湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第4節(2006年3月21日、火曜日)

 

才能に恵まれた選手たちが集まったグループにおける「攻守にわたる組織的な汗かきプレーの連鎖」というテーマ・・(レッズ対セレッソ、3-0)

 

レビュー
 
 昨年までは、いくら攻め込んでチャンスを作っていたとしても、実際にゴールが入らなければ、「やばいゾ・・このままだったら、ワンチャンスを決められたり、点が入らないことで徐々にペースが落ちてきて心理的な悪魔のサイクルにはまってしまうかもしれない・・」なんていう不安の方が先に立ったけれど、今シーズンについては、そんな不安が強くなることはありません。相手とのチカラの差が、いつかは「結果」となって現れてくる・・。そのことに対する「確信レベル」が高揚したということなんだろうね。

 そんな「確信」の背景ファクター・・ですか? まあ・・ネ、いろいろあるけれど、一番大事なことは、やはり何といっても、選手たちの「守備意識」に対する真摯な姿勢が深まっている・・っちゅうことなんじゃないですかネ。これほど能力の高い選手たちが加入してきたにもかかわらず、昨シーズンまでは頻繁に観察された「相手を甘く見たイージーなプレー姿勢」がかなり払拭され、全員が「攻守にわたる汗かき」にも、しっかりと取り組んでいると感じるのですよ。だからこそ、おのずと、「いつかは努力がゴールとなって結実する・・」ことに対する確信が強くなっていく。

 要は、能力の高い選手たちが繰り広げるギリギリの競争がある(良い意味で互いに刺激し合うポジティブな緊張感がある!)ということです。もちろんその背景には、人間心理のダークサイド要素も含まれる「心理ストラグル」を効果的にマネージするギド・ブッフヴァルトとゲルト・エンゲルスのコンビという「ウデ」もあるわけですがね。

 優れた選手が集まれば集まるほど、ギド・ブッフヴァルトの「真摯なマネージメント能力」が効果的に発揮されるはずです。何せ彼は、(ドイツ代表も含めた)現役時代から、グラウンド上における(言い訳のない)闘う姿勢の「ドライバー(推進役)」として、監督たちから深く、本当に深く信頼されていたのですからネ(そのことは、当時シュツットガルト監督だった私の友人、クリストフ・ダウムから何度も聞かされていた!)。心理的に錯綜したコンプレックスなど、天才たちの「エゴ」の背景に潜む様々な「心理ファクター」など、お見通しでしょう。彼の現役時代のプレーコンテンツは、誰もが認めざるを得ないモノでしたからね。だからこそ、現ドイツ代表のユルゲン・クリンズマンも、ギドのサポートを心から望んでいたというわけです。

 そんな、様々に入り組んだ心理ファクターの集大成ともいえる「実効性が高い守備意識」だけれど、それが基盤になっているからこそ、攻守にわたる組織プレーのレベルも向上するんですよ。ボールがないところでの守備にも忠実に取り組むだけではなく、しっかりとパスレシーブの動きもつづける選手たち。そして、パスが来なくて「空走り」になったとしても、当たり前といった態度で「次の汗かき」へ向かう・・。いいじゃありませんか。

 ここで、ちょっと視点を変えて、「ポジションなしのサッカーが理想」という、湯浅健二が常に提唱しているコンセプトについて・・。要は、小野伸二が演出する長谷部誠とのタテのポジションチェンジや、トゥーリオのオーバーラップについてです。小野伸二の優れた「デヴァイダーぶり」については、前節コラムでも書いた通りですが、トゥーリオのオーバーラップの場合、そのバックアッパーは、もちろん鈴木啓太です。トゥーリオが上がっていくキッカケのほとんどは、相手のタテパス狙い。ズバッと前でボール奪取勝負を仕掛け、そしてボールを奪い返した次の瞬間には、カウンター気味の仕掛けをイメージし、パス&ムーブやドリブルを駆使して最前線まで上がっていくのですよ。

 この試合でも、何度も、何度も、トゥーリオがワシントンまでも「追い越した」シーンをみせつけられました。それでも、次の守備でバランスが崩れることがない。そこには、鈴木啓太がいる・・長谷部誠がいる・・小野伸二がいる・・。特に鈴木啓太については、アレックスや山田暢久が上がった後ろのスペースを埋めるというタスクもイメージしているからね。

 試合後の記者会見でも、真摯なギドが、「この試合でケイタが魅せてくれたパフォーマンスは、心からの賞賛に値する・・」というニュアンスのことを言っていましたよ。もちろん私は、ギドが言わなくても、鈴木啓太を褒めちぎるつもりでしたがネ。彼にもまた、酒井というライバルがいる・・。フ〜ム・・。

 さて、これから「レッズ・ナビ」に出演するためにテレビ埼玉へ行かなければならないので、ここで今回のコラムはおしまいということになりますが、まだまだテーマは、ワシントンのポストプレー・・アレックスの集中力の向上・・ワシントンとトゥーリオという「ヘディング・ウエポン」が内包する意味・・等々、広がりつづけます。

 とにかく今シーズンのレッズが提供してくれる学習機会のなかでもっとも重要なところは、才能に恵まれた選手たちが集まったグループにおける「攻守にわたる組織的な汗かきプレーの連鎖」というテーマと、「リスクチャレンジこそが発展のための絶対的な基盤・・」という視点ですかネ。今回は、まったく読み直さずにアップします。誤字・脱字などなど、ご容赦。それでは・・。

 



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