湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2006年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第32節(2006年11月23日、木曜日)
- レッズが醸し(かもし)だす勝者のメンタリティー・・(レッズ対ヴァンフォーレ、3-0)
- レビュー
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- 増幅しつづける勝者のメンタリティー!? 前節のグランパス戦(結果ではなく、そこでの実質的なサッカー内容!)もそうだったけれど、このヴァンフォーレ戦でも、「基本的なプレー姿勢」がプレる気配はまったく感じられなかった。リスク・チャレンジあふれる、攻撃的なプレッシングサッカー・・。
たしかに立ち上がりの時間帯は、ヴァンフォーレの攻守にわたる積極的なアグレッシブエネルギーに押され気味という感じにはなったけれど、それでも、ウラの決定的スペースを突かれるなど(そこでフリーな相手にボールを持たれる)といったところまで崩されていたわけじゃなかったからね。逆に、そんなヴァンフォーレの前掛かりエネルギーを逆手に取った効果的なカウンターから決定的チャンスを何度も作り出した。
まあ守備では、「小さなところ」での細かなミスはあったわけだけれど、それが大きな綻び(ほころび)に拡大しなかったのは、やはり、全力の汗かきプレーも十分にこなせるだけの高い意識がバックボーンの組織ディフェンスだからこそだと思っていた湯浅でした。チェイス&チェック、インターセプトアクション、ボール奪取勝負、協力プレス、抜かれた後の全力の戻りなどが、有機的に連鎖する。
高みで安定したダイナミックサッカー。そのコアになっているのは、もちろん、山田暢久・長谷部誠・鈴木啓太で構成する「ダイナミック・トライアングル」です。わたしは、このトライアングルこそが、勝者メンタリティーのポジティブな発展における基盤になったと思っているのですよ。ギド・ブッフヴァルト監督は、出来る限り、このトライアングルを維持しつづけた。そのベースにあったのが、(長いスパンで分析した!)サッカー内容を絶対的な評価基準にした「ウィニングチーム・ネバー・チェンジ」というコンセプトだったというわけです。
攻守にわたる、リスクを恐れない積極的な勝負プレーの積み重ね。彼らは、互いに「使い・使われる」という実効メカニズムを十分に理解している。だからこそ、確信をもって攻め上がれるし、汗かきディフェンスにも最高のエネルギーを傾注できる。だからこそ、縦横無尽のポジションチェンジも、相互信頼ベースで機能しつづける。
それにしてもレッズは、本当に理想的なタイミングで先制ゴールを入れたよね。なんてったって、後半の立ち上がり1分というタイミングだったからね。正確なピンポイントクロスを決めた山田暢久も素晴らしかったし、それを確実にヘッドで決めたワシントンも素晴らしかった。それで、すべてのネガティブなイメージが氷解したというわけです。何せそれまでは、PKも含めて、あれだけの決定的なカタチをゴールに結びつけられなかったわけだからね。疑心暗鬼にもなろうというものじゃありませんか。
結局レッズは3点奪ったわけだけれど、そのなかで私がもっとも気に入ったのは、三点目のゴール。アレックスのコーナーキックから、ワシントンのヘディング一閃。そのシーンでの、心理&戦術ドラマは見応え十分でしたよ。
アレックスには明確に勝負シーンが見えていたんでしょうね。ワシントンが、最後の瞬間に、彼をマークするビジュの「眼前スペース」にスッと身体半分抜け出すということを。まさに、あうんの呼吸。ワシントンは、その「シンクロ・イメージ」をなぞるように、最後の瞬間に(ビジュの視線がボールへ向けられた瞬間に)スッとビジュの眼前スペースへ動き、そこへ、アレックスからのピンポイントクロスがピタリと合ったというわけです。そのとき私は、ゴール前のワシントンの動きに目を凝らしていたから、感動もひとしお。ホント、見事なゴールでした。
ところでヴァンフォーレ。大木監督は、本当に優れた仕事を積み重ねていると思いますよ。ゲーム立ち上がりの時間帯だけではなく、一人足りなくなった後半でも、諦めることなく、最後の最後までしっかりと攻めようとする姿勢が崩れることはありませんでした。
「大木さんは、人々に感動を与え、再びスタジアムに足を運んでもらうというコンセプトを、サッカーはエンターテイメントだ!と表現しているわけですが、その言葉通り、今シーズンも、積極的で魅力的な攻撃サッカーを展開していると思います・・そこで聞きたいのですが、大木さん自身が考える、今シーズンのエンターテイメント度は?」
そんな私の質問に対し、大木さんは、「まだリーグは2試合残っているし天皇杯もあります・・だから、ここで総括的なことは言いたくないし、それをやったら自己満足になってしまう面も出てくるでしょう・・その評価については、皆さんにお任せしたいと思います・・」と、真摯に答えてくれました。まあ、満足した瞬間に進歩が止まってしまうという大原則からすれば、常に前向きに課題を探るという姿勢が大事だよね。そのためにも、明確な理想イメージと、タブーなく、正確に現状を認識する分析眼が大事。理想マイナス現状イコール課題・・なのです。
ところで、レッズが醸しだす勝者のメンタリティー。そのもっとも重要なバックボーンは、ライバル意識や、(自らの汗かきプレーに対する自負をベースにした!)強烈な自己主張のぶつかり合いによるチーム内緊張感の高揚だと思っている湯浅なのです。そして、そのテンションが常にギリギリの剣が峰にあるように、逆にそのテンションが、あるバランス限界を超えてしまわないように効果的にコントロールしているのがギド・ブッフヴァルト監督。そこでは、ワールドカップで世界チャンピオンに上り詰めた経験や、レッズでの選手時代に彼が為した(人間性なども含む)パフォーマンス内容も大きな価値を発揮していると思っている湯浅です。
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