湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2007年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第22節(2007年8月25日、土曜日)
- 決定的チャンスを作り出すチカラでは、やはりレッズはトップクラス・・(レッズ対FC東京、3-2)
- レビュー
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- 「たしかにこのところ勝利から遠ざかっているけれど、サッカーの内容自体は確実に上向きだと思う・・この試合でも、積極的な闘いを挑めていた・・」
FC東京、原監督の弁です。まさにその通り。この試合での東京は、攻守にわたってダイナミックなサッカーが展開できていました。シュート数でも、17対14とレッズを上回っていた。特に、「スーパー今野」がリードする守備がよかったネ。それでも結局はレッズの「ここぞの攻撃力」の前に涙を呑むことになってしまった。
前節のヴァンフォーレ戦もそうだったよね。「ストロング・ハンド」大木監督に率いられたヴァンフォーレが展開する素晴らしいダイナミックサッカー(究極の組織サッカー≒トータルサッカー)に、全体的にはタジタジという場面もあったけれど、終わってみれば「1-4」というレッズの大勝だったからね(それでもレッズは、この試合でもシュート数でヴァンフォーレに凌駕されていた!)。
レッズの場合、ここ一発の仕掛けコンテンツ(内容)が並はずれて強力だということなんだろうね。それについて、原監督に質問してみました。「いま原さんは、レッズの決定力は高いとか、(今野と田中達也が絡んで両方とも転倒したシーンで)反応したのはポンテだけだったとか、なかなか面白いキーワードを出したわけですが、それは、決定的チャンスを作り出すチカラではレッズの方が優れているということですかね(ここで原さん、ちょっとうなずく)・・ところで、その(ちょっとした)差ですが、結局それは個人のチカラの差ということなんでしょうか・・」
「たしかに、田中達也、ポンテ、永井雄一郎の攻撃陣は強力ですよね・・この三人だけでチャンスを作り出せるといっても過言じゃない・・彼らは上手いし速いから、(カバーリングのために)守備ブロックも絞り込まなければならなくなる・・カバーリング網の集中は、もちろんレッズの他の選手たちにスペースを与えることになる・・我々も、今野を中心によく対応していたけれど、サイドバックの負担が大きくなることも含めて、やはりどこかに無理がくるということですよね・・とにかく、レッズの攻撃力が我々を上回っていることだけは確かな事実ですよね・・」
まあ、的確な分析だと思いますよ。FC東京の攻めでは、局面での1対1に勝つことでレッズ守備ブロックのウラスペースを攻略するようなシーンは希だったよね。レッズは、「あの」最終スリーバックと、守備意識の高いダイナミック・クインテットで構成する強力なディフェンスブロックを擁しているからね。
FC東京は、シュートまでは行くけれど、それも無理なカタチがほとんどだからゴールの可能性は高くない。それに対してレッズは、ダイレクトパスを何本かつづけることで田中達也がフリーで抜け出したり、大きなサイドチェンジで逆サイドのスペースを効果的に活用したする。原さんが言うように、個のチカラを警戒してディフェンスブロックが集中してくるから、どうしても逆サイドなどにスペースが出来、それをレッズにうまく使われてしまうということだね。それも、そこから(ある程度フリーな状態から)強力な個の勝負を仕掛けられてしまうわけだから・・。
数は多くはないけれど、その一本一本の攻撃プロセスに詰め込まれている「実」の内容が濃いレッズの攻め・・なんていう表現が適当ですかね。もちろん、その「実」の本質的なところは、(高い守備意識を絶対的なベースにする)組織プレーと、勇気をもった個人プレーが高い次元でバランスしているということですよ。
ところで、この試合のMVPだけれど、それは疑いもなく平川忠亮だよね。前半のカウンターシーンで、自軍のゴールライン付近から、まったく後ろ髪を引かれることのない全力ダッシュで、相手のゴールラインまで全力疾走してクロスを送り込んだプレーにはじまり、何度も、本当に何度も、全力で前方スペースを活用しつづけましたよ。もちろん全力での「上下動」が素晴らしいということです。まさに、強烈な「意志」が内包された全力ダッシュじゃありませんか。
味方も、そんな平川が展開する「ボールがないところでの勝負プレー(フリーランニング)」を明確にイメージできているから、効果的なサイドチェンジや、タテのスペースへのロングスルーパスなどを決めること(明確に描写されたイメージの実践)ができるわけです。まさに、「大きな」展開イメージの有機的な連鎖・・ってな具合。良いじゃありませんか。平川は、この試合で「も」、アシストを二本も決めるなど、素晴らしい結果を出したからね。MVPは当然でしょう。
最後に、小野伸二。最後の数分間だけ登場し、「強烈な意志が込められた全力の忠実プレー」によって良い印象を残してくれました。
レッズが一点リードしている(そしてFC東京に押し込まれている)最後の数分間に何をすべきか・・。彼は、その、凝縮されたミッションに対して明確なイメージを持っていたということです。意識は高く、意志も素晴らしく強かった。前からのディフェンス(チェイス&チェックに代表される汗かきプレー)・・次の攻撃でのステーションになる意識(パスレシーブの動き)・・などなど。本当によく(実効あるカタチで)走っていた。それも、強烈な意志を込めた全力ダッシュのオンパレード。期待していいのかい??
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しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。本当に久しぶりの(ビジネスマンの方をターゲットにした、ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。
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