湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第29節(2006年10月28日、土曜日)

 

やっぱりサッカー観戦はテーマだよ、テーマ!・・あ〜、面白かった・・(フロンターレ対パープルサンガ、2-0)

 

レビュー
 
 やっぱり、サッカー観戦はテーマだよ、テーマ!

 何を言っているのかって? もちろん、優勝争いをしているフロンターレが、「サバイバル降格リーグ」で主役を演じている京都パープルサンガと対戦するというギリギリのモティベーションマッチという視点のことですよ。そのことを大前提に、そのなかでの見所(テーマ)を具体的にイメージ設定してゲームを観戦すれば、楽しみが何倍にも増幅するということことが言いたかったのですよ。

 総合力では明らかにフロンターレの方が上だからね、自由に攻め合ったらサンガにチャンスはない。ということで、自分たちのサッカーを貫くしかないフロンターレに対し、サンガは、統一されたゲーム戦術を集中力を切らさずにやり抜くしかないのですよ。

 記者会見で後藤健生さんが、「強いフロンターレを抑えるというテーマ・・たしかに前半はうまく機能していたと思うが、具体的には、どのような戦術イメージを選手たちに与えたのか?」という素晴らしい質問をしてくれたのだけれど、それに対してサンガ監督の美濃部さんは、「まずフロンターレのトップ三人(我那覇、ジュニーニョ、マギヌン)をしっかりと抑えることがテーマだった・・また、だからこそ、そのトライアングルへのパスの供給源を抑えるというテーマも与えた・・そのパス出しを抑制するセカンドディフェンダーの狙いこそが重要だった・・」と、明快に答えてくれました。

 試合中でのホット・パフォーマンスだけじゃなく、ヒゲや、記者会見での受け答えも含め、なかなか「エッジの立ったウデ」がありそうな監督さんです。

 後藤さんと美濃部さんのやりとりの通り、前半のサンガは、本当に素晴らしい守備を魅せてくれましたよ。チェイス&チェック、次のボール奪取勝負、インターセプト、ボールがないところでの忠実マークなどなどといった守備ファクターが、小気味よく「有機的に連鎖」しつづけるのです。そしてチャンスとなったら、我慢に我慢を重ねたエネルギーが大爆発するような勢いのあるカウンターを仕掛けていく。

 そんなサンガの「首尾一貫タクティカルサッカー」に、(前半の)フロンターレは本当にタジタジでした。「前節のビッグゲームの後ということもあって、やはり難しいサッカーになった・・まして相手はサバイバルマッチを戦うパープルサンガだし・・彼らが展開する、しっかりと組織的なブロックで守り、そこから素早くシュートまでいくというサッカーに苦しめられた・・」。フロンターレ関塚監督の弁です。

 サンガ美濃部さんのコメントにもあったように、前半のサンガは、フロンターレのトップトライアングルを孤立させるというゲーム戦術を本当にうまく機能させていました。もちろんフロンターレは、そんな展開になることは予想していただろうけれど、どうもうまく(サイドバックも含む)中盤がトップをサポートし切れないのですよ。

 そんな状況に対して、もっと、谷口や憲剛が前へ行かなければ攻めのカタチを作れないよな・・なんてことを考えていた湯浅だったのですが、そんなタイミングで、唐突に「仕掛けの変化を演出するプレー」が出てくるのです。前半28分。中村憲剛が、スルスルと最前線へ上がり、そのまま、マギヌンからの(だったと思うけれど)スルーパスを受けようと決定的スペースへ抜け出したのです。

 やっと明確な中村憲剛とマギヌンのタテのポジションチェンジが出てきた(それまでも何度かあったけれど、どうも中途半端だった!)。もちろん、その現象について、中村がマギヌンに「下がって!」と言ったのか、マギヌンが中村に、「ケンゴー・・イケ!」とハッパをかけたのか、はたまた「あうんの呼吸」だったのかは分からないけれどネ。

 そしてその後は、連続的に中村憲剛の前線への飛び出しプレーが見られるようになっていくのですよ。要は、それまでは、サンガの守備があまりにもうまく機能しつづけていたことで、中村憲剛も、飛び出しのチャンスを測りかねていたということなんだろうね。だから、例によっての「無為な様子見シーン」が連続してた。まあ中村からすれば、「それは違う・・オレはリスクチャレンジのチャンスを狙っていたんだゾ!!」っちゅうことになるんだろうけれど・・。

 とにかく、一度うまくタテのポジションチェンジが機能したからこそ、そんな「仕掛けの変化プレー」がどんどん出てくるようになったということです。そしてフロンターレの攻撃が活性化してくる。やはり、リスクへのチャレンジこそが発展・成長の唯一のエネルギー源だということです。

 そんな仕掛けの変化を演出できるようになったからこそ、(相手のファールを誘うことで)良い位置でのフリーキックも得ることができた!? まあ、そういう要素もあっただろうね。そして中村憲剛のフリーキックを、まさにイメージ通りに寺田がヘディングで流し、それを我那覇がヘッド一閃ってな具合。もうこうなったらフロンターレの独壇場でしょう。何せサンガは攻めなければならなくなった(ゲーム戦術の変更を余儀なくされた)わけだからね。

 それが後半の展開だったというわけです。攻め上がるパープルサンガ・・それに対し、ジュニーニョやマギヌン、我那覇、そして(相手のパスをインターセプトして爆発オーバーラップする)谷口や中村憲剛が、サンガの守備ブロックゾーンに出来たスペースを効果的に突くカウンターを仕掛けていく・・。

 そこからの湯浅の興味が、後半のフロンターレは何点ゲットするだろう・・なんていうモノに変容していったことは言うまでもありません。それは読者の皆さんも同じだったでしょ? でもそこから再びゲームが盛り上がっちゃうんだからたまらないサッカー観戦は止められない。要は、中村憲剛のフリーキックがバーに当たり、ジュニーニョがPKを失敗するシーンを見ながら、「これは・・」と感じはじめた湯浅だったわけです。「このままの展開だったら、確実に神様のイタズラマッチになるぞ・・」なんてね。

 いや、ホント、ゲーム終盤に次々と繰り出されるパウリーニョや美尾、はたまた田原の惜しいシュートシーンを見ながら、これは完全に「神様マッチ」になったゾって確信していた湯浅だったんだけれどね・・。でも結局は、中村憲剛の才能あふれる「タメ&スルーパス」が勝負を決めたという次第です。とにかく、最後の最後まで、本当に心から(変化に富んだゲーム展開を)楽しんでいた湯浅でした。

 



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