湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2007年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第13節(2007年5月27日、日曜日)
- レッズは、効果的に人数をかけた組織プレー「も」意識しなければ・・(レッズ対マリノス、1-1)
- レビュー
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- さて、この引き分けは(内容で)理にかなったものなのかどうか・・。決定的チャンスの量と質という視点では確実にレッズに軍配が上がる。でも、全体的なゲームの流れとか組織的なダイナミズムといった視点では、マリノスも良かった・・。フム〜〜。
この試合での早野監督は、レッズ前線トリオ(ワシントン、ポンテ、小野伸二)を抑制するために、河合と上野のダブルボランチにしたということでした。要は、イメージ的な勝負ゾーン(ボール奪取ゾーンと攻撃のスタートポイント)を少し下げたということです。これまでは、吉田と山瀬兄弟のトリオが、高い位置でのプレッシングサッカーを牽引しつづけていたからね。ということで、もちろんマリノスのプレッシングサッカーの勢いも少し落ち着き気味になっていったというわけです。
とはいっても、坂田に代表される最前線からのチェイス&チェックは相変わらず力強かった(坂田の追い掛ける勢いは最後まで衰えを知らなかった・・拍手!!)。だから、坂田が仕掛けつづけるチェイス&チェックがうまくツボにはまりそうになったら、マリノスが全体的に押し上げ、前から勝負を仕掛けてくるのですよ。その統制のとれた「イメージのシンクロ状態」はなかなかのものでした。いや、それは、坂田がリードする勝負イメージの有機的な連鎖と呼んだ方が正しいでしょう。素晴らしいよね、坂田大輔・・。
この試合での早野監督のテーマには、ハイプレスサッカー(早野さんの表現・・なかなかいいネ・・ハイプレスね〜)を、いかに効果的にペース配分するのかといったものも含まれていたようです。これから暑くなってきたら、90分間を通してハイペースなサッカーはできないからね。その意味でもこの試合は、彼らにとって、なかなか貴重なテーマファインディングス(課題の抽出)の機会だったということでかもしれないね。
とにかく私は、早野さん率いるマリノスの今後の展開(発展!?)に興味津々なのですよ。山瀬功治の復活(サッカーシーンでの存在感のアップなど!)というテーマ含めてネ・・。
さて、レッズ。今日のテーマは、長谷部誠に絞り込みましょう。
私は彼のことを、高く評価しています。だから前節の試合でも、このゲームでも、交代出場した長谷部が、組織プレーをリードするカタチでサッカー内容が高揚していくことを願って止みませんでした。ただ実際は・・。
彼の登場パターンは、相馬との交代。そして阿部勇樹が左サイドへ回り、長谷部がセンターで鈴木啓太とコンビを組むというもの。ホルガー・オジェック監督に言わせれば、より攻撃的にする布陣ということになります。
前節につづきこの試合でも、彼が登場した最初の数分間は、たしかに攻守にわたるダイナミズム(活力・力強さ)は格段にアップしました。ただそれが長続きしない。まあ、彼がボールを持って仕掛けていこうにも、その前には、ワシントンだけではなく、ポンテや小野伸二がパスをもらおうと待ち構えているんだからね。
そんな「オレがやる!」という雰囲気をプンプン放散している強者たちの間をぬって勝負ドリブルを仕掛けていくには大変な勇気が要るでしょう。ということで、結局は展開パスを彼らに回すというプレーがつづくことになり、一瞬盛り上がったチームのペースが、すぐにまた落ち着いてしまうのですよ。
それに、この試合での長谷部は、致命的なミスを二回も繰り返してしまったしね。それは、確実に彼の自信レベルを浸食するだろうね。ゲームに出ていないことで、どうしても「感覚」が鈍ってしまうということです。その「感覚」には、ギリギリの競り合いシーンでも迷わず「確実な逃げプレー」が出来ることとか、強者たちの期待を無視してドリブルにチャレンジするといった自信にあふれたプレーイメージ等も含まれるのですよ。
いまのレッズの攻撃だけれど、大雑把にいえば、こんな感じ。ワシントン、ポンテ、小野伸二という前の三人にプラスして、(交代に)両サイドがオーバーラップするだけではなく、もう一人(啓太か阿部)が攻撃に参加してくる・・。まあトゥーリオが帰ってくれば、最後尾から攻撃参加してくるメンツも増えるだろうけれど、この試合では、ネネや堀之内が、2-3回、流れのなかで攻撃に参加してきたくらいですかね。それも、結局は「前線の三人」にボールを渡すところで終わってしまう。
ということで、どうも前線の三人が(個のチカラを前面に押し出すようなタイプの)仕掛けをリードするという構図に集中し過ぎていると感じるのですよ。もちろん相手にとっては、止められるかどうかは別にして、そんなレッズの仕掛けに対して、守りのターゲットイメージは絞り込みやすくなるよね。
言いたいことは、前述した、攻撃に参加してくる「もう一人」の選択肢が広がるだけではなく、その選手の絡み方が、より強い自己主張を放散するようなものじゃなければならないということです。だからこそ、長谷部誠に対する期待がふくらむのですよ。
とはいっても、この試合のように、その三人で決定的チャンスを作り出していることは確かな事実。ただ、もっと有効に人数をかけられれば、人とボールがよく動く組織プレーをベースに、もっともっと上手くスペースを活用できると思うのです。小野にしてもポンテにしても、何人もの相手をドリブルで抜き去ってしまうようなスピードやパワーを備えているわけじゃないからね。
ということで、いまのレッズが抱えるもっとも大きな課題は、何といっても、全体的な運動量のアップをベースに、組織プレーの量と質を高揚させることだと言いたかった筆者でした。
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