湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2006年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第18節(2006年8月20日、日曜日)
- 最後の最後までダイナミックにやり抜いたエキサイティングな仕掛け合いでした・・(ジェフ対FC東京、3-4)
- レビュー
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- ものすごくエキサイティングな攻め合いになったジェフ対FC東京。これこそ、入場料にお釣りがくるっちゅう内容の濃いゲームじゃありませんか。豊富な運動量をベースにした、シンプル&積極的な組織プレーを積み重ねていく爆発的な仕掛け合い。それを見ながら、オシム日本代表が放散しつづけているダイナミックサッカーイメージの心理的な影響もちょっとオーバーラップさせていた湯浅でした。
そんなエキサイティングな仕掛け合いになったのは、もちろん、ホームのジェフが前半7分までに二つのゴールでリードを奪ったからに他なりません。失うものがなくなり、完璧に吹っ切れたFC東京。そこから彼らの運動量とリスクチャレンジマインドが何倍にもふくれあがっていったというわけです。
この両チームの対戦には、様々な意味で興味がありました。途中で、高速道路の(たぶん直射日光で)変形した路面をガクン!と乗り越えてしまい、そのショックで舌を噛んでしまったけれど(痛くて仕方なかった・・記者会見の質問でも、シャシュショになってしまって・・)、試合を見ながら、本当に来て良かったと思ったものです。
その興味は、まあ、二つに集約されますかね。要は、アマル・オシム監督になったジェフのサッカーコンテンツと、ガーロ監督が更迭され、倉又監督になってからのFC東京のサッカーに対する興味です。
私は、アマル・オシム監督になったジェフは、これまで通りのダイナミックなサッカーを展開してくれるものと確信していました。イビツァ路線は変わらない・・選手のイメージにはオシムサッカーが深く浸透している・・だから、チーム内のイメージシンクロレベルも高みで安定しているはず・・また、ジェフから、阿部と巻に加えて、佐藤勇人と羽生直剛も日本代表に選ばれたことも大きい・・それによってチーム内の雰囲気は俄然活気づくに違いない・・ってな具合です。
またFC東京についても、指揮官の交代という強烈な「刺激」が選手たちを鼓舞するに違いないと確信していました。倉又監督には、4日間という短い準備時間しかなかったけれど、長い期間FCでコーチを努めていたこともあって、選手たちの心理をしっかりと把握できていたことも大きかった(成功していた当時のチーム戦術に戻した!)。また多分そこで、選手たちの人間的な弱さとの闘いという刺激もあったことでしょう(私の質問に対して、そのことを示唆するようなコメントがあった)。基本的にはチカラのあるチームだからね、これまでの鬱憤(うっぷん)を晴らすような爽快なダイナミックサッカーを展開してくれるものと確信していたのですよ。
そして両チームともに、期待に違わないダイナミックなサッカーを展開してくれたというわけです。もちろんそこには、上記の事情だけではなく、ゲーム立ち上がり7分間での「2ゴール」という強烈な刺激もあったわけだけれどね。まあ、ジェフの二点リードがなかったら、また違った展開になっていたはずだよね。とにかくこの二点リードは、FC東京を「解放」したという意味で、まさに脅威と機会は表裏一体ってなことになりました。
強烈な仕掛け合い。爆発的なワンツーや素早いコンビネーション・・吹っ切れたドリブル勝負・・ボールがないところでの三人目、四人目の全力ダッシュ・・また守備では、爆発的なチェイス&チェックや忠実なマンマークの応酬・・等々。
そんな、攻守にわたる仕掛け合いだから、両チームともに常に「刺激」されつづけるという展開になるのも道理。一方のチームが(ガツガツとボール奪取勝負を仕掛けていくのではなく)守備ブロックを安定させて守ったり、安全パスを回すことでボールを確実にキープするといった展開になれば、少しはゲームのペースを落ち着かせることが出来たかもしれないけれどね。でも両チームともに、仕掛けの勢いが減退することはありませんでした。
このゲームをどのように総評すべきなんだろうね。ゲームの(攻撃の)流れやリズムを上手くコントロールする選手がいなかった!? まあ、そうとも言える。意地になった両チームが、決して弱気にならず、最後の最後までリスクにチャレンジしつづけた!? まあ、そんな表現も当てはまるかも知れない。リスクチャレンジは、ボールホルダーの仕掛けドリブルや素早いタイミングでの最前線へのタテパス供給だけではなく、ボールがないところでの全力ダッシュなど、様々なコンテンツがあるけれど、この試合では、そんなプレーのオンパレードだったよね。
でも、やっぱり、そんなハイテンポなサッカーが最後の最後までやり抜かれたという事実を、このゲームの総評にしましょうか。要はこのゲームが、疲労を考えたクレバーなペース配分という「戦術的な発想」をハナから否定してしまうような内容だったということです。
そんな「戦術的な発想」は、選手たちに「クレバー」な妥協(=言い訳)の余地を与えるだけだからね。相互信頼をベースに、互いに使い・使われるというメカニズムを最高度に機能させれば、90分間のダイナミックな攻め合いも十分にやり遂げられるということです。この試合については、全力アクションする場面と「アクティブに」休む場面のメリハリが素晴らしかったとも言えるということです。また、この試合が、日本の盛夏に行われたことを忘れてはならないと思う湯浅なのでした。それにしても、舌が痛い。シャ、シィ、シュ、シェ、ショ・・。
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