湯浅健二の「J」ワンポイント


2005年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第18節(2005年7月23日、土曜日)

 

最後の時間帯でのディフェンスには殊の外重要な価値がある・・(エスパルス対レッズ、0-1)

 

レビュー
 
 土曜日の朝。目を覚まして起きあがろうとしたのだけれど、身体が重い。スポーツ後の爽やかな疲れではなく、自分ではどうしようもない外的要因による「だるさ」がベースの鈍重な感覚。鼻水が流れ出すし、咳も止まらない。ホントに体調管理がなっていない湯浅なのですよ。風邪とはあまり縁がないハズなんだけれど、この日は朝から38度を大きく超える熱が出てしまって・・。普通だったら、大したことないゾと、予定のゲームを観戦しに行くのだろうけれど、先週はちょっとハードスケジュールだったことで疲れもたまっているから、仕方なく自宅でテレビ観戦することにした次第。本当は、久しぶりにイビチャ・オシムさんのサッカーを観てみたかったのですがね・・。

 聞くところによると、フォーバックを試しているということだし、とにかくイビチャさんの変化が気になっていたのですよ。フォーバックの機能性が本物かどうかを判断する基準としては、守備では、相手の後方からの飛び出しフリーランニングを確実に抑えられているかどうか・・また攻撃では、次の守備でのバランスが崩れることなく、いかに両サイドのタテのポジションチェンジを活性化させられているか(サイドのオーバーラップの活性化度!)・・といった視点があります。

 より攻撃的なチーム戦術であるフォーバック。イビチャさんはどのように料理するのかな・・なんて興味津々だったわけですよ。でも結局は、現場での観察は次の機会まで待たなければならなくなってしまったという体たらく。ちなみに、このゲームは、いま私がいる場所では観られないから、結局「BS」のエスパルス対レッズを観戦ということになってしまいました。本当は、イビチャ・ジェフを現場観戦し、帰宅してからエスパルス対レッズ戦に舌鼓を打つつもりだったのに・・。

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 そんな、ちょっと落胆する心理背景で観はじめたエスパルス対レッズだったけれど、なかなか面白い展開に、熱も忘れてどんどん引き込まれていきました。エスパルスが、韓国代表のチェ・テウクとチョ・ジェジンをコアに、ガンガン攻め上がる・・負けじとレッズも鋭い仕掛けを繰り出す・・といったダイナミックなサッカー展開になったのですよ。

 レッズでは、この試合においても、チームのなかでもっとも自由度が高いポジション(=二列目チャンスメイカー)を与えられた長谷部が、相手を背中にしてパスを受けることに慣れはじめたと感じました。でもネ、前線からのチェイス&チェックアクションを活性化すれば、もっとも良いカタチでパスを受けられるのに・・なんてことも感じていました。要は、ボール奪取プロセスに積極的に絡むことで、次の仕掛けパスを、相手マークが薄い状態で受けることができるということです。もちろん、そのことについてチーム内でのイメージが確立していればのハナシだけれどネ。

 レッズについては、スリーバックだし、鈴木啓太と内舘秀樹もいるんだから、とにかく両サイドがもっと積極的に攻め上がらなければ崩れない・・なんていう不満がつのっていました。前半、田中達也からの素晴らしい展開パスを起点に右サイドを切り裂いた平川のオーバーラップのような攻めをもっと繰り出さなければいけないのですよ。

 ところでこの絶対的なチャンス。最初の決定的展開パスだけではなく最後のシュートも田中達也でした。達也は、この試合での最前線での危険度は群を抜いていました。日本代表初選出が大いなるモティベーションになったということ・・?! いやこの試合だけではなく、このところの田中のプレーには、最前線からの積極ディフェンスにせよ(次でボールを奪わせるというクレバーな追い込み守備も特筆!)、ファイナル仕掛け段階でのシンプルパスプレーにせよ、はたまた、決定的な抜け出しフリーランニングやココゾ!のドリブル勝負にせよ、とにかくキレがあります。

 「代表では120パーセントのプレーする(その意気込みで積極プレーを展開する!)・・とにかく代表チームに定着することを明確にイメージしてチャレンジしつづける(出来る限りの自己主張をする!)・・」といった頼もしい発言も、彼の成長の跡を如実に感じさせてくれました。その発言の背景にあるインテリジェンスこそが良い選手になるための唯一のベースですからネ。あっと・・。この試合の後のインタビューで、「決めるところを決められずチームメイトに迷惑をかけてしまった・・」という発言(そんな高い意識)もよかったよね。たしかに、あのチャンスを決められなかったプレーは反省に値するし、自分自身のイメージトレーニングの糧にもなる・・。

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 さてこの試合でのハイライト。もちろんそれは、1-0とリードされたエスパルスが怒濤の攻撃を仕掛けてきた最後の時間帯におけるレッズ守備ブロックの対応です。立派なものでしたよ。とにかくマークが安易にズレることがない。エスパルスは、そのほとんどをサイドから仕掛けてきたわけだけれど、そんな状況にもかかわらず、レッズ選手たちは、落ち着いて(ボールウォッチャーになることなく)しっかりと相手をマークしつづけていました。それは簡単なことじゃない。それについては、サッカー批評で発表した文章を参照してください。

 もちろん、この「しっかりしたマーク」という表現の背景にある実質的な意味は、常に相手に身体をあずけられていたということです。それがあったからこそ、エスパルス選手たちが効果的な最終勝負を繰り出せなかった。また、マークがズレた後の「修正」にも余裕がありました。どこかのスペースで、エスパルス選手がフリーでボールを持つという状況でも、慌てて「多すぎる人数」がそこへ急行するという愚を犯すことなく、常にバランスをとってチェックアクションを展開していました。そんなバラシングのリーダーが鈴木啓太。最後方のリーダであるトゥーリオと、なかなかのリーダーシップ支柱になっていました。

 ちょっとアタマがクラクラする・・寒気と関節痛が・・鼻水や咳も止まらない・・。ということでもう寝ます。

 



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