湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2006年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第8節(2006年4月16日、日曜日)
- ホンモノの優勝候補としての存在感を高揚させつづけるフロンターレ・・(フロンターレ対アルディージャ、3-1)
- レビュー
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- ホントに関塚監督は優れた仕事をしていると思います。このゲームだけれど、サッカーの内容でも非常に好調なアルディージャと、リーグトップクラスのパフォーマンスで存在感を誇示するフロンターレとの一戦ですからね、ものすごく楽しみにして等々力へ単車を飛ばした次第。そして期待に違わぬ好ゲームのなかで、フロンターレが、しっかりと根がはった素晴らしくソリッドなサッカーを展開したというわけです。
昨シーズン、アントラーズのトニーニョ・セレーゾ監督が退任するのを受けて、関塚監督にも名門アントラーズを引き継がないかという声がかかったはず。もちろん、本当に何が起きていたのかなんて外部の者には分かろうはずがないけれど、関塚さんも、そのオファーを熟考したことだけは確かでしょう。そして、フロンターレに残るという正しい決断をした。関塚さんは、このチーム(グループ)の潜在力の高さを確信していたに違いないと思うのですよ。もちろん「そこ」には、昨シーズンのメンバーがそのまま残るという条件が満たされたこともあったのでしょう(アウグストの代わりに、同等以上の実力が保証されたマルコンも加入した!)。だからこそ「正しい」決断。そして、まさにイメージ通りに、「グループ」を順調な発展ベクトル上に乗せられている。監督として、これほど心躍る発展プロセスはないよね。いまの彼は、仕事が楽しくて仕方ないでしょう。You deserve it !!
この試合、最初の15分から20分間は、中盤守備のコンテンツで上回るアルディージャがペースを握っていました。彼らがゲームを支配していたのです。でも結局は、キープ率が比較的高かったというだけだった・・。そこでは、アルディージャが、フロンターレ守備ブロックを振り回して決定的スペースを突き、確率の高いシュートチャンスを作り出したというシーンは見られず仕舞いでしたからね。
それに対し、中盤ディフェンスの活性化とともに徐々にペースを奪い返していったフロンターレ。彼らが仕掛ける攻撃の危険なこと。まさに、組織と個の高質なバランス・・っていうか・・彼らの場合は、個の才能を最大限に活かすための効果的な組織プレーってなことかな・・。
フロンターレでは、とにかく、中村憲剛と谷口博之で組む「ボランチ・コンビ」が秀逸です。この二人が、完璧な「中盤の重心」として、攻守にわたって最高の機能性を発揮していることは衆目の一致する評価に違いありません。ここでは、守備的ハーフと言わず、敢えて「ボランチ」という表現を使います。以前に何度も書いたように、わたしは、「ブラジル」に対する敬意を込めて、それ相応のパフォーマンスコンテンツが伴っていなければ、決して「ボランチ」という表現を使わないようにしているのですよ。でも、この試合での中村と谷口のプレーコンテンツは、確実に「ホンモノのボランチの香り」を放散していたというわけです。
特に中村憲剛が素晴らしい。まあ・・、彼のボール奪取勝負の本当のチカラを評価するためには、もう少し観察する必要があるけれど、守備と攻撃の総合的な「実効レベル」では、間違いなくリーグトップクラスにいますよね。ボールを奪い返してからのシンプルな展開パス。勇気を込めてタテへ繰り出していく鋭い仕掛けパス。はたまた、チャンスを見計らった勝負ドリブルやタメといった個のリスクチャレンジ・・等々。大したものです。
フロンターレの攻撃では、中村が上がってきたときには、例外なくチャンスになっていましたよ。アルディージャからペースをもぎ取れたのも、中村の間接的な貢献が大きかったしネ。もちろん守備でも、チェイス&チェックという汗かきの「ディフェンス起点プレー」は言うまでもなく、ハイレベルな予測ディフェンスが冴えわたるし、忠実なボールがないところでのマーキングも特筆モノです。わたしは、彼と谷口のプレーに舌鼓を打っていた湯浅だったのです。
そんな二人が、(もちろん交代に!)どんどんとサポートに上がっていくだけじゃく、ボールを奪い返されたら、全力で戻ってディフェンスブロックのバランスを取るのです。それがあるからこそ、フロンターレの「攻守にわたる組織プレー」が高揚する・・そして、「それ」がベースになっているからこそ、ジュニーニョ、マルクス、我那覇、マルコン、森勇介といったチームメイトたちも、後ろ髪を引かれることなく、思い切ったリスキープレーにもチャレンジしていける・・。まさに、中村と谷口が演出する、リスクチャレンジマインドの善循環ってな具合でっせ。
どんなチームでも、「中盤の重心プレイヤーたち」が、攻守にわたってどれくらい実効プレーを展開できているかによって、その日の全体パフォーマンスが決まってくるものです。チームの美的な価値(個の才能に恵まれたスター連中の魅惑プレー)にしても、彼らあっての賜物なのであります。たぶんフロンターレの「重心」たちは、コーチングスタッフや前線のスター連中だけではなく、マネージメントからも、相応の高い評価を受けているに違いありません。だからこそ、グループの結束力が高まり、志向する高質サッカーへのアプローチにも勢いがでてくる。これからのフロンターレの動向から目が離せません。
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