湯浅健二の「J」ワンポイント


2005年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第17節(2005年7月18日、月曜日)

 

レッズのサッカーコンセプトは高みで安定している・・(レッズ対サンフレッチェ、2-0)

 

レビュー
 
 さてレッズ。エメルソンの移籍については、(グラウンド上の現象のみを観察・分析・評価する湯浅だから)まったく知る由もありませんでした。彼が移っていったのは、カタールの首都ドーハをホームにするアル・サッド・クラブ。名将、ボラ・ミルティノビッチに率いられ、アジアチャンピオンを狙っている(年末に日本で開催される世界クラブ選手権への出場を狙っている)中東の強豪クラブです。

 それにしても、エメルソン移籍プロセスの「見え方」は、ちょっとスッキリしないモノになってしまいましたね。事後的にレッズマネージメントから事情説明はあったけれど、ナビスコカップにも出場せずにブラジルへ帰国してしまったエメルソンの再来日も、家族の問題で遅れているという報道があったと思ったら、次の瞬間には移籍してしまったという発表ですからね。スッキリしないから、どうしてもエメルソンのイメージは悪化してしまう。プロでは移籍は当たり前のことだし、プロセスがある程度スッキリと見えていれば、新天地でのエメの活躍に対して心からのエールを送ることもできたのに・・。あれほどレッズに貢献してくれた選手だからこそ、ちょっと残念。

 レッズマネージメントは、もっとうまくコトを運べなかったのだろうか・・。エメルソンのイメージを守り(それはとりもなおさずレッズファンの心理アイデンティティーのためでもある!)、周りが出来る限り高いレベルで納得できるようにプロセスを上手くコントロール出来なかったのだろうか・・。事後説明によれば、たしかにエメルソンにも「いい加減」なところはあったらしいけれど、全体的には、プロの当たり前のビジネスデベロップメントだったように思えるからこそ残念で仕方ありませんでした。まあ私は、あちらでのエメルソンの活躍を願っていますけれどネ・・。

 それにしても今シーズンのレッズは、山瀬功治を失ったことにはじまり、アルパイがリーグ立ち上がりのいくつかのゲームを壊して結局は移籍、そして今度はエメルソンと、主力をどんどん失っています。とはいっても、このゲームで証明したように、彼らの「サッカーコンセプト」は活きつづけている。前節のレイソル戦での出来がひどかったと聞いていたから(何人かのジャーナリストは、レッズは壊れかけているとまで言っていた)、ちょっと安心していた湯浅でした。

 このゲームでのレッズは、例によっての「本物の守備意識」をベースに、素晴らしくダイナミックなブレッシングサッカーを魅せました。「完敗です・・」。試合後のサンフレッチェ小野監督が、開口一番そんなことを言っていましたが、その「完敗の意味」は、もちろんサッカー内容のこと。小野さんは、「自分たちが意図するボールの動きを演出できなかった・・ボールの動かし方が弱気になってしまった・・」という表現をつかいました。要は、パサーにしても、パスレシーバーにしても、リスクへチャレンジしていくマインドを活性化できなかったということです。そして、その現象のカウンターパラメーター(反作用要素)に、素晴らしく機能したレッズのディフェンスがあったというわけです。そのことを小野さんは言っていた・・。まあ、そういうことです。

 またレッズの攻撃にしても、最初はモタついていたけれど、徐々に組織パスプレーと個人勝負プレーが高次元のバランスを魅せはじめ、どんどんと相手守備ブロックのウラを突いたシュートチャンスを演出しはじめるのですよ。やはり「個のドリブル勝負で優れた選手」を抱えているチームが、組織プレーマインドも高揚させられたら「本物の強さ」になるということだよネ。

 そんな高次元にバランスしたチームに、来月からは、ドイツ・ブンデスリーガの雄レーバークーゼンで活躍した、これまた「組織マインドと個人勝負マインドが素晴らしくバランス」したポンテも加わりますからネ(来月からプレー解禁になる)。もちろんポンテの守備意識も、本場のブンデスリーガ仕込み。楽しみじゃありませんか。彼については、2003年に「スポナビ」で書いたレーバークーゼンに関するコラムで触れました。そのコラムについては「こちら」を参照アレ。

---------------------

 実はネ、前節のレイソル戦も、後でビデオで確認していたんですよ。選手たちのスピリチュアルエネルギーが地に落ちるなど、本当にショッキングなサッカー内容だったよネ。正直いって、私も「ちょっと壊れはじめたかな・・?!」なんて感じたものでした。もちろん私は、その背景に、アルパイの放出やエメルソンの「見えにくい移籍プロセス」があったと確信していました。選手たちにしても、そのプロセス(エメ自身に関する部分だけではなく、そこにかかわる全方位のプロセス!!)によって、何らかの「重たい思い」をかかえざるを得なかったということです。

 とはいっても、そんな重苦しい雰囲気を数日で払拭し、選手たちのマインドを吹っ切らせたのだから、それは確実にベンチの功績。素晴らしい心理マネージメントだったと思います。そこで具体的に何があったのか・・。グラウンド上の現象だけを観察し、分析して評価する・・なんて、カッコいいこと言っている湯浅ですが、本当は、その背景にひそむニュアンスまでも確実に把握したいのですよ。

 以前は、友人が監督だったブンデスリーガの現場や読売サッカークラブ時代において何度も体感した「チームの動的な均衡(Dynamic Equilibrium)現象」によって(その刺激によって)自分が発展していることを実感できていましたからネ。レッズ選手たちのマインドの高揚を感じ、ちょっとこのところ「現場のスピリチュアルエネルギー揺動」を体感することが必要になっているのかもしれない・・なんて思っていた湯浅でした。

 



[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]