湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2005年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第33節(2005年11月26日、土曜日)
- あ〜、ビックリした・・ホントに「こんなこと」になってしまった・・(レッズ対ジュビロ、1-0)
- レビュー
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- 「すごいな〜・・レッズは、まだまだツキに恵まれているよ・・」。名波のフリーキックがレッズゴールの右ポストを叩いたとき、思わず、隣に座るジャーナリスト仲間にそんな声を掛けていましたよ。リーグ終盤での大混戦。ここまできたら、「ツキ」の持つ意味・・というか、ツキにも恵まれていることに対する確信レベルがチーム内で高揚することには、最終勝負での確信(自信)レベルを引き上げるモティベーションになるかもしれないという視点もふくめ、重要な意義がありそうです。
全体的なレベルの底上げだけではなく、地域密着のサッカー文化も着実に深化するなど、この15年間における日本サッカーの進歩&発展には目覚ましいモノがあります。そのことについては、友人のヨーロッパエキスパートたちも口を揃えます。また、オシムさんが言うように、プロリーグとしての「J」の可能性も高いポテンシャルを秘めていると思います。もちろんそれは、プロのエンターテイメント性と、純粋スポーツ的な要素の高質なバランスという意味でネ・・。何せフットボールネーションでは、プロアクティビティーの多くが、経済ファクター主導(経済ファクターに under controlled!)という状態に陥っていますからね。まあ、その意味は多岐にわたるからここでは深入りしないけれど、それに対して「J」では、最終節を迎えた時点で、5チームが勝ち点「2の差」でひしめき合っているというわけなんですよ。この大混戦そのものが、プロサッカーのエンターテイメントファクターとしての醍醐味が、純粋スポーツ的に演出されているという、プロスポーツの本来あるべき姿(非日常のエキサイトメント)だということです。まあ・・ネ・・、アウェーとホームの勝率の差が、フットボールネーションと比べたら小さすぎるなど、確かにまだまだサッカーリーグとしての本格感に欠けるという側面も多いけれどネ。ホームとアウェーの勝率の差については、ちょっと古くなるけれど(とはいっても今でも大差なし!)、当HPのデータ分析コーナーを参照アレ。
さて、ものすごく緊縛したダイナミックな膠着状態のエキサイティングゲームを勝ち切ったレッズ。まあ全体的なゲーム内容からすれば、ツキにも恵まれた勝利とするのが妥当だろうけれど、ギド・ブッフヴァルト監督が言うように、全体的なゲーム内容やシュートの量と質、また選手交代や福西の退場によってサイドからの仕掛けの危険度が格段にアップしたことなどのファクターを総体的に考慮すれば、「実力で勝ち取った勝利」という見方も妥当だといえそうです。それにしても、やはり長谷部の存在は大きい。この試合でも攻守わたって実効あるプレーを展開していました。山田と活発に展開するタテのポジションチェンジも威力を発揮していたしネ。とにかく、ダイナミックな膠着状態がつづいた、コメントがし難いゲームではありました。
さて最終節。その状況について、ギド・ブッフヴァルト監督に、こんな質問をぶつけてみました。「たしかにレッズは他力本願(セレッソかガンバが勝てばノーチャンス!)という状況にある・・とはいっても、得失点差では優位に立っている事実もある・・要は、セレッソとガンバは、レッズが新潟で勝つことを前提に、最終戦を必ず勝利しなければならないということ(引き分けでは足りないという意識!)・・彼らは、そんなプレッシャーのなかで最終節に臨まなければならない・・対するレッズは、他力本願ということで、はじめから勝つしかないわけだから、吹っ切れた心理で試合に臨める・・この状況では、レッズがもっとも優位に立っていると思うのだが・・」。それに対してギドは・・プレッシャーはどこも同じ・・とにかく、最後の試合に集中し、全力を出し切って勝つことだけをイメージする・・ということでした。もちろん、そんなニュートラルな言葉の背景に、十分なメンタル準備もしているさ・・という強い確信を感じましたがネ。
前節のレポートでも書いたけれど、本当の意味での勝者のメンタリティーは、自分たちが置かれた状況を深く自覚することを大前提に、そんなプレッシャーのなかでも全力を出し切れるように確信レベルを主体的に高揚させる(そして主体的に勝利をもぎ取る!)ことでのみ発展させることができるものだということです。レッズに置き換えれば、それでこそ、レッズ(ギド・ブッフヴァルト)が志向する、主体的な自己主張と同義とも言える「本物の守備意識」をベースにした、攻撃的なプレッシングサッカーを発展させられるということです(これについては、以前のギドとの対談記事を参照してください)。
最高テンションの勝負マッチに臨むチーム。そこでは、やはり守備意識の質が問われます。状況が厳しくなればなる程、ディフェンスを前面に押し出して闘いに向かっていくという意識が大事になるのですよ。例えば、相手に押し込まれて足が止まるという心理的な悪魔のサイクルに落ち込んでいる状態。そんなネガティブなサイクルを主体的に断ち切るためには、全員が、最高の集中力で、相手をガンガンに「密着マンマーク」で潰すという意識でアグレッシブな守備を展開するしかない・・とかネ。とにかくレッズ選手たちには、守備意識に対する再確認も含め、最高のイメージトレーニングをもってアルビレックス戦に臨んで欲しいと思っている湯浅なのです。
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最後になりましたが、遅ればせながら、私も神達彩花ちゃんを助けるための募金活動に、非力ながら協力させていただくことにしました。お父さんは、日本におけるサッカー文化の発展に尽力している方であり、私も以前、あるプロジェクトで間接的に協力していただたことがあります。彩花ちゃんが、なるべく早く、サバイバルの可能性にチャレンジできるようになることを心から願っています。詳しくは「こちら」を参照してください。-
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