湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第1節(2004年8月14日、土曜日)

 

ビデオ観戦のインプレッションです・・(ヴィッセル対レッズ、2-3)

 

レビュー

 

 やっとサッカーらしくなった・・。後半早々にヴィッセルが同点ゴールを決めてからのゲーム展開を観ながら、そんなことを思っていました。それにしても、前半のヴィッセルの消極サッカーはいったい何だったんだろう??

 皆さんもご覧になったとおり、前半は、まさにレッズの独壇場というゲーム展開でした。全体的にレッズがゲームの流れを牛耳っているだけじゃなく、2点もリードを奪ってしまったんですからね。もちろんプレー内容からすれば、まさに順当なリード・・でも、ヴィッセルとは、そんなにチカラの差があるんだろうか・・とにかくヴィッセルの選手たちのプレー姿勢がネガティブの極みだと感じる・・そのことは、中盤守備のプレー姿勢に如実に現れている・・一体その背景は何なのだろう・・イルハンの突然のクラブ脱退・・エムボマの移籍・・そんなコトによって選手たちのマインドが集中し切れていない?!・・それともマネージメントに対する不信感がプレーマインドに現れた?!・・さて・・。

 とにかく、ホームであるにもかかわらず、ヴィッセル選手たちのプレーコンテンツに、まったくといっていいほど「やる気」を感じないのですよ。そのことは、もちろん中盤ディフェンスに如実に現れてくる。どうしようもないほど受け身で消極的なディフェンス姿勢。そんなだから、ポンポン!という軽快な音が聞こえてくるほど、レッズ選手たちが気持ちよくボールを動かせるのも道理です。もちろんそれは、次のボールなしのアクションに対する大いなるモティベーションになる。だからレッズのサッカーが、どんどんと「人とボールが活発に動くハイレベルサッカー」になっていく・・選手たちにとっても気持ちいいことこの上ないから、攻守にわたる次の彼らのプレーもどんどん活性化される・・それこそ「善循環の増幅プロセス」っちゅうわけです。

 レッズの側から観察したら、そんなポジティブな流れの背景に、先日の(イングランド・マンチェスターで行われた)ボーダーフォンカップで、ボカ・ジュニオールズにコテンコテンにやられたこともあったに違いない・・なんて思っている湯浅です(だからこそ、マンUとのゲームが落雷の危険性によってキャンセルされたことが残念で仕方ない・・これについてはこのコラムを参照してください)。ボカに、コテンコテンにやられたからこそ、局面プレーでは負けていなかったという自負も含め、自分たちのプレー内容と真剣に対峙し、そこから主体的に様々な発展ヒント&モティベーションを生み出していける・・そんなプロセスを経ることで、ネガティブな現象さえも、「やれば出来るはずだ!」という自信ソースにすることができる・・。どんなプロセスや結果になろうとも、「場」を、次の発展のためのリソース(学習機会)にできるかどうかに、マネージメントのウデが見えてくる・・?!

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 このセカンドステージ開幕ゲームを全体的に観察した場合、やはりレッズの順当勝ちということになるでしょう。別な見方をすれば、ヴィッセルに追いつかれたにもかかわらず、最後は内容と結果を一致させられたという事実が、レッズの成長を物語っているとすることもできそうです。

 特に長谷部。私はジッと彼のディフェンスを観察していました。啓太と同様に「ボールなしの汗かき」も効果的だし、競り合いでも泥臭く勝つことができるようになった・・クレバーな読みディフェンスもいい・・もちろん、たまにみせる気抜けプレーや「粘度ダウンプレー」はいただけないけれど・・(具体的には、ボールなしのマークにはつくけれど、最後は行かせてしまったり・・ボールウォッチャーになった瞬間に、マーク相手に行かれてしまったり等)・・。それでも、攻めに入ったときのハイレベルな実効プレーを加えたら、確実に主力を張ることができるまでに成長していると思います。酒井も大いにモティベートされていることでしょう。

 山田暢久。この試合では、攻守にわたってポジションなしとまで呼べそうなクリエイティブプレーを展開していました。もちろん基本的なアイデアは永井雄一郎とのタテのポジションチェンジなのですが、その神出鬼没な積極プレー姿勢は、インプレッシブそのものでした。基本的な能力は折り紙つきですからネ。とにかく、彼の場合は特に、どんな試合展開であったとしても(強い相手に押し込まれても、弱い相手を押し込む展開であったとしても!)、決してサボらず、常に全力でプレーしなければなりません。「出来る」選手が、イージーに、まあこの程度でいいや・・とか、周りの流れに隠れて「やらない」ことほど最低な行為はありませんからね。才能ある選手がクラブにいることは、監督・コーチにとっての大いなるチャレンジ・・。だから、山田を「覚醒」させたギドに拍手なのです。とにかく山田は、分かる人たちは常に正確に観察しているということを肝に銘じなければいけません。

 選手たちの「守備意識」が高揚していることを実感し、セカンドステージのレッズに対する期待が高まっていきます。理想型である「ポジションなしのサッカー」を実現するための絶対的なベースは、実効ある守備意識なのです。

 



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