湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第17節(2007年6月24日、日曜日)

 

守備こそがすべてのスタートライン・・(アントラーズ対グランパス、2-1)

 

レビュー
 
 この試合のテーマは、何といっても「守備こそがすべてのスタートライン」という普遍的なコンセプトだろうね。ゲームの全体的な構図は「こんな感じ」だったですかね。

 ・・前半は、守備こそがすべてのスタートラインというコンセプトを主体的に(全力で)体現しつづけたグランパスが、ゲームと勝敗の行方を完璧に支配した・・その流れのなかで、本田圭佑のヘディングシュートなど、何本もの決定的チャンスを演出しつづけたグランパス・・それでもツキに見放されゴールを奪えない・・

 ・・それに対して後半は、アクティブ守備が復活したアントラーズとの壮絶な仕掛け合いになる・・これぞエキサイティングサッカー・・そんな流れのなかで、ちょっとだけツキに恵まれたアントラーズが二点をリードし(まあマルキーニョスの二点目は個の才能ゴールだったけれど)、強力ディフェンスブロックがそのリードを守りきった・・ってな具合。

 後半の両チームの守備だけれど、それを比較したとき、ちょっと面白い視点がアタマに浮かびました。要は、ヨーロッパ的なプレッシングディフェンスを実践するグランパスに対し、アントラーズは、よりポジショニングバランスを意識しながら「相手のボールの動きを追い込んで」いくというイメージ・・。

 グランパスは、あくまでも、チェイス&チェック、次のパスレシーバーへのプレッシング、ボールがないところでの動き出しを狙っている相手への忠実マーク、そしてボールの動きの停滞を狙った協力プレスといった守備プレーを、有機的に、そしてスムーズに連鎖させるというイメージで、より積極的にボール奪取勝負をしかけていくのですよ。そのイメージリーダーは、言わずとしれた藤田俊哉。立派なリーダーです。

 それに対して(復調した後半の)アントラーズ守備は、互いのポジショニングバランスを「守備イメージ的」により優先させていると感じる。この表現は、微妙だから難しいね。とにかく、グランパスが、ボール奪取勝負をより積極的に(前から)仕掛けつづけているのに対し、アントラーズは、とにかくまず守備の組織を整えてから対処するというイメージかな・・。だから、例えば相手ディフェンスが強力で、全体的には押し込まれるというゲーム展開では、往々にして、ディフェンスの機能性を高揚させるのに苦労するということもあるというわけです。そう、このゲームでの前半のようにネ。

 このところのリーグ戦で徐々に調子を上げ、それに伴って結果も付いてきたアントラーズ。彼らの勝ちゲームでは、立ち上がりから積極的に攻め込んで先制ゴールを奪い、それを強力なディフェンスブロックで守り切るという展開が多いけれど、この試合の前半は、それとはまったく違うモノになってしまった。要は、グランパスのレベルを超えた勢いに、自分たちのベースをまったく見いだせなかったということです。それでも後半は、ボールへのチェイス&チェックが、より忠実に素早くなったことで、守備の組織がうまく機能するようになりました。まあ、やっぱり守備の機能性は、チェイス&チェック(≒守備の起点プレー)の量と質によって大きく左右されるということです。

 グランパスでの藤田俊哉と同様に、ベテランの域に入った本山雅志の攻守にわたるリーダーシップも光り輝いていました。とにかく攻守の切り替えが早い。特に攻撃から守備へのチェンジエネルギーは特筆モノ。守備への転換には大きな心理エネルギーがいるモノなんですよ。だからこそ、本山の優れた守備意識に脱帽していた湯浅だったのです。それに攻撃でもあれだけの貢献が出来ている。オリベイラ監督にとって、まさにグラウンド上の真のビジネスパートナーといった存在でしょう。大したものだ。

 試合を見終わって、ちょっと複雑な心境でしたね。何せ、あれほど素晴らしい積極サッカーを展開したグランパスが惜敗してしまったからね。内容と結果は常にアンバランスというのがサッカーではあるけれど・・。

 



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