな攻撃サッカーに魅入られ、徐々に創作意欲が刺激され、気付いたときにはキーボードに向かっていたという次第。

 たしかにアルビレックスは、攻守にわたってダイナミックなサッカーを展開してくれました。彼らが優勝レースに絡んでいるのも道理という高質なサッカー内容。彼らの場合も、クリエイティブな主体的守備意識がチーム内に深く浸透している。特にボールのないところのディフェンスで仕事を探しつづける選手たちのプレー姿勢に、反町監督の優れたウデを感じます。

 そんなアルビレックスのダイナミックサッカーがあったからこそ、ジュビロが復活ベクトル上にあることを強く体感できたというわけです。セカンドステージにおいてジュビロが抱えていた問題点の本質は、守備における「有機的な連鎖イメージ」が崩壊してしまったところにありました。要は、「守備の起点となる最初の仕掛けプレー」と、その周りで同時に展開されるべき「実質的なボール奪取勝負プレー」がうまく連鎖せず、選手たちの守備アクションが無為にムダになってしまうという状態が連続したことで、彼らを、心理・精神的な悪魔のサイクルに陥れたということです。

 チェイス&チェックという汗かきディフェンスが報われない・・それでも最初の頃は、そんな「使われるプレー」をつづけていたけれど、やはりそこは人間、汗かきプレーの勢いが徐々に落ちてくるのは自然な流れ・・そうなった場合、次のボール奪取勝負プレーにおける創造性レベルや忠実マインドレベルが減退してくるのも道理というわけです。だから心理・精神的な悪魔のサイクル・・。

 そんな疑心暗鬼的なネガティブ心理が膨張していたジュビロでしたが、鈴木監督が復帰してから、そのネガティブな心理サイクルが徐々に収束へ向かっていきました。選手たちにも、自分たちが抱える問題点が明確に見えていたに違いありません。そして徐々に、ボールなしの汗かきディフェンスプレーの量と質が回復基調に乗り、そのことで、次の攻撃にも本物の勢いが乗るようになっていったというわけです。

 この試合でのジュビロのサッカーには、彼ら本来の勢いが感じられました。それも、西と福西をケガで欠いていたにもかかわらず。彼ら二人を、実効あるパフォーマンスでリプレイスしたのは、河村と太田吉彰。特に太田吉彰が攻守にわたって魅せつづけた吹っ切れた主体プレーは、素晴らしく見所満載でした。目の覚めるゴールも決めましたしネ。もちろん河村も、攻守にわたって実効あるチームプレーを展開しました。

 そしてジュビロ中盤に、攻守にわたって、本来の創造的なダイナミズム(クリエイティブなムダ走りの積み重ね!)が戻ってきたというわけです。そして、人とボールの動きに、以前の量と質がもどってくる・・。観ていて、ホッと胸をなで下ろしたものです。たぶんヤツらは、昨年同様に天皇杯で存在感を発揮するでしょう。

 それにしても反町アルビレックスが展開する組織サッカーにはシンパシーを感じます。まあ、ちょっと「前後分断サッカー」の傾向はありますがネ。ファビーニョ、エジミウソン、オゼアスという攻撃の仕掛け人と、それ以外の守備ブロック・・。それでも、成果を挙げることで、より直接的に発展エネルギーを増幅させられますからネ。勝つことと、サッカーの質を発展ベクトル上に乗せることという、ある意味では背反するテーマに、なかなかバランス良く取り組んでいる反町監督に拍手をおくっていた湯浅です。これからの彼らの発展プロセスも面白い「学習ストーリー」。期待しましょう。

 



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