湯浅健二の「J」ワンポイント


2005年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第24節(2005年9月17日、土曜日)

 

ヴェルディ対フロンターレ(1-2)と、レイソル対ガンバ(2-1)を短くレポート

 

レビュー
 
 なんだよ、あの試合・・。そんなフラストレーションを抱えながら柏サッカー場に向かって単車をスタートさせた湯浅だったのですが、そこに待ち構えていたのは、連休初日の大渋滞でした。いやホント、日本中のすべてのクルマが行楽に出掛けたようなすごい「トラフィック・ジャム」。何せ、調布で首都高速に乗った瞬間からのストップ&ゴーですからね。もちろんこちらは、クルマの間をすり抜けていくのですが、気を遣う、気を遣う。結局、柏に到着するまで1時間半を要してしまいました。いや、まいった・・。

 さて、冒頭のフラストレーションですが、要は、こういうことです。私は、戸田和幸を中盤の底に定着させるだけではなく、最終ラインをスリーバックにすることで守備ブロックを安定させるとか、上手いだけのボールプレイヤーを外すことで人とボールの動きを活性化させるとか、グラウンドを広く使ったサイドからの仕掛けもイメージさせるとか、ヴェルディの新監督バドンさんが手がけているチーム建て直しの方向性を支持しているのですよ。実際、前節までのヴェルディは、リーグでもトップクラスのサッカー内容を魅せていましたからね。でも、三連敗となったこの試合では・・。

 私は、前節までの二連敗(対ガンバ、対ジェフ)については、ツキに見放されただけで、サッカー内容自体はなかなかのものだったと高く評価していました。だから、負けた後でも、さてこれからだな・・なんていう期待が膨らんだものだったのですよ。それに対してこのゲームは・・。まさに、内容が伴わない「完敗」じゃありませんか。それがフラストレーションの源だったのです。

 要は、まったくサイドから仕掛けていかず、どんどんと中央ゾーンに絞り込んでいってしまうという悪いクセが出たのですよ。相馬にしても山田にしても、ボールを持っても中央へ切れ込んでいってしまうというシーンの方が多い・・またジウにしても、前節までは積極的にサイドに開いてシンプルなタイミングでクロスを上げることでチャンスを作り出していたのに、この試合では、まったくそんなシーンが出てこなかった・・等々。

 もちろんその背景には、フロンターレが展開した、人数をかけた忠実な組織ディフェンスもありました。その守備プレーはとにかく忠実。ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対するチェイス&チェックを基盤に、次、その次のヴェルディ選手たちを完全に掌握してしまう。ボールがないところでフリーになる(スペースに入り込む)ヴェルディ選手など、まさに皆無なのですよ。そんな忠実な守備プレーのなかでも、常にタテのスペースをケア(カバーリング)するなど、クロスを入れさせないようなディフェンスをしていたのです。

 どうしても、うまく仕掛けの起点(前線でのフリーのボールホルダー)を演出できないヴェルディ。そして自らのフラストレーションをぶつけるかのようなゴリ押しのドリブル勝負をくり返す・・。これじゃ、フロンターレの思うつぼじゃありませんか。

 とにかくフロンターレはよくトレーニングされています。J2時代から培った「勝ちパターン(ゲームの流れに関する)共通イメージの深化」ってなことですかね。我慢に我慢を重ねて相手の(物理的&心理的)ミスを待ち、良いカタチでボールを奪い返した次の瞬間から仕掛けていく蜂の一刺し・・。そこでは、前線の三人(ジュニーニョ、我那覇、マルクス)に、必ず両サイド(アウグストか長橋)のどちらかが効果的に参加していくのですよ。まさに、全員が共通の「ゲームフロー・イメージ」を持っているフロンターレといったところです。見事な勝利でした。

 ヴェルディは、この試合内容を学習機会にしなければいけません。特にサイドからの「シンプルな仕掛け」の重要性を反芻することが大事です。この試合でも、2-1とリードされた最後の時間帯に魅せた危険な仕掛けのベースになったのは、まさしく、「相手をちょっと外してからシンプルなタイミングで上げられた鋭い(またはロビングの)クロスだったのですからね。とにかくヴェルディは、楽して儲けよう・・というマインド(組織体質!?)を改めることが先決なのかもしれません。もちろんバドンさんによって良くなってはいるのだろうけれど、しっかりとマネージしていなければ、簡単に元の木阿弥になってしまいますからね。

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 さて次はレイソル対ガンバ。ものすごくエキサイティングな試合になりました。でも私は、前半13分にガンバ大黒が先制ゴールを入れた直後にスタジアムに到着したという体たらくだったのですよ。クソッ!!

 試合後の記者会見で、苦杯を喫した西野監督が、「レイソルは、前節のチームとは見違えるようなチームになった・・これほど闘う姿勢を前面に押し出すプレーをするなど想像もしていなかった・・たった一人によって(ラモスのこと!?・・彼との対談記事はコチラ・・)、こんなにもチームが変わるものなのか・・」なんてコトを言っていましたよ。まさにそのとおり。この試合でのレイソルは、まさに人が変わったような気合いの入ったプレーを魅せつづけてくれました。もちろん守備において・・。

 目立っていたのは、スリーバックのセンターに入った波戸。足が速いこともあるのだろうけれど、とにかく、素晴らしいカバーリング(相手シュートに対する必殺タックル!)を何度も魅せてくれましたよ。そのプレーは、まさにバレージ。普通のレイソルの雰囲気だったら、確実にボールウォッチャーになってしまうところを、最後の最後までアクションをつづけたことで間に合ったのです。

 この日のレイソルは、素晴らしい集中力を最後まで維持しつづけました。感動モノでしたよ。何せ、何度抜かれても、何度外されても、幾重ものボール奪取アタック・ネット(カバーリングの網)を素早く修正し、再び確実に整備してしまうのですからね。「前からのチェックが厳しく、簡単にはボックスに入っていけなかった・・」と、西野監督もシャッポを脱いでいた・・。

 素晴らしいディフェンスを魅せたレイソル。それも、抜群の組織プレーと個人勝負センスの持ち主であるブラジルコンビ、アラウージョとフェルナンジーニョ、それに、常に決定的スペースへの飛び出しタイミングを狙いつづける突貫小僧、大黒を擁する強力なガンバ攻撃陣を相手にしてですからね。まあ、大したものだ。久しぶりに、守備でもホンモノの感動を味わった湯浅でした。

 



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