湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2005年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第28節(2005年10月22日、土曜日)
- これからも解放されたチャレンジが期待できそうなレッズ・・(アルディージャ対レッズ、1-3)
- レビュー
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- アルディージャは、本当によく戦った・・着実なマークの受け渡しや、忠実なボールがないところでのマーキングが特徴のねばり強い組織ディフェンスと、前半に魅せたシンプルな人とボールの動きをベースにした仕掛けには、よくトレーニングされた首尾一貫性が明確に感じられた・・三浦さんも良い仕事をしている・・まあこのところツキに見放されているけれど、(アルディージャにとって)良い流れの時間帯で彼らが魅せた優れたサッカーを一試合を通して継続できれば、また確実に浮上してくるに違いない・・そんなキャパの高さを感じさせる立派なサッカーを展開したアルディージャだったけれど、実力を出し切らなければ決して勝利はないという厳然たる事実をこれ以上ないという叩きつけられるような「刺激」とともに再認識させられたレッズが相手だったから厳しかっただろうな・・眠い目をこすりながら、そんなことを考えていましたよ。昨日の午後にアメリカ方面から帰国したのですが、「そちら」でも数日滞在したから、ヨーロッパ時間とアメリカ時間がミックスしたマルチ時差ボケ状態での観戦ということになってしまった・・。
この試合ですが、たしかに最後は2点差で逃げ切れたけれど、レッズにとってそれは、決して楽勝なんてものじゃありませんでした。特に、前半での1-1となってからの攻めあぐみは、これまでに何度も繰り返された「悪いゲーム展開」を鮮烈に彷彿させてくれましたよ。足が止まってしまう典型的な心理的な悪魔のサイクル・・その当時のフラストレーションを思い出しながら気分が悪くなったものです・・チーム全体の倦怠の流れに隠れるようにサボったりする・・全力でプレーできないんだったら(十分なセルフモティベーション能力=自己動機付け能力=を持ち合わせていないのだったら)プロ失格だ・・なんていう怒りがこみ上げつづけていたことばかりを思い出す・・。
その時間帯のレッズは、アルディージャ守備ブロックの「ポジショニングバランス」がうまく機能していたこともあって、仕掛けの起点をうまく作り出せないという構図から抜け出せなくなっていました・・というか、その悪い展開をブレイクスルーしようとする意志が感じられなかったと言った方が正しい表現かも。リスクにチャレンジせず無為に足許パスをつなぐだけ・・パスレシーブの動き(フリーランニング)も単発で、強固な意志が満載された三人目の動きなど皆無・・全員がアナタ任せというプレー姿勢・・パスをした選手も立ち止まって無為な様子見状態・・パス&ムーブがまったく出てこないという現象こそ、誰もが人任せで責任転嫁していることの証明・・やっぱり、強烈な刺激で仲間を鼓舞できるリーダーがいないということか・・。立ち上がりは攻守にわたって素晴らしく積極的なプレーでチームを引っ張っていた「二列目の山田暢久」も、徐々に輝きが失われていったし、ポンテも、例によってガチガチにマークされて身動きが取れない状況。彼の場合は、とにかくもっと動き回って、もっと頻繁にボールに触らなければいけません。それでなければ、あれ程の天才が生ける屍と化してしまう。そのためには、もっと積極的なディフェンスからプレーに入っていかなければ・・。守備こそが全てのスタートラインなのです。「ロビー!・・レーバークーゼン時代の全盛プレーを魅せてくれよ!!」。スタンドの皆さんも、『ポンテ!! ラウフェン!!』なんて、声を合わせて彼を鼓舞しましょう。ちなみにそれは、『ポンテ! もっと走れ!!』っちゅう意味です。
とにかく、そんな膠着状態でこそ、リスクチャレンジのタテパスとか、前方のポンテたちが主導するタテのポジションチェンジなどで相手を揺さぶらなければならないのに、そんな「攻撃の変化」を演出しようとする意志さえも感じられないっていう体たらくだったのですよ。
そんな悪い流れが(悪魔のサイクルが)、後半には断ち切られました。だからこそ、そこに、『全力でリスクにチャレンジしつづけなければ(アリバイプレーを自ら否定するようなプレー姿勢がなければ)決して勝利の美酒はない・・自分たちの実力には、他のチームと比べてもそんなに大きなアドバンテージがあるわけじゃない・・相手を甘くみたことで(また相手に守備を固められたことで)これまでに何度も悪魔のサイクルに陥り、そこから抜け出せずに苦い思いをしてきたじゃないか・・』といった、これまで学習してきたことが「少しは」活かされていると感じていた湯浅だったというわけです。
ここからは、何人かの選手のプレーコンテンツにスポットをあてましょう。まず、何といっても、攻守の目的を達成するうえでの実効レベルが格段にアップした永井雄一郎。昨シーズン何度もトレーニングさせられた「右サイドバック」での先発でした。「永井をそこで使う意図を聞かせて欲しい・・」。そんな私の質問に、ギド・ブッフヴァルトが簡潔に答えます。「まず、サイドにいることによって彼のドリブル突破能力がより効果的に活かされる・・また、彼は優れたパスセンスも持ち合わせているわけで、それを効果的に活かすにもこのポジションが有効・・また彼がサイドに開くことで(相手守備が永井を意識することで)センターにスペースもできる・・」。ギドは、あくまでもポジティブに、前向きに答えます。ナルホド・・。でもまあ、私に言わせたら、まずサイドバックだから、しっかりと守備もやらなければならない・・これまでのようないい加減にディフェンスをするわけにはいかない・・それに、タッチラインでスペースが制限されることもあるから、変なボールのこねくり回しも出来ない・・そのことで、勝負するところとパス展開するプレーのメリハリが改善される・・そしてギドが言うように、そのポジションだからこそ、永井雄一郎の才能がより頻度高く、実効あるカタチで発揮される・・っちゅうことですね。
もちろん永井は、上下動や、攻守にわたる全力ダッシュの頻度、それにリスクにチャレンジしていく積極姿勢をもっともっとアップさせなければならないけれど、今日の彼のプレーからは、そんなサッカー選手としての基盤となるプレーコンテンツでも発展すると期待させてくれます。これまでは、いくら守備やボールなしのプレーをサボッても目立たないからこそ、常に自分をギリギリまで追い込まなければ決して発展することができないという性格の最前線プレイヤーでしたからネ。そんなこともあって、このところ、ちょっと彼のプレーイメージが寸詰まりになってしまったと感じていたのですよ。だからこそ、サイドバックというポジション(マルチな役割)が、ものすごく効果的だと実感し、彼の発展に対する楽しみが倍増したというわけです。ガンバレ、永井雄一郎!
スミマセン、眠気が、耐えられるレベルを超えはじめた(何せこの二日間、数時間しか寝てない)・・。永井雄一郎以外にも、最前線から忠実に、ダイナミックに、そしてクレバーに、実効ある爆発ディフェンスプレーを展開するマリッチが(組織タイプの実効ストライカーが)素晴らしい個の勝負からゴールを叩き込んだこと、また、二列目でも自分主体で攻守にわたるダイナミズムを大幅に高揚させはじめた長谷部(積極守備からプレーに入る長谷部・・タテのポジションチェンジの演出家としての長谷部・・期待できそうじゃありませんか)など、特筆プレイヤーはいたけれど・・。とにかくこれからも、解放されたチャレンジをつづけて欲しいと願って止まない湯浅なのです。ではオヤスミナサイ・・。
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