湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2007年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第11節(2007年5月13日、日曜日)
- いろいろなテーマを書いていたら長〜いコラムになってしまった・・(レッズ対ガンバ、1-1)
- レビュー
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- まだちょっとフラストレーションが残っている。レッズ前半の(また後半の半ばあたりまでの)サッカー。ありゃ、ないよ。ちょっとヒド過ぎた。
いつも書いているように、サッカーでは、まず何といっても守備が全てのスタートライン。その内容こそが、全体サッカーの質を決めてしまうといっても過言ではありません。前半のレッズは(また後半の立ち上がりも)、その守備が、全くと言っていいほど機能しなかったのです。
とにかく、チェイス&チェックがぬるま湯でいい加減。だから「守備の起点」をうまく演出できない。守備の起点とは、相手ボールホルダーに対してクレバーに(そしてタイトに!)プレッシャーを掛ける状況のことです。それがうまく機能することで次のパスを制限でき、そのことで次にボールが動くスポットでのボール奪取勝負を効果的に仕掛けていけるというわけです。
でもその起点がうまく機能しないから、次の勝負所に問題が発生する。相手ボールホルダーのプレーを抑制できていないから(守備の起点が甘いから!)、次のパスがうまく予測できない(パスを読めない)のですよ。だから、相手パスレシーバーをマークしている味方も、一瞬ボールウォッチャーになったり足が止まってしまったり。また起点が甘いから、協力プレスを仕掛ける味方も寄せていけない。
立ち上がりの時間帯、特に最終ラインのマークが非常に不安定でした。それは彼らだけの責任ではなく、その前の段階での守備ブレー(守備の起点を演出するプレー)の甘さによる悪影響の結果でもあるのです。
ちょっと驚いたのは、そんな悪い流れが、うまく修正できずに時間ばかりが経過してしまったこと。もちろん鈴木啓太は、前後左右に動き回って(それも全力ダッシュで!)しっかりとチェイス&チェックを仕掛けつづけていたけれど、周りの選手がそれに触発されず、まったくいい加減な怠惰プレーをつづけるのです。また、味方を叱咤するような、イニシアチブ(リーダーシップ)を取ろうとする選手も現れてこない。そして、無為な時間ばかりが過ぎ、選手のなかにフラストレーションが溜まりつづける。フ〜〜・・。
ホルガー・オジェック監督は、継続的にチームをいじりつづけているけれど、これまでで一番良かったのは、第9節(対ジェフ戦)の中盤の布陣。フォーバックの前に、鈴木啓太、長谷部誠、阿部勇気で構成する「ダイナミック・ボランチ・トリオ」を配したフォーメーションでした。そのことで、チーム全体の「守備意識」が何倍にも膨れ上がったと感じたのですよ。だからこそ、ボールを奪い返した次の攻めにも組織的なエネルギーが充満し、何人もの選手が、後方から攻撃へ飛び出していったのです。
それは、昨シーズン終盤から固定し、リーグ優勝の原動力となった「ダイナミック・トライアングル」にも通じるものがありました。要は、トップ下の二列目に入った山田暢久と、ボランチコンビの長谷部誠と鈴木啓太が三角形を形成した中盤の布陣です。そこでも、素晴らしい守備エネルギーが充満していたモノです。だからこそ、次の攻撃にも勢いが乗った。
ここで言いたかったことは、中盤の布陣を考える絶対的なベースとして、まず「守備意識」を前面に押し出すべきだということでした。もちろん、意識だけじゃなく、勇気をもった行動が伴わなければ意味がない。そんな、相手からボールを奪い返すことに対する強烈な意図と意志を、先発メンバーの絶対的な評価基準にすべきだと思うのですよ。
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この試合では、ワシントンをワントップに、ポンテと小野伸二で二列目コンビを形成した。まあポンテは、守備でもしっかりとボールを追っていたし(またボールがないところでもしっかりとインターセプトや相手トラップの瞬間を狙ったアタックを狙っていた)、攻撃に移っても、パスにしてもキープ&勝負ドリブルにしても、常にリスキーな勝負を仕掛けていた。それに対して小野伸二は・・。
前節のアルディージャ戦で交代出場した後のグッドパフォーマンスも含め、良いときの彼を知っているから、この試合での小野伸二のプレー姿勢にはホントに落胆させられた。たしかにボール扱いでは秀でた感覚を持っている小野伸二。でも、「それ」は、攻撃ではシュートという目的を達成するために効果的に活用されてナンボだし、守備では、相手からボールを奪い返すことに貢献してナンボなんだぜ。それが・・。
まず何といっても、守備がヒド過ぎた。チェイス&チェックに入らない。次のパスをイメージしたボール奪取勝負も仕掛けていかない。要は、足を止めてサボっているということです。たまに、絶対に間に合うという状況でのみ、インターセプトを狙ったりするけれど、全体的みたら、まさにアリバイ守備としか表現のしようがないマインドだった。そして、例によっての「交通整理」。フ〜〜・・。
そんなだから、周りのチームメイトがイメージする「組織ディフェンス」がうまく機能するはずがない。守備こそが、すべてのプレーを有機的に連鎖させなければならないのに・・。まあ、そんな彼のプレー姿勢を観ていて、正直、ちょっと腹が立ったね。
そんなだから(小野の)攻撃に勢いが乗るはずがない。ボールを持っても、相手に寄せられたら、例外なく、逃げのパスを打つ。また相手に寄せられた状態でパスを受けても、多くのケースでダイレクトのバックパスや横パスで逃げるばかり。直後にパス&ムーブで全力ダッシュすれば次のスペースで再び(今度はある程度フリーで!)ボールを持てるのに、パスした後は、足を止めてしまうことの方が断然多い。これじゃね・・。
何度あったかね、彼が前を向いて勝負していったシーン・・。わたしは2-3度しか覚えていないし、そのシーンでは、ことごとくボールを失っていた。ボールの分配役とか「パサー」とかを意識するのはいいけれど、それにしても、リスキーな「仕掛けパス」が出てこないのであれば、何の意味もないのですよ。
それでも、小野伸二の「シュート力」だけは、まさに本場仕込みだと思います。その上手さ、強さ、正確さはたぶんリーグでもトップクラス。だったら、そんな自分の強みを活かすというイメージでプレーすればいいのに、出てくるのは「華麗なボールコントロール」ばかり・・だからね。
この試合では、そんな小野伸二の代わりに(!?)、長谷部がベンチスタートなったということなんだろうか・・。そのことでも、ちょっとビックリしていましたよ。今の状態だったら、確実に長谷部の方が実効レベルは高いのに・・。
それでも、長谷部が出てきてからは、彼の、攻守わたる「実効ある!!」ダイナミックなプレーによって、チームのダイナミズムが大幅にアップした。同点ゴールも、彼が演出したようなものだったからね(粘りに粘って相手を二人引き寄せてスペースを作り、最後は、そのスペースへ上がっていった阿部へのタテパスを通した!)。とにかく私は、彼がベンチスタートだったことに大いに落胆していました。
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その他では、試合の立ち上がりではボロボロの内容だったレッズ守備ブロックが、後半に掛けて、徐々にパフォーマンス(集中力!?)がアップしていったことも特筆でした。自らのパフォーマンスに対して幻滅しつづけるという「刺激」が、彼らの意識を先鋭化していった!? その意味でも、良い学習機会だったということかね。
特に、ネネ。最初はマークミスなどが目立ったけれど、その後は、特筆の強さを魅せつけるヘディングや、一対一での勝負強さなど、本来のパフォーマンスに戻っていた。また(状況的に仕方なかったけれど・・)不安定だった堀之内や相馬も、時間の経過とともに調子を上げていった。
最後に、素晴らしいゲームの入り方をしながら、徐々にフォームがダウンしていったガンバについても一つだけテーマを・・。それは、播戸。
以前から何度も書いているように、私は、ガンバが展開する(優れた個の才能をベースにした!)素晴らしい組織プレーを高く評価しています。マグノ・アウベス、播戸、二川、遠藤、橋本と明神・・などなど。彼らが縦横無尽にポジションチェンジしながら繰り出す、人とボールが夢のように動きつづける華麗な攻めには、ものすごい怖さがあったものです。それが、この試合では・・。
ちょっと、変幻自在の(変化に富んだ)仕掛けのコンテンツに陰りが出てきたように感じているのは私だけではないに違いありません(西野さんも、会見で、ここ数試合のガンバは徐々にバランスを崩しはじめている・・と語っていた)。
ガンバの場合、組織ディフェンスの機能性が高みで安定しているのは確かなことです。私は、彼らの課題は、守備ではなく、攻撃にありだと思っているのですよ。要は、ボールがないところでの突撃隊長(必殺仕事人)播戸竜二のプレー時間が、このところ限られているということです。
たしかに、播戸をジョーカーとして投入した方が勝負という視点では効果的・・というイメージもあるだろうけれど、それは、チーム全体の仕掛けイメージに大きな変更が加えられるということを意味するからね、そう単純なメカニズムじゃない。
これまでは、ボールを奪い返した次の瞬間には、まず決定的スペースへ飛び出す播戸を狙ったロングラストパスをイメージすることも多かっただろうし、組織的な組み立てでも、常に決定的スペースへの飛び出しを狙っている播戸がいるのといないのとでは、最終勝負イメージの広がりに大きな違いが出てくるのも確かなことだと思うのですよ。もちろんバレーにしても、彼独特の効果的な仕掛けを繰り出してはいけるけれどね。
まあ、チームがその「仕掛けイメージ的な違い」を消化するのも時間の問題だということですかね。個のチカラでは、たしかにバレーの方に一日の長があるはずだからね。とにかく、「揺動しつづけるガンバの微妙なバランス」というテーマも面白そうだと思っていたのですよ。あっと・・、それって、彼らの場合は、毎年のことだったっけ??
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