湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2005年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第31節(2005年11月20日、日曜日)
- 脅威と機会は表裏一体・・(レッズ対ヴェルディ、4-1)
- レビュー
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- この試合については、短く、短く、まとめることにします。まず何といっても、ゲーム立ち上がり早々にレッズが作り出した決定的チャンスから・・。右サイド岡野からの素晴らしいクロスボールが、ピタリとマリッチ(でしたよネ!?)に合わせられたシーン。オフサイドという判定だったけれど、それは、チーム全体に、チャンスの芽という視点で明確なイメージを与えるに十分なパワーを備えたモノでした。
この試合では、仕掛けのメインキャストである長谷部と永井が出場停止です。まあ、だからこそ、(前述したように)自由でフッ切れた(新しいタイプの!?)仕掛けが出てきたとも言える!? 仕掛けプロセスのイメージが、長谷部と永井がいないことで制限されるのではなく、逆に解放され、だからこそ、右サイドの岡野という、相手にとってあまり馴染みのないカードが威力を発揮したと思っている湯浅なのですよ。もちろん、その「解放」の背景には、例によって、ギド・ブッフヴァルト監督の攻撃的なリーディング姿勢があることは言うまでもありません。誰でも、チャンスがある者は「攻めに参加」しなければならない・・その攻撃的でダイナミックなサッカーを支えるのが、一人の例外もないホンモノの守備意識だ・・。
それにしても先制ゴールは見事なコンビネーションでした。最後にゴールを決めたロブソン・ポンテは、岡野とマリッチのワンツーがスタートした時点で、タテのスペースへ全力ダッシュを仕掛けていました。最初は、マリッチからのリターンパスをイメージしていたけれど、岡野の突進とリターンパスのコースを見極めた次の瞬間には、すぐに最終勝負イメージを切り替え、今度はヴェルディゴールへと全力ダッシュで抜け出していきましたからね。この試合では2ゴールを挙げたロブソン・ポンテ。動きの「量と質」の高揚も含め、どんどん良くなっています。攻守にわたる「自己主張」が前面に押し出されるようになってきた・・といってもいいでしょう。選手にとっては、攻守の目的達成に対する自身の貢献を体感することほど勇気づけられる材料(モティベーション・リソース!)はありません。それこそがアイデンティティー(誇り)なのです。
解放された仕掛けイメージ・・。そんなチームの雰囲気は、山田暢久にもポジティブに作用していたと感じました。前半では、左サイドを長いドリブルで切り裂くなど、普段とはひと味もふた味も違った仕掛けコンテンツを魅せてくれたしね。そんな山田のプレーでは、何といっても三点目のドリブルがハイライトでした。いつもは長谷部や永井といったパスターゲットがいるけれど、この試合では、とにかくスタートしたら「自分自身」で完結しなければならないという状況ですからね、それが殊の外ポジティブに作用し、彼の仕掛けマインドをフッ切らせたと思うのですよ。パスターゲット(逃げ場)がある場合、どうしても仕掛けドリブルが中途半端になりがちですからね。それに対し、前半での切り裂きドリブルや、三点目をアシストするまでのスペースをつなぐ「怒濤ドリブル」には、これまでとはまったく違ったエネルギーを感じたものです。あっと・・以前にも、そんなエネルギーを感じたことは何度もあったよネ。ということは、山田は、安全策に「逃げ込む」ようになったということなのか・・??
とにかく、いつもの才能プレイヤーが欠けたことが、「ポジティブな解放」というプラスの展開につながったと思っている湯浅でした。脅威と機会は表裏一体・・ということなのです。ところで、前回のコラムの最後に、「これから優勝争いと降格リーグはもっとエキサイティングな展開になる・・何せまだ4ゲームも残っているのだから・・そこでは追い掛ける方が有利・・最後は、自分主体で自由にプレーせざるを得ないサッカーだからこそ、守りに入った方は、パフォーマンスダウンという心理的な罠にはまってしまう危険と対峙することになる・・」なんてことを書いたわけですが、まさにそんなエキサイティングな展開になりそうな予感がするじゃありませんか。優れたサッカーを展開できるかどうかは、攻守にわたるリスクチャレンジというポジティブなプレー姿勢を、戦術的なサポート&バックアップによって、いかに高みで安定させるのかというテーマを取り扱うコーチの「姿勢」に掛かっている・・そこでこそコーチの本当のウデが試される・・ってなことなのですよ。
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