湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第24節(2006年9月23日、土曜日)

 

レッズの強力な守備ブロックというテーマ・・(レッズ対エスパルス、1-0)

 

レビュー
 
 まあ、この試合での中心的テーマは、虎の子の1点を、確信をもって守り切れるまでにレッズ守備ブロックが成長をつづけているといったところでしょうね。何せ、失点の少なさでは「ダントツ」のリーグトップだからね。

 ハイレベルな守備意識と高い個のディフェンス能力のコラボレーション。ギド・ブッフヴァルト監督は、ベストフォームのマルキーニョスを抑え切った堀之内、抜群の制空パワー(ヘディング力)とリーダーシップを発揮するトゥーリオ、絶好調の堅実ディフェンスを展開する坪井、そして素晴らしいプレーを連発するGK山岸の貢献を挙げていたけれど、もちろろん彼は、安定したディフェンスを魅せつづける両サイド(平川とアレックス)と守備的ハーフコンビ(鈴木啓太と長谷部誠)、また前線からの守備でも大車輪の汗かき守備ワークをこなした山田暢久、そして最前線から「最初の守備アクション」をしっかりと仕掛けつづけていたツートップ(田中達也とワシントン)にも言及していましたよ(記者会見後の立ち話)。

 たしかに前半では、マルキーニョスに危険なドリブルシュートやセットプレーからのヘディングシュートを打たれた(山岸のファインセーブ!)。また後半では、枝村に2本もつづけて決定的シュートを打たれた(後半25分あたりの二つのシュートシーン!)。とはいっても、レッズ守備ブロックが、「超」を付けてもいいくらいの安定レベルにあることは確かな事実なのですよ。もちろんそれは、人数を掛けた、下がり気味で受け身の守備ブロックといった低次元のモノじゃありませんよ。だからこそ評価できる。

 この試合では、山田暢久が二列目として先発しました。もちろん私は、組織プレーにも長けた彼が中心になった縦横無尽のポジションチェンジを期待したわけだけれど、この試合では、どうも単発という印象をぬぐえなかった。まあ、ワシントンの決勝ゴールが決まるまでは(前半16分)、両サイドのオーバーラップだけではなく、長谷部や鈴木啓太、またトゥーリオまで、機を見計らって前線に顔を出していたけれどね。特にアレックスは、逆サイドにまで進出していったりしてネ。鈴木啓太と山田暢久のご両人には、お疲れ様と言わなければなりません。

 記者会見で、ギド・ブッフヴァルト監督が、そのことについて、このように説明していた。「相手は強いエスパルス・・ツートップ(マルキーニョスとチョ・ジェジン)だけではなく、枝村や両サイドなど、優れた攻撃陣を擁する・・そのことが、ウチの中盤選手たちが、そんなに積極的にタテへ抜け出していかなかった背景にある・・トゥーリオにしても同様・・とはいっても、決して私は、彼らに上がるなとは言っていない・・マルキーニョスやチョが1対1の状況から抜け出してきたら確実に大ピンチになる・・そのようなシチュエーションはなるべく避けるように、とは指示をしたけれどネ・・まあ、それ以外は、選手自身が考え、自分たちのなかで調整したということだ・・」。

 いいね。ギドは選手に本当の意味での自由を与えている。その「自由」が機能するのだから、選手も、与えられた自由を、自分主体で「最高の状態で成りたたせるための要素」をしっかりと理解しているということだろうね。そこには本物の(個人事業主たちで構成するプロ集団の)信頼関係があると感じる。

 もちろん、これまでも、また今でも、チーム内に様々な「心理的ストラグル」はあるでしょう。でも動的に均衡していなければならないサッカーチームだからネ。絶対に、「緊張感リソース」は必要なんですよ。そんなギリギリ緊張感の剣が峰を、迷わず進んでいくチーム。その絶対的な心理ベースは、指揮官であるギドが、必要とあれば「人間の弱さと厳しく対峙できる」コーチであることを、選手が心底理解していることなのです。

 あれっ? またハナシが明後日の方へ行ってしまった!? 

 エスパルスは、例によって、立派なサッカーを展開しましたよ。記者会見での長谷川健太監督の弁です。「チームが、決勝ゴールを奪われてから、本当の意味で覚醒したのは残念だったけれど、選手たちは、最後の最後までゲームを捨てないで闘い抜いてくれた・・私は、そのことを誇りに思う・・」。なかなかのパーソナリティーじゃありませんか。

 また、「9月は、1勝2敗ということになったけれど・・」という質問に対しても、胸を張って、「3敗しなくてよかったというポジティブシンキングで、これからも発展を目指す・・あと10試合もあるんだから、これからもう一花咲かせて魅せます!」だって。いいね。期待しましょう。ということで、今日はこのあたりで。

 



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