湯浅健二の「J」ワンポイント


2004年J-リーグ・セカンドステージの各ラウンドレビュー


 

第3節(2004年8月29日、日曜日)

 

はじめて、内容でも結果でもジュビロを凌駕したレッズ・・(レッズ対ジュビロ、3-2)

 

レビュー

 

 アリャリャ・・一体ジュビロはどうしちゃったんだい?? 「あの」、攻守にわたって最高にダイナミックでクリエイティブな組織サッカーが奈落の底へ・・。それほどジュビロの出来が悪いのですよ。もちろんその背景には、レッズ守備ブロックが魅せつづける、最高の集中力で仕事を探しつづけるディフェンス姿勢もあるわけだけれど、それにしても、あまりにもジュビロ選手たちの闘う姿勢(意識レベル)に問題が・・。

 もちろんそのことは、如実に守備姿勢に現れてくる・・相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対するチェイス&チェックや次のマンマークが甘く、インターセプトを狙う猛禽類の眼も曇りっぱなし等々、とにかく「緩い」・・中盤でタックルを外されたら、そのまま足を止めてしまうのだから・・。

 そのことについて、ジュビロ桑原監督に聞いてみました。「このゲームは、リーグの歴史のなかではじめて、ジュビロが、レッズに対して内容で凌駕されて敗北を喫した試合だった・・桑原さんは、その背景要因をどのように考えているか・・」。それに対して、「人とボールの動きが悪いとか、バックアップの意識が十分ではないとか、いろいろ要因はあるけれど、まあ・・こんな日もあるかな・・ということですかネ」・・・・。

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 ここからは、ゲーム中にメモしたポイントを、ランダムにまとめておきます。

 開始5分にレッズサポーターから発信されたブーイング・・それは、ロングボールを競らず、次の守備にも入らなかったエメルソンに対するブーイングだと考えたい・・そんなサポーターの意識の高さこそがレッズ躍進の最も大きな原動力だった・・たしかにジュビロが展開するサッカーコンテンツは減退傾向にあるけれど、それも、レッズの守備がいいからと評価するのが正解だろう・・とにかくレッズ選手たちが展開する中盤ディフェンスは、「これぞ有機的なプレー連鎖の集合体」と言えるほど素晴らしい・・これでは、ジュビロがイメージする人とボールの動きを体現できないのも道理・・それともジュビロ選手たちは、それを体現しようとしていなかった・・?!

 15分にレッズが挙げた先制ゴールの場面・・山瀬が、左サイドにいる永井の足許へ鋭いグラウンダーパスを出す・・ピタリとトラップした永井が、逆サイドの決定的スペースへ抜け出すエメルソンへ向けた素早いスルーパスを送り込む・・それは、まさに美しい糸を引くといったセンチメーターパス・・それを、キッチリとゴールに結びつけたエメルソンは、まさに本物のゴールハンターといった「決定力」を秘めている・・やはりゴールを決めること(決定力)の背景は、心理・精神的な部分(いかにたくさん有意義な経験を積んできたか)に拠るということか・・

 さてレッズが一点リードした・・私は、ここからがレッズの課題・・ここで、受け身になったりせずに相手をコントロールできるかどうか・・たぶんダメだろう・・なんて思っていたのだけれど、その後の展開を観ていて「このレッズの発展プロセスは本物だ・・」と再認識させられた次第・・アクティブな守備をベースに全体的なゲームペースをコントロールしつづけるレッズ・・特にリードした後のプレー意識が素晴らしい・・要は「守備」の機能性が素晴らしいからこそ、全体的なペースを維持できているということ・・それにしても、ジュビロの低落状態は目に余る・・

 次のポイント・・鈴木啓太の「守備での抑え」は素晴らしい・・守備の起点として十二分に機能しているだけじゃなく、タテのポジションチェンジの演出家としても特筆モノの機能性を魅せている・・要は、トゥーリオとかアルパイが「上がり切れる」のも、彼に対する信頼感があるからこそというわけ・・また啓太の忠実&ダイナミックな起点ディフェンスがあるからこそ、長谷部の才能がより大きく活かされる・・啓太の「クリエイティブな汗かき」プレーに乾杯!・・とはいっても、彼にしても、酒井というライバルがいるからこそ、パフォーマンスをアップさせられる?!・・今年のレッズは、エメルソンも含め、全てのポジションでライバル関係が成立している・・レッズのマネージメントに対しても拍手・・かな?!

 とにかく、レッズ守備ブロックの機能性は素晴らしい(このことについては、ギドの発言と絡めて後述)・・特に中盤ディフェンスの機能性がいい・・それには、もちろん山瀬も永井も含まれる・・永井の守備意識も大きく発展している・・それがベースになっているからこそ攻撃でもより積極的に仕掛けていける・・やはり全てのベースは守備にあり・・

 アルパイが慣れてきた・・自信がついてきた・・「出来るぞ!」と確信をもてるからこそ、攻守にわたる自分主体のリスクチャレンジが増えていく・・やはりグラウンド上の自己主張コンテンツこそが調子のバロメーター・・

 後半のテーマは、もちろん「このハイペースを維持できるかどうか」・・選手全員の意識レベルが問われる・・後半のジュビロは、立ち上がりからペースアップしてくる・・前半のプレーコンテンツからすれば、そのペースアップの度合いは、ハーフタイムにおいて選手たちが十分な「刺激」を与えられたと確認できる・・とにかくそのサッカーは、やはりヤツらはチカラがあると再認識できるだけのコンテンツが満載されている・・このペースアップの背景は、言わずと知れた中盤ディフェンス・・ジュビロの中盤守備がうまく機能し、例によっての「有機的な連鎖ディフェンス」が出てくるようになったからこそ、ペースをアップされられた・・

 とはいっても、ちょっと押し込まれ気味になったレッズが「悪魔のサイクル」に陥ることはなかった・・ペースアップしたジュビロに対し、後半の立ち上がりはアタフタしていたのが、徐々に、カウンターも含め、しっかりと押し返せるようになった・・ただ、そこで作り出した何本もの決定的チャンスをゴールに結び付けられたなかったことは問題・・私は、そのプロセスを見ながら、隣に座るジャーナリスト仲間に「これは引き分けだな・・」と言っていた・・とはいっても、そこでレッズが魅せたサッカーからは、「解放された」レッズ選手たちの自信レベルが深化しつづけていると確信できる・・それには、イングランドでの「世界との体感」が活かされているに違いない・・とにかく規制サッカーではこうはいかなかったに違いない・・規制から解放されたレッズ・・

 山瀬も素晴らしい・・二列目の飛び出しという「忍者プレー」だけではなく、ドリブル勝負など、仕掛けのコアにもなれている・・

 ところでレッズの守備の機能性について、こんな現象にも、その成果が如実に見えていたと思う・・後半21分にレッズの永井が作り出した絶対的チャンスのシーン・・その直前、私は、レッズの守備ブロックが展開する素晴らしく効果的な組織ディフェンスに舌鼓を打っていた・・機能的なラインコントロールをベースにしたポジショニングバランシング・・そして「ブレイク」からのマンマークや、相手トラップの瞬間を狙うアタックなどなど、とにかく守備プレーの有機連鎖は見応え十分・・そんな、守備ブロックのディフェンスコンテンツが良かったからこそ、最前線で永井がボールを奪い返し、絶対的チャンスを作り出すという雰囲気が醸成していったに違いない・・まあこのシーンでは、エメルソンの効果的な追いかけ(チェイス&プレス)があったから、永井が次のパスをより明確にイメージし、その相手レシーバーへ詰めていくことが出来たのだけれど・・とにかく私は、このチャンスメイクは、チーム全体の高い守備意識がベースにあるマインドの高揚が演出したと思っていました・・

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 「でも私は、福西が退場になったとき、相手のモティベーションレベルが一段アップしたことを感じていました・・ちょっと警戒したのですよ・・」。試合後のインタビューで、ギドがそんなことを言っていました。サスガに「世界」を知っている。その直後に、ジュビロが、レッズにとっては「まさか」の同点ゴールを奪い取ったわけです。それにしてもビューティフルな組織チャンスメイクでした。それは、このゲーム最高のゴールだったのです。後半36分のことです。何せ、人とボールが、素早く、広く、クルクルと動きつづけ、左サイドから右サイドへ動いたかと思ったら、すぐにセンターゾーンへ戻り、最後は、まさにイメージ通りの「落とし(?!)」から西がピタリと決めた・・という素晴らしいゴールでした。

 その後のレッズの攻めにも成長傾向を感じてはいたのですが、ジュビロ守備ブロックもねばり強い・・。そして、「もう、これはダメかな・・」なんて思っていたロスタイムに、長谷部のスーパー(マラドーナ)決勝ゴールが決まったというわけです。二試合もつづけて「マラドーナゴール」を見せつけられてしまいました(前節では、永井のスーパードリブルゴール!)。

 チームプレイヤーとして、また時にはインディビデュアルプレイヤーとして、どんどんと発展をつづける長谷部。ヒーローインタビューでも、シリアスフェースから、しっかりと内容のあることを語っていました。彼の雰囲気からもまた、プロとしての本格感が高揚しつづけていると感じます。そしてそれが、レッズの全体的な「体質ベクトル」を決めていく・・。フムフム、これからが楽しみだな・・。

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 ところで、ギドの発言。「我々は、チャンスのある者は、誰でもシュートシーンに絡んでいくようなダイナミックサッカーを目指している・・皆さんも観られたとおり、この試合でも、相手がビックリするような選手が最前線までオーバーラップしていた・・もちろんその後のディフェンスが、うまく機能するという信頼があるからこそのオーバーラップだ・・」。

 とにかく、前へ、前へ・・チャンスのある者は誰でも前へ行っていい・・。選手全員のプレーイメージを「解放」したギド。もちろんその背景に、選手たちに対する、ギリギリの刺激を伴った「守備意識の活性化マネージメント」があったことは言うまでもありません。今度は、レッズの守備をメインに観戦しましょう。入場料にオツリがきまっせ・・。

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 これからテレビ埼玉のレッズナビがはじまります。ということで今日はここまで。誤字・脱字・乱筆・乱文・・・失礼。でも最後にもうイッパツ・・

 このコラムのタイトルを「はじめて、内容でも結果でもジュビロを凌駕したレッズ・・」としたわけですが、それに対してギドが(私が投げかけた質問にその内容が入っていたから)、「我々は、ファーストステージでも内容で優っていた・・レッドカードさえ出なければ・・」という押し出しの強い発言をしていました。頼もしい・・。レッズとともに、ギドも、監督として発展をつづけているようです。

 



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