湯浅健二の「J」ワンポイント


2005年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第12節(2005年5月15日、日曜日)

 

最高のテンションマッチを勝ち切ったレッズ・・(マリノス対レッズ、0-1)

 

レビュー
 
 あの、足の止まった減退サッカーからよく立ち直ったな・・。ゲームを観ながら、そんなことを思っていました。前節のジェフ戦で、内容的にやられまくったレッズのことです。この試合では永井雄一郎はベンチスタート。また内舘を守備的ハーフに入れ(山瀬功治のマークを主に担当)、才気あふれる長谷部は、限りない自由を与えられる二列目センターへ上げるという工夫を凝らした布陣。さて・・。

 ゲーム展開は、大雑把にいって「こんな」感じだったですかネ。立ち上がりのサッカー内容ではまずレッズが主導権を握る・・でも、例によって堅牢なマリノス守備ブロックに対してゴールチャンスを作り出すというところまではいけない・・その後は、計画通りに(?!)マリノスが盛り返し、こちらは何度か決定機まで作り出してしまう(二度のバー直撃シュートやコーナーキックからのチャンス)・・マリノスのサッカー内容に一日の長があると体感させられた前半・・ただ後半はレッズのサッカー内容も改善され、今度は彼らが実効ある決定機を何度も作り出すことになる・・特にエメルソンと長谷部が絡んだカウンターチャンスは特筆モノの迫力だった・・決勝ゴールの後は、もちろんマリノスが全力で仕掛けていく・・それをギリギリのところではね返すレッズ・・この最後の時間帯でレッズが魅せたディフェンスコンテンツこそが、この試合での最重要テーマだったかもしれない・・様子見になることなく、しっかりと主体的に「守備での仕事を探しつづけた」レッズ選手たち・・守備が安定してきたレッズ・・特に、交代出場した酒井のガンバリが目立っていたという印象が残る・・ってな感じですかネ。

 このゲームは、両チームが素晴らしい集中力を魅せつづけたハイレベルな勝負マッチということになりました。観ている方にも、レベルを超えたテンションがヒシヒシと伝わってくる。緊張感150パーセントといったガップリ四つの展開。そんななかでマリノスがペースを握りはじめた展開に、やはり彼らの方が、チャンスメイクプロセスのコンテンツで一日の長があるな・・なんて思っていましたよ。

 そのことをどのように表現したものか・・。要は、マリノスの方が、それぞれのゾーンでポイントになれる選手(キープやタメ、ドリブル突破などの起点プレーができる選手)をより多く抱えているということなんでしょうネ。両サイドの田中隼磨とドゥトラ、センターゾーンの「背骨」として機能する上野と山瀬功治、そして最前線のアン・ジョンファン・・。そんな強者たちが、組織プレーと個人勝負をバランスよくイメージしているのだから危険この上ない。

 とはいっても、マリノスの強さのバックボーンは何といってもディフェンスにあります。スリーバック、両サイドバック、ダブル守備的ハーフで構成する強力な守備ブロック。それだけではなく、例によって山瀬功治も積極的に守備参加してきますしね。彼らは、タマ際での個の勝負に強いだけではなく、守備のチーム戦術でも秀でています。この試合でも、田中達也とエメルソンというレッズの「個の才能」を徹底的に潰すことをベースに、後方からのサポートの動きもクレバーにコントロールしていました。確かに強い。

 そんなマリノス守備ブロックに対し、前半はいいところがなかったレッズの攻撃陣ですが、後半に入ってからは、徐々に実効レベルが高揚しはじめたと感じました。もちろんそれに応じてチャンス内容も大きく改善していくのは道理。私はそのもっとも大きな背景要因について、長谷部がゲームのなかで、徐々に「二列目センターのコツ」を会得し、それを自分なりに応用できるようなったから・・と考えていました。この試合で長谷部が魅せたプレー内容は、なかなかのモノだったのです。

 守備からゲームに入っていくというプレー姿勢はもちろんのこと(それこそがタテのポジションチェンジの演出家になるための絶対的ベース!)、ボールのないところでしっかりと動きまわることで攻撃ブロックの仕掛けダイナミズムを活性化するだけではなく、タテパスを受ける効果的なステーションにもなりつづける。またボールを持っても、シンプルパスプレーとドリブル勝負がなかなか高質なバランスを魅せる。長谷部は、守備もしっかりとできる(自ら仕事を探せる)からこそ、実効レベルの高いチャンスメイカーにもなれるのですよ。さてこれで、長谷部の二列目センターという新たな分析テーマが出てきました。いまから楽しみです。

 次は、ベンチスタートということになった永井雄一郎。まったく腐ることなく、後半22分に田中達也との交代で登場し(エメとのツートップの一角)、守備でも全力ダッシュでボール奪取勝負シーンに絡んでいくなど、攻守にわたって、なかなか積極的なパフォーマンスを魅せてくれましたよ。私は彼に期待しています。だからこそ、もっと、もっとと、厳しく要求したい。とにかく前節のようなプレー内容(プレーイメージ)では、あのスーパーな才能が潰れるだけですからネ。

 ゲーム自体はどちらに転んでもおかしくない拮抗したものでした。互いに最高の集中力で最高のゲームを魅せました。だからこそ、レッズにとってこの一勝はものすごく大きな意義があると思っていた湯浅です。その意義が何なのかは、もちろん今この場で言葉で表現しようななんて思いません。とにかく、「乞うご期待」なのです。

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 今日の最後は、ギド・ブッフヴァルトの一言。『チャンスがあれば誰でも前へ仕掛けて行っていいのがレッズのサッカー』。なかなか心地よい響きじゃありませんか。その言葉の底流には、リスクにチャレンジしなければ決して発展など望めない・・という普遍的概念があります。それは、昨日のオシムさんの言葉と限りなく同義ですよね。だからこそ、ジェフにしてもレッズにしても、選手たちの、走りの量と質を高めることを基盤にした主体的な守備意識こそが決定的に重要なファクターということになるわけです。

 



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